セブン&アイ・ホールディングスは、井阪隆一社長が退任し、後任に小売業に精通するスティーブン・デイカス氏(64)が就任する人事を発表。デイカス氏は北米の子会社の上場やイトーヨーカ堂の売却を進め、コンビニ事業の強化を図る方針を示した。専門家は「企業価値向上のためには、成長戦略とともに人材確保が最大の課題になる」と指摘する。

新社長デイカス氏「北米上場とヨーク売却で改革推進」

セブン&アイ・ホールディングスで社長が交代し、初めて外国人トップが就任する。

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6日午後5時から行われたセブン&アイ・ホールディングスの記者会見で、井阪隆一社長が退任し、後任に社外取締役のスティーブン・デイカス氏(64)が就く人事を、正式に発表した。

次期社長 スティーブン・デイカス氏:
私は取締役の中で唯一子供の頃に、セブン-イレブンで働いた経験があります。父がフランチャイズ加盟店のオーナーだったので、金曜と土曜の深夜シフトで働いていました。

日本語を流暢に操るデイカス氏は、大手スーパー「西友」の最高経営責任者などを務めた経験があり、小売業界に精通。改革を前に進める狙いで、セブン&アイ初の外国人トップに選ばれた。

次期社長 スティーブン・デイカス氏:
みなさんもご存知の通り、最近我々も少し勢いを失っています。すべてのステークホルダーにとって、最良の企業を目指します。

カナダのコンビニ大手「アリマンタシォン・クシュタール」から買収提案を受け、企業価値の向上が課題となっているセブン&アイ。

記者会見では、北米でコンビニ事業を展開する子会社の株式を2026年の下半期までにアメリカ市場で新規上場を目指すほか、イトーヨーカ堂などを束ねる「ヨーク・ホールディングス」を、アメリカの投資ファンドに8147億円で売却することも明らかにされた。

こうして得た資金をもとに、2030年度までに総額2兆円の自社株買いを行う方針。

次期社長 スティーブン・デイカス氏:
クシュタールが企業価値を高めるかは、これは私にも分からない。クシュタールだけではなく、様々な会社の価値、そして企業の見通しを向上させられるような他の機会も模索し続ける。

買収提案について、協議の長期化は避けたい考えを示したデイカス氏。5月の株主総会を経て、新たな社長に就任する。

収益性・成長性を重視しコンビニ事業に集中

「Live News α」では、働き方に関する研究・調査を行っているオルタナティブワークラボ所長の石倉秀明さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
企業のトップを務めてきた石倉さんは、今回の社長交代、どうご覧になりますか。

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
大胆な構造改革を行うには、創業からのしがらみのない人がやるというのは定石ですが、まさにそのようなトップの交代と言えるんじゃないかと思います。

今後はある意味、小売・サービス業のホールディングスカンパニーというよりも、コンビニエンスストアの会社として再出発をするということではないかと思います。

堤キャスター:
どうしてコンビニ事業への集中なんでしょうか。

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
セブン&アイホールディングスとしては、海外のファンドから買収提案を受けているので、とにかく企業価値を高めないといけないです。

今後の成長が厳しそうなイトーヨーカ堂などのスーパー事業の売却を進めたり、そして、最も収益性が高く、しかも海外を含めて新たな展開も考え得るコンビニ事業を伸ばすことに、とにかく注力するということではないかと思います。

コンビニ需要拡大も“人材確保”が成長の課題

堤キャスター:
その際の課題などについては、いかがですか。

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
どれだけコンビニ事業を成長させられるか、そして、それによって企業価値向上に繋げられるかに尽きると思います。

高齢化が進み、地方では移動の足がなかったり、1人で生活する高齢者は増えていくと思います。また、共働き家庭が減ることは考えにくいですし、女性がより管理職について忙しくなることが増えてくると、コンビニのニーズが増えてくると思います。

ただ、チャンスが大きくある一方で、ポイントになるのは人の確保になるのではないかと思います。

堤キャスター:
人材の確保、これは多くの企業にとって悩ましい問題ですよね。

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
そうですね。これからの日本で事業をやる上で最も難しいのは人材の確保になります。今までのように大量にアルバイトを採用し、その人たちに働いてもらうということ自体が難しくなってくると思います。

事業をこれからの社会の人口構成やニーズに合わせて変えていくということ、そして、それを単純に人を増やすという手法以外で実現するか、この2つがあります。

これからはこの矛盾する2つの課題を同時に解決して、新しい価値を提供でき、事業が拡大できる会社こそが企業価値がついてくるのではないかと思います。

堤キャスター:
社会の変化により消費者が求めるものも変わっていきます。経営の刷新により、消費者に寄り添ったサービスのさらなる充実を期待したいです。
(「Live News α」3月6日放送分より)

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