そのタイミングで眠れないことに苦しむよりも、覚醒シグナルが落ちていき、眠気が高じてくるのを待ったほうが自然と眠ることができる。
結局それは「いつもの時間」ということになる(ただし、慢性的に寝不足の生活をしている人だと睡眠欲求が高いので睡眠禁止帯であっても入眠できる)。
翌日、起床時間が早くて、いつもより睡眠時間が少なくなっても、普段どおりに眠くなってからふとんに入ればいい。
多少の早起きによる睡眠不足などすぐに解消できるし、「早起きしなくてはいけない」という潜在意識があると、そのぶんできるだけ効率よく眠れるよう睡眠が構成されることも知られている。
また、睡眠禁止帯は体内時計の制御によるわけだから、当然、体内時計が乱れれば、睡眠禁止帯もズレる。
ズレるといっても1時間程度だが、眠れない時間が後ろ倒しになっていけば、どんどん睡眠時間は短くなってしまう。
体内時計を乱すのは夜の光だ。繰り返しになるが、夕方以降、なるべく明るい光を浴びないようにすることは大切だ。

櫻井武
筑波大学医学医療系教授、国際統合睡眠医科学研究機構副機構長。医学博士。睡眠研究の第一人者。著書に『「こころ」はいかにして生まれるのか 最新脳科学で解き明かす「情動」』『睡眠の科学 なぜ眠るのか なぜ目覚めるのか 改訂新版』『SF脳とリアル脳 どこまで可能か、なぜ不可能なのか』(すべてブルーバックス)など