世界的に有名なメーカーの本社が複数あり静岡県内で最多の人口を有する浜松市だが、市中心部の活性化に課題を抱えている。鍵を握るのは20年以上空き地となっている百貨店の跡地だ。
大学の移転で活性化に期待
2025年1月8日にJR浜松駅から600mほどの距離にある旧高砂小学校の跡地について浜松市と売買契約を結んだ常葉大学。

現在は浜名区都田町にある浜松キャンパスをこの地に移転する予定で、中心街の空洞化が著しい浜松市の活性化に期待が寄せられ、中野祐介 市長も「大学生・若者が浜松駅近隣の地域に集うことになると街中の人の流れや街のつくりもだいぶ変わってくると思う」と話す。
活性化に向けたイベントを展開
浜松では長らく中心部の“衰退”が課題となっているが、活性化を目指して市と連携して活動しているのが「浜松まちなかにぎわい協議会」だ。

協議会では1月17日から市街地をめぐる謎解きイベントを開催していて、参加者は地図を頼りに店舗を訪れ、設置されたパネルをヒントに問題を解いていく。
対象となる店舗のジャンルは様々なため市民にとっても新たな発見があり、参加者のひとりは「謎解きに興味があったのでおもしろそうだと思ってやってみたが、自分が普段行かない店や新しい店を知ることができて良かった」と感想を口にする。

再び店に足を運ぶきっかけになるようにと、謎解きを終えた参加者には対象の店舗で利用できるクーポンが配布される。

浜松まちなかにぎわい協議会の鈴木悠希さんは「知られていないところや魅力がたくさんあると思うので、それぞれに発見してもらいそこを居場所や“ちょっと寄りたい場所”にして欲しい」と期待を込める。
かつての“浜松の顔”が更地のまま

一方、中心街の一等地にありながら長年にわたって更地のままとなっているのが松菱百貨店の跡地だ。
通りがかった高校生に百貨店があったことを知っていたかと訊ねると「百貨店?全然知らなかった」と驚きの表情を浮かべた。

経営破綻から約四半世紀が経ち、その存在自体を知らない世代が増えているが、“松菱”を知る市民は「ここに来るのが楽しみで自分も若い頃は来ていたので残念な感じ」「何か施設が出来ればいい。また活気・景気が良くなってくれれば」と寂しさを口にする。
行政と連携し対応したが…

松菱の経営破綻当時、浜松商工会議所の会頭を務めていた中山正邦さんは松菱跡の再開発に向けた協議会でも会長に就いていた。
中山さんによれば経営破綻は従業員も知らず、「出社したところシャッターが閉まっていた」という。
このため「商業施設がなくなったのだから、商業施設を作ってもらおうと(当時の)市長と一緒になって、そういう認識は同じように持っていた」と行政と連携を図って対応した。

すると2003年に不動産会社「アサヒコーポレーション」が再開発を担うことに決まり、2007年には大手百貨店の出店も計画されたが不況のあおりを受けて立ち消えとなった。
鈴木知事も浜松市長時代の2019年に「これまで何度も事業のチャンスがあったのを生かし切れていなかった」とこの問題に言及している。

それ以降も市は二度にわたって事業計画案を出すよう勧告したが、現在までに大きな動きは見られず、アサヒコーポレーションの担当者は取材に対し「今は構想を練る段階。市と連携して再開発を進める」と回答した。
中心街に相応しい建物を

20年以上が経った今なお遅々として進展が見られないこうした状況に中山さんも「全部計画はできていた。だからすぐできると協議会は思っていた。結果としてそれができなかった。おかしな問題だと思う、どのように地権者が考えているのか、浜松市民はみんな知りたいのではないか」と疑問を呈する。

その上で「あくまで別の企業の土地であり、自分からは意見しにくい」と前置きしつつ「中心にふさわしい建物が建つべき。そういうことで権利が移ったのだから、責任を履行してもらいたい。みなさんの希望で権利が移ったという認識をしっかり持ってもらいたい」と浜松市民の希望や期待を背負っていることを感じてほしいとの思いを吐露した。

松菱跡地の再開発は中心市街地の活性化の重要なカギを握っており、1日も早く浜松のシンボルとして復活させるためにも積極的な議論が地権者や行政には求められている。
(テレビ静岡)