春の訪れとともに、多くの人が悩まされる花粉症。特にスギ花粉の飛散が始まったこの季節、目や鼻の症状に加え、睡眠を阻害される人も少なくない。2025年の春は、長崎では昨年よりも花粉の量が多くなると予想されているが、増加を続ける花粉症患者への国の対策、そして花粉症の人にとっては夢のような「花粉がない島」とはどんな所なのか。

昨年より飛散量が増?!2人に1人以上が発症

花粉の飛散量を調査している長崎県医師会によると、2025年春の長崎でのスギ花粉の飛散量は非常に多くなっている。3月上旬にはピークを迎えるとされ、昨夏の気候が影響し、花粉の量は昨年よりも多くなると予想されている。

花粉の観測(長崎大学病院)
花粉の観測(長崎大学病院)
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花粉症患者数は、過去数十年にわたり日本国内で増加傾向を示していて、現在では2人に1人以上が花粉症を発症しているとの結果もある。増加の背景には、都市化、生活環境の変化、さらには気候変動が影響していると考えられている。

リアルタイムで飛散状況がわかる

ウェザーニューズの「花粉Ch.」では、花粉(スギ・ヒノキ・シラカバ)の飛散予報が1時間ごと・3時間ごとの時系列と、1週間先まで確認できる。また、国内1000か所に設置している観測機で、今どれだけの花粉が飛んでいるのかリアルタイムで知ることができる。

さらに2024年からは日本花粉学会の改定基準に基づいて従来の「非常に多い」の上に「極めて多い」が新設され、「少ない・やや多い・多い・非常に多い・極めて多い」の5ランクで花粉の飛散状況がわかるようになった。事前にチェックすることで花粉を回避することに役立ちそうだ。

2033年度までにスギ人工林の約2割減少を

国も対策に乗り出している。花粉症対策として「花粉症に関する関係閣僚会議」を設置し、2023年5月に「花粉症対策の3本柱」を発表した。

画像はイメージ
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この対策には、発症等対策、発生源対策、飛散対策が含まれている。特に、アレルゲン免疫療法は、対症療法では効果が不十分な患者に推奨されており、花粉が飛散していない時期から治療を開始することが重要だという。また、診療ガイドラインの改定や医療・相談体制の整備に取り組んでいるほか、2033年度までに、花粉の発生源となるスギ人工林を約2割減少させることを目指している。

「花粉がない島」ってどんな島?

花粉症に悩む人々にとって夢のような場所もある。長崎県の北部に位置する平戸市の的山大島(あづちおおしま)は、スギの林が非常に少なく、花粉がほとんど飛散しないため「避粉地」として注目されている。

「花粉がない島」として知られる長崎県平戸市・的山大島(2024年取材時)
「花粉がない島」として知られる長崎県平戸市・的山大島(2024年取材時)

島の面積の約1%しかスギの林がないため、花粉症の症状が軽減される。人口は約900人で、高齢者が多く住んでいる。島の住民は花粉症の症状をほとんど経験せず、島外に出ると花粉を感じることがあるものの、帰ってくると落ち着くという。

現在は休止中の避粉地ツアー
現在は休止中の避粉地ツアー

17年前、島の特性を活かして始まった「避粉地ツアー」では、花粉症の人々が島に訪れ、リラックスした時間を過ごすことができたという。しかし、運営スタッフの人員不足や高齢化により、ツアーは現在休止だ。島の魅力を広めるために、今後の復活が期待されている。

花粉に苦しまないために万全の対策を

花粉症は花粉が体内に入ると、異物と認識し、この異物(抗原)に対する抗体を作り、数年から数十年かけて花粉をくり返し浴び抗体の量が増加すると、花粉症の症状が出現するようになる。花粉症になっていない人が、花粉をできるだけ避けることで、将来の発症を遅らせることもできる。

対策としては、①顔にフィットするマスクやメガネの装着のほか、②花粉飛散の多い時間帯(昼前後と夕方)の外出を避けること③花粉を室内に持ち込まない④花粉が付きにくく露出の少ない服装を心がけること⑤手洗い、うがい、洗顔、洗髪で花粉を落としたり、こまめに換気をすること⑥洗濯物や布団の外干しを控える、などがある。

花粉症の人も、まだ発症していない人も、できる限り花粉を回避し、つらい症状で日常生活に支障がでない程度におさえ、この時期を乗りきりたい。

(テレビ長崎)

テレビ長崎
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