2025年6月に国の特別天然記念物・トキが能登の空に放たれることが決定。
15羽から20羽程度を数年にわたって放ち、能登への定着を図る計画だ。
本州最後の国産トキは能登にいた

国の特別天然物トキは明治時代、羽毛をとるために乱獲され、激減した。2003年に国産のトキは絶滅。その後、中国から借り受けたつがいなどを繁殖させ、現在、国内では約140羽が飼育下で、野生下では推定576羽がいるとされている。

環境省は2月14日、トキの野生復帰に向けた専門家による会議を開き、本州では初めてとなる
トキの放鳥を早ければ2026年6月の上旬に能登地域で行うことを決定。能登地域が本州最後のトキの生息地であり、住民や関係者の積極的な取り組みによりトキの餌場となる環境が整備されていることなどが決め手となった。
浅尾慶一郎環境相:
震災復興の後押しとなることを期待しています。

計画では、トキの定着を促すために、15羽から20羽程度の放鳥を年間で最大2回、
6月と9月ごろに行い、数年間続ける方針。放鳥を行う具体的な場所については、県と能登の9市町などでつくる協議会で検討を行い、2025年の7月ごろまでに決定する予定だ。
被災地となった地元からは「不安の声」
被災地・能登にとっても明るいニュースかと思いきや、地元の農家や長年トキを研究してきた
専門家からはトキの放鳥について不安視する声が上がった。
石川県輪島市町野町。
トキの放鳥に向け、エサ場として整備を行うモデル地区に指定されている。農家の川原伸章さんもトキを受け入れるためエサ場を作っていたが…。

川原農産・川原伸章社長:
用水が完全に破壊されてしまってエサ場としては機能できない。

能登半島地震で水田や用水路などに被害が出たほか、従業員の数も大幅に減ったという。
川原社長は「まずは復旧のがいつまでにできるのかスケジュールを教えてほしい。用水がこなければエサ場の確保もできなくなるわけで、そこまでの余裕を持って行動できるかは今のところ不透明」と不安を吐露した。
御年99歳 トキ研究の第一人者

一方、70年以上にわたりトキの研究をしてきた村本義雄さん、99歳。「生きている間に能登に放鳥してくれればいいなと思って」こう話す村本さんは野生のトキが生息している中国を訪れるなどトキの保護活動を進めてきた第一人者だ。

村本さんは新潟、佐渡島での放鳥にも協力し、トキの野生復帰のために長年尽力。「上空を舞ったときにああ、能登にもこんな日が来るんかなという感じでトキが消えるまでずっと眺めていました」と誰よりも能登での放鳥を待ちわびていた。
しかし、放鳥決定の知らせを受けた村本さんの表情には曇りがあった。

村本義雄さん:
冬の餌場も作らないでこんな状態でトキを放したらみんな能登から出て行ってしまう。放すのに意義がある、そんなもんじゃないと思うしね。能登に定着してもらう、繁殖してもらう、そういう環境を整える、そういうことが取り急ぎ急務や。それができなければ受け入れる必要がないと思う。
(石川テレビ)