現在、日・トルコ外交関係樹立100周年記念としてトルコ・イスタンブールで展示されている日本の美術家・塩田千春氏の作品が「映える」と、トルコのSNS上でバズっている。

そのため美術館には多くの若い女性が訪れ、幻想的な空間で写真を撮る姿が目立つ。美術館に興味のなかった若い層も取り込む新たな戦略となるのか注目だ。
真っ赤な幻想的空間が「映えスポット」に
部屋中に真っ赤な糸が張り巡らされている幻想的な雰囲気のなかポーズを決めている女性たち。
ここはトルコにある近代美術館「イスタンブール・モダン」で今、インスタ映えするとして人気のスポットとなっている。

実はこの作品は2024年が日本トルコ外交関係樹立100周年であることを記念して塩田千春氏が制作した「Between Worlds」である。(2025年4月まで展示)
塩田千春氏は、ドイツを拠点に世界的に活躍していて、糸やひもを使い場所や空間全体を作品とする芸術「インスタレーション」で知られる現代美術家。「生」と「死」という人間の根源的な問題に向き合い、「生きることとは何か」、「存在とは何か」を探求し続けている。

「Between Worlds」で部屋中に張り巡らされた真っ赤な糸と床に置かれたトランクは、西洋と東洋が交わり独特の文化を育んできたイスタンブールの特徴や塩田氏が美術館前の港に停泊する船を見て、世界中を旅する自身の経験からインスピレーションを得たという。

2024年12月にトルコを訪問した秋篠宮ご夫妻も塩田氏の作品「Between Worlds」を鑑賞されている。
写真を撮るために美術館に訪れるインスタ女子
塩田さんのメッセージ性あふれる作品はトルコでも人気を博しているが、特に関心を示しているのはインスタ女子たちだ。
部屋中に張り巡らされた真っ赤な糸を撮影した写真や動画がインスタグラムなどのSNSで共有されると瞬く間に拡散され、一躍映えスポットとして人気となっている。

SNS上では
「どんな芸術品なの、あなたは?」
「アニメから飛び出してきたような写真」
「どの写真も美しい。作品を実際に見たい!」
などのコメントがあふれていた。
草間氏の作品を展示する美術館は開館時間の延長も
この現象は草間彌生氏の作品でも見られる。
水玉模様をモチーフにしたカボチャの作品などで世界的に有名な草間氏の作品はインスタ映えするとして世界的にも人気だ。

2021年11月にイスラエル・テルアビブで展覧会が開催された際には会期前にチケットは完売し、美術館が開館時間を延長するなど対応に追われるほどだった。
来場した女性からは「色や光などがものすごくドラマチックで人々の目を惹きつける」との声が聞かれた。

日本でも2020年前後からインスタ映えする美術館がよく取り上げられるようになったが、この傾向は、トルコなど海外でも変わらない。
インスタ映えする作品展示も美術館の戦略に
博物館・美術館離れが問題視される中、通常は美術館に行かない年齢層が、展示の鑑賞を楽しむだけでなく、SNS用の写真の背景として楽しむために美術館に殺到すると言うのも新規の顧客開拓という面で高い可能性を持つと思う。

写真映えする展示の仕方を工夫したり、写真映えする企画展を誘致したり、ソーシャルメディアを活用して映える写真を公開するなど、【映える】に力を入れることは、新しい美術館の在り方として、これからの生き残りをかけたひとつの選択肢になるのではないだろうか。
(執筆:FNNイスタンブール支局 土屋とも江)