秋田・五城目町にある老舗食堂の3代目として祖母と二人三脚で奮闘している男性がいる。先代の祖父と祖母の意思を継ぎ、自分が育った思い出の味を受け継いでいこうと挑戦を続ける男性の思いを紹介する。

思い出の味がなくなるのは嫌だ

五城目町のバスターミナルから歩いて1分。

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縄のれんが目印の「うのき食堂」がある。
薄い天ぷらがのった中華そばが看板メニューの老舗食堂で、長い間地元の人たちから愛されている。

厨房で腕を振るうのは3代目店主・河内拓真さん(27)と、河内さんの祖母・チサさん(87)。

五城目町出身の河内さんは高校卒業後、地元の森林組合で働いていたが、2017年に転機が訪れた。

祖母から「店を辞める」と聞いて、「自分が育った味が食べられなくなるのが嫌だな」と思い、そこから一緒に店をやっていくことになったという。

河内さんは「小学生の時にずる休みしたときに持ってきてくれたラーメンがすごくおいしくて、いろんな思い出のある味だったから」と振り返る。

祖母の教え胸に二人三脚で営む

うのき食堂は、1961年に河内さんの曽祖父・榮治郎さんが開業。その後、祖父・晧一さんが食堂を支えてきた。

しかし、2001年に晧一さんが亡くなり、以降はチサさんが1人で店を守ってきた。

高齢を理由に食堂を畳もうと悩んでいたチサさんだったが、「味を受け継ぎたい」と話す孫の強い思いに心を動かされ、一緒に食堂を続けることにした。

孫と一緒に食堂をやってみて「いいよ、助かる助かる。愛想もいいでしょ」と話すチサさん。継いでくれたことは「やっぱりうれしいか」と聞いてみると「まず、いまは元気にやってもらわないと困る」と少し照れくさそうに話した。

チサさんは最初に、拓真さんに食堂を営む上で大切なことを教えた。それは、客に対しての接し方や、見えないところを隅々まできれいにしないといけないということ。

「最初は掃除がだらしなかったから怒られていた」と話す河内さん。「味の前に、見えないところの掃除とかそういうのが一番大事だとすごく言われた」という。

他にはない独特の味“天ぷら中華”

祖母の教えを胸に日々鍛錬を積む河内さん。幼い頃から一番大好きだという一品が、店の看板メニューでもある「天ぷら中華」だ。

開業して間もない頃、祖父・晧一さんが「働く人に力をつけてほしい」と考案したメニューで、天ぷらそばのように中華そばの上に天ぷらをのせて提供したところ、たちまち人気となった。魚介だしのしょうゆスープに天ぷらが合わさった、まろやかな味わいが楽しめる。

うのき食堂3代目・河内拓真さん:
ラーメンのスープに溶けやすい薄さだから麺に絡んでくるんだなというのは、自分で作るようになってからすごく思った。シンプルな昔の“中華そば”という感じ。「毎日食べても飽きない味だ」と言われるのがすごくうれしい。

うのき食堂自慢の天ぷら中華。その味を求めて足しげく通う常連客が多く、中には丼ものと一緒に注文する人もいるという。

常連客は「1カ月に3~4回。ここ独特の味。ほかにないと思う」と話し、河内さんの腕前に太鼓判を押す。

思い出となる味を作り続ける

不退転の覚悟で食堂を継いだ河内さん。

「先代と祖母の思いを受け継いで、店が好きで来てくれる客の思い出となるような味をこれからも作り続けていきたい」と意気込む。

まごころ込めて作る天ぷら中華。老舗の変わらぬ味を受け継ぐ河内さんの挑戦はまだまだ続く。

(秋田テレビ)

秋田テレビ
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