1月31日、経団連の労使フォーラムが開かれ、2025年の春闘が本格的に始動し、経団連は賃上げを「人への投資」と話し、連合は「中小企業の底上げが重要」と主張した。専門家は、人手不足に対応するため、労使の協力が不可欠だと指摘している。
春闘が本格化「賃上げの行方」に注目集まる
1月31日午前、主な企業の経営側と労働組合側が議論を交わす、経団連の労使フォーラムが行われ、2025年の春闘が本格化した。

経団連・十倉雅和会長:
成長と分配の好循環の実現に向けた、非常に重要な局面を迎えていると考えます。

経団連の戸倉雅和会長は「賃上げは人件費の増加ではなく、事業の継続に不可欠な人への投資だ」と訴えた。

一方、連合の芳野友子会長は、特に中小企業での賃金の底上げが重要だと強調した。

連合・芳野友子会長:
賃上げの裾野を広げ、社会全体へ定着させるためには、中小企業の適切な価格転換と販売価格アップが不可欠です。

2025年の春闘は、労使ともに賃上げの定着を掲げる中、大企業で前年並みの5%を超える水準を達成できるかや、勢いが中小企業にも広く波及するかが焦点だ。
“労使の協力” が持続的な賃上げへと求められる
「Live News α」では、デロイトトーマツグループ執行役の松江英夫さんに話を聞いた。
海老原優香キャスター:
松江さんも、こうした労使の会合に参加したことがあるそうですね?

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
そうですね。私が印象的だったのは、労使ともに賃上げであるとか、価格転嫁を積極的に進めようという方向性が一致していることなんです。これから人手不足が深刻化する日本においては、「労使共創」がますます重要になると思います。
賃上げの必要性を共有しながら多様な働きかけであるとか、賃金を持続的に上げていくにはどうすればいいか、ここに労使が対立するのではなくて、知恵を共に絞るといった共創的な関係性が、より問われてくると思います。
賃上げ競争の格差拡大を防ぐ“雇用のセーフティネット”を
海老原キャスター:
そのための課題というと、どういったことが考えられますか?

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
持続的に賃上げをしていく上で課題となるのが、「雇用のセーフティネット」です。賃上げ競争が激化していくと、企業間や、個人間での賃金格差がますます開いていくというリスクも顕在化します。
多くの人がより賃金が高い仕事に従事できるように、職業訓練や、再就職支援を可能にするような雇用のセーフティネットの整備が重要になってくると思います。
スウェーデンでは、労使が一体になりながら職種別の団体を作って、業界を横断的なセーフティネットを整備する例もあります。かたや日本は、雇用や職業訓練に占める公的支出の割合が0.2%と極めて低いので、こういった労働移動を円滑にするためのセーフティネットが非常に重要です。
これから労使が、「社会としての終身雇用」を守るために共創する、こういった関係に発展することを期待したいです。
海老原キャスター:
2月から自動車などの労働組合が要求書を提出して交渉が本格化します。
(「Live News α」1月31日放送分より)