東京で29日から31日まで開催されている、日本最大級の宇宙産業展「ISIEX(アイシーエックス)」にANAや清水建設、損害保険ジャパンなど異業種からの参入が増えている。大正製薬が開発し、JAXAが認証した日本宇宙食としての「リポビタンD」のゼリー飲料も出展中。専門家は、宇宙食と災害食には共通点があるとしつつ、日本が誇る高い技術を持つ企業の新規参入で、宇宙ビジネス創出が期待されると指摘する。

異業種参入に「リポビタンD」の宇宙食も

日本最大級の宇宙産業展。ビジネスの広がりと共に新規参入が相次いでいる。

この記事の画像(16枚)

29日から31日まで東京ビッグサイトで開催されている、宇宙ビジネス単独としては、日本最大級の規模を誇る「国際宇宙産業展『ISIEX』(アイシーエックス)」。

上中勇樹キャスター:
ANA・全日空のブースがあります。さらに清水建設、向かい側には損害保険ジャパンなど様々な企業が出展しています。

宇宙産業の世界市場は、2040年までに140兆円規模になると予測され、会場では異業種のブースも目立った。

国際宇宙産業展 「ISIEX」主催 日刊工業新聞社・小林稔昇さん:
(市場拡大には)ロケットや衛星だけでなく、様々な業種・ジャンルの企業が参入してもらうのが大事。(近年のISIEXは)宇宙に参入していない企業が、多く出展するようになっている。

宇宙ビジネスの可能性が広がりを見せる中、こちらのブースでは――。

上中勇樹キャスター:
大正製薬の看板商品といえば、「リポビタンD」ですが、それを宇宙食にしたのが、こちらの商品です。

JAXA認証の宇宙日本食「リポビタンJELLY FOR SPACE(ゼリーフォアスペース)」。宇宙空間でも飲みやすいゼリー飲料となっている。

上中勇樹キャスター:
なじみ深い味わいです。舌にゼリーが残り、なおかつ咀嚼する感じなので、かなり飲み応えがあります。

製薬会社が注力する、宇宙でのエナジーチャージ。開発のきっかけとなったのが、小惑星から表面物質を持ち帰る、歴史的ミッションを成し遂げた小惑星探査機「はやぶさ」。

世界が注目する管制室のブログに掲載された画像には、リポビタンDがあった。その数は、夜を徹しての作業だったこともあり、約18時間で10本に。

大正製薬 マーケティング本部 メディア推進部 星新児さん:
これを目の当たりにした当社は「これはすごい」と。大正製薬としては、応援していきたい思いが強くなった。

宇宙に携わる人を応援したい思いから、約3年の歳月をかけ完成させた宇宙日本食。これまでに2度の宇宙の旅を経験し、宇宙飛行士の貴重なカロリー摂取に活用されている。

宇宙飛行士・若田光一さん:
ゼリー状になっていてとても飲みやすくて美味しい。元気が出て、“今日も頑張るぞ”という感じになる。

現在は、宇宙日本食と同じ内容物のものを市販でも展開。瓶とは異なる新たな販路の開拓を目指している。

大正製薬 マーケティング本部 メディア推進部 星新児さん:
瓶タイプだと、どうしても40~50代の方々がメイン。若い方はどちらかというと瓶よりゼリータイプ。リポビタンDでは取り込めないお客さまにも、ぜひ利用してほしい。

日本発の宇宙食の多様化・グローバル展開に期待

「Live News α」では、大阪公立大学 客員准教授の馬渕磨理子さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
日本の食を宇宙へということですが、馬渕さんはどうご覧になりますか。

大阪公立大学客員准教授・馬渕磨理子さん:
日本の「お家芸」とも言える機能性食品の品質の高さを示す、きっかけになるかもしれません。

宇宙食には大きく分けて2つの種類があります。1つは「標準食」と言われるNASAやロシアが主に作る宇宙食です。通常、ISS滞在中の宇宙飛行士はこの「標準食」を食べています。

それとは別に「ボーナス食」と言われるものがあり、今回の宇宙日本食はこれにあたります。

堤キャスター:
その「ボーナス食」とは、どういうものなんでしょうか。

大阪公立大学客員准教授・馬渕磨理子さん:
宇宙飛行士が好みで持っていくことができるもので、そこにはお国柄が反映されます。

日本人宇宙飛行士の場合は、ひじき煮、きんぴらごぼう、うなぎの蒲焼。さらには、「日清のラーメン」や「ローソンのから揚げくん」もあります。

こうやって、様々な宇宙日本食の採用が進めば今後、グローバル市場でも更なる展開が期待できます。

食品加工と精密技術が宇宙ビジネス拡大の鍵に

堤キャスター:
いま世界で日本食が人気になっていますが、それが宇宙にも広がるかもしれないんですね。

大阪公立大学客員准教授・馬渕磨理子さん:
そうですね。宇宙食の市場は、ISS・国際宇宙ステーションや、月や火星探査計画の進展に伴い、今後、大きく成長すると予測されています。極限状態の宇宙で、長期に渡って品質や味が保たれる食品加工には、高い技術が要求されます。

この宇宙食と災害食には共通点があり、常温での長期保管ができるなど類似点があります。そこで、宇宙日本食に認定された食品は、備蓄品などでも活用が期待されています。

堤キャスター:
食の分野だけではなく、宇宙ビジネスには様々な企業にチャンスが開かれているようですね。

大阪公立大学客員准教授・馬渕磨理子さん:
宇宙とは縁遠いと思われた企業の新規参入、これがポイントになります。日本は世界トップレベルのものづくりの力があり、世界最高水準の技術力と品質管理能力を持っています。

中でも、素材や部品製造に高い競争力を持ち、ここでは日本製品が多く使用されることになるはずです。日本の強みを活かして、世界をリードする宇宙ビジネスの創出を期待したいと思います。

堤キャスター:
宇宙ビジネスというと、ロケットや人工衛星などをイメージしがちですが、衣食住すべての分野にチャンスが広がっているようです。ここでも日本の強みを活かせると良いですよね。
(「Live News α」1月30日放送分より)