不便さが長年の課題となっている富士駅と新富士駅の交通アクセス。解決に取り組む静岡県富士市では自動運転バスによる実証実験が行われたが、実用化には課題が山積している。
自動運転バスによる実証実験

1月15日から静岡県富士市で公共交通の在り方を考えようと1週間の社会実験が行われた。
実験に使用されたのは8人乗りの電気自動車のバス。
アクセル・ブレーキ・ハンドル・ウインカーは基本的に全て自動操縦で、事前に設定されたルートを最高時速19kmで走る。

走行中のバスはカメラやセンサーで周囲の状況を把握していて、市役所に設置されたコントロールセンターが監視をしている。

試乗した人からは「カーブはすごくスムーズだった。ブレーキはまだ“うっ”という感じで急に止まる感じもあったが、すごく安全にも配慮されていると感じた」「乗り心地は普通のバスと変わらないと感じた。早く実用化してもらえたらいい」といった声が寄せられた。

実験が行われたのは東海道新幹線の新富士駅とJR富士駅を結ぶ片道1.8kmのルート。
新富士駅と富士駅の接続は富士市にとって大きな課題となっていて、解決が急がれているためだ。

富士市の小長井義正 市長は「自動運転という技術が導入されることで、新たなルートが確保できるということは大きな効果が期待できる」と期待を込める。
インバウンド客が課題解決に拍車

1988年に開業した新富士駅は日本の大動脈の停車駅でありながら富士駅との交通アクセスが悪く、主な移動手段はタクシーか1時間に2本程度の路線バスに限られている。

こうした中、富士市内ではコロナ禍が明けて以降、インバウンド客の存在が目立っている。
SNSで話題を集めた『富士山夢の大橋』には2024年の12月だけで1万4000人あまりが訪れ、新富士駅や富士駅周辺にも外国人観光客が増加。
2つの駅を結ぶ交通手段の確立に寄せられる期待はさらに大きくなりつつある。

富士市ではこれまでもワンコインタクシーの実証実験の実施や線路と道路の両方を走るDMVの導入を検討して来たが、現時点でいずれも本格的な採用には至っていない。
民間企業の既存インフラが解決策に?

今回の実証実験で使用した自動運転バスの実用化にも解決が必要な技術的・法律的課題が多数あるが、市が着目しているのが製紙会社への輸送のためにかつて使用されていた「引き込み線」と呼ばれる線路だ。
「引き込み線」を利用した専用レーンを開設することによって、定時性と安全性の両方の確保が可能だと考えられている。

小長井市長は「DMVの導入・検討の際、周辺企業の貨物専用の鉄道の線路があり『活用できないか?』と言われた。もし引き込み線を道路にして専用レーンとして確保できれば、早い段階で自動運転を活用することができると思う。いずれにしても企業との話し合いになるので、こういうことについても今後進めたい」と実用化に向けてさらなる前進をする姿勢でいる。

富士駅前には2028年度に新しいビルが完成する予定で、ここを核とした再開発事業も動き出している。
街づくりの要となる2つの駅を繋ぐ交通網が確立できるのか…今後も議論や協議の行方が注目される。
(テレビ静岡)