2024年、秋田・横手市に自社ブランドの豚肉を扱う専門店がオープンした。店内ではちょっと変わった方法でおいしい肉を購入することができる。自分で育て、自分で販売する精肉店の店主の思いを紹介する。

養豚場継ぎ精肉店をオープン

横手市中心部で営業する精肉店「TOKOTON PORK(トコトンポーク)」は、2024年6月にオープンした。

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店主は、細川拓也さん(38)。細川さんの実家は祖父の代から続く養豚場で、細川さんはその養豚場を継ぎ、豚を育てている。

家が養豚場をやっていることで、小さい頃は友達にちゃかされていたという細川さん。そういう理由があって「ちょっと養豚場継ぎたくないなあと思っていた」と最初は家業を継ぐつもりはなかったという。

湯沢市の高校を卒業後、仙台市の専門学校に2年間通い、全国展開している洋服販売の会社に就職した細川さん。就職してから5年たった頃、転機が訪れた。

実家の養豚場の除雪作業で人手が足りず、休みの日に手伝いに行くようになると気持ちに変化が表れたという。

細川拓也さん:
実際に中で仕事をしたことで、すごい事業を父がつくったのだなと改めて感じた。この事業を継がなければ、そのまま辞めるという話を父はしていたので、「このまま辞めるのはもったいないな」と思い直した。

働く父の背中を見て、改めて尊敬の気持ちを抱いた細川さんは、養豚場を継ぐことを決意した。

オリジナルブランド「十豚」を販売

横手に帰って約10年たった2020年、細川さんは自分で育てた豚を「十豚(じゅっとん)」と名付け、自分で販売することを始めた。

オリジナルのブランド豚肉「十豚」
オリジナルのブランド豚肉「十豚」

十豚のブランド化について、細川さんは「豚は脂がすごくおいしい肉なので、脂がしっかりのっていて、体がしっかり大きく成長している豚であればあるほど肉質が上質になると思う。だが、市場にいざ出すと、そういう豚も等級が下げられてしまう現状がある。なのでそういう豚をあえて選定して、自分たちでブランディングしてしまおうと思ったのがきっかけ」と話す。

客の好みに合わせて全てオーダーカットで販売
客の好みに合わせて全てオーダーカットで販売

TOKOTON PORKでは、全てオーダーカットで肉を販売している。客の好みに合わせて、十豚の欲しい部位を必要なサイズだけカットしてもらえる。注文後にカットするため肉が空気に触れる面を最小限に抑えられ、鮮度を保つことができる。

食べる人数に応じて量が選べるギフトセットも販売していて、お祝いやちょっとしたホームパーティーなどに買っていく人も多いという。

店は肉のおいしさの“発信基地”

細川さんの十豚は、県内10以上の店舗に卸されていて、横手市内の焼き肉店などで味わうことができる。

十豚は口に入れた瞬間、脂の甘いうまみが広がる。肉を焼く前は脂がたっぷりのっている印象だが、実際に食べてみると後味はあっさりしていてとても食べやすく、何枚でも食べられそうな味わいだ。

細川さんは「秋田の横手市で生産されている『十豚』というすごくおいしい肉が秋田から発信されて、都心の人とかが食べて『おいしい』となったら、横手市に来る理由にもなるかもしれない。そこで話題が深まれば海外の人にも見てもらえるかもしれない。それを発信する基地として店をまずつくろうと思った」と熱く語る。

細川さんの養豚場 さらなる規模拡大を狙う
細川さんの養豚場 さらなる規模拡大を狙う

家業を継ぎ、養豚に取り組む細川さんは「継がせてもらったことにまったく後悔はなく、感謝しかない」と話す。そして「将来的に自分がつくったブランドの十豚を広めていくのはもちろんだが、養豚業は地域に欠かせない業種だと思うので、本業である養豚業もしっかり腰を据えて、かつ事業の規模拡大を狙っていきたい」と熱く語る。

これからも細川さんは、横手で育てた豚肉のおいしさと魅力を発信していく。

(秋田テレビ)

秋田テレビ
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