「ビザスク」の調査によると、多くの企業が新規事業担当者の「経験やスキル」を重視する一方で、そのスキルが必要なものと一致しないケースが多いことが判明した。
専門家は、事業成功には「失敗の法則」と「アジャイルな進め方」の体系化が不可欠であると話す。
新規事業担当者の“スキルギャップ”が浮き彫りに
新規事業の担当者が持っている能力や経験と、本当に必要なスキルにギャップがあることが分かった。

企業の成長に不可欠な、新規事業の立ち上げ。
その担当者の選定に関する調査を、日本最大級のスポットコンサル「ビザスク」が発表した。
この調査は、企業の経営責任者と新規事業開発の責任者を対象に行われ、101件の有効回答が得られた。

調査によると、新規事業担当者を選定する際、7割以上の企業が「経験やスキル」を最も重要視していることが明らかになった。

ところが、選定した新規事業担当者について、事業を成功に導くスキルがあるかを尋ねると、約6割が「不足している」と回答した。

ギャップの背景にあるのが、企業が求めるスキルと、人材が保有するスキルの違いだ。

企業側にとって、新規事業担当者に必要なスキルを聞いたところ、“ゼロイチ”を生み出す「戦略立案」を求める声が多く挙がる結果になった。
一方、選定した人材が保有していたスキルは、「リーダーシップ」や「マネジメント能力」など、企業側が求める「戦略立案」は5位にとどまり、企業と人材でギャップが生まれる結果となった。

調査を行った「ビザスク」は、この結果について、「人員選定やチーム組成に対する難しさが浮き彫りになった」とコメントしている。
事業成功の鍵は「失敗」と「柔軟な学び」
「Live News α」では、働き方に関する研究・調査を行っている、オルタナティブワークラボ所長の石倉秀明さんに話を聞いた。
堤礼実キャスター:
ーー新規事業の立ち上げをいくつも経験している石倉さんは、どうご覧になりますか?

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
そもそも新規事業は立ち上げることよりも、成功させる方が何倍も難しいでです。確かに戦略立案のスキルは必要なんですが、1つのスキルが身につけばうまくいくというものでもなく、もっと複雑な要素がからみ合っているものです。
例えば、どんなに良い戦略で事業をやったとしても、大手が圧倒的な資金力で参入してきたら勝てないという状況もありますし、いいアイデア・戦略でやっていたとしても、タイミングが合わなければうまくいかないということもあります。つまり、事業成功の要素は、運も含めて非常に複雑だということです。
堤キャスター:
ーーその複雑さを乗り越え、事業を成功させるスキルとは?
オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
本質的に身につけるべきものとして2つあると思います。1つ目は、「失敗の法則」を学ぶこと。
成功のパターンというのは複数・無数にありますが、失敗するパターンは一定、決まっていることがあります。なので、まずは「やってはいけないこと」を体系的に整理して、学ぶことは重要です。
堤キャスター:
ーーもう1つについては、いかがですか?
オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
正解が分からない中で、学びながら、戦略や施策を変えていくという仕事の進め方を学ぶということです。これはきっちり計画を立てて、その通りやる、という従来の仕事のやり方とまったく真逆になります。
なので、正解が分からない中で、まずやってみる。やってみた結果から、戦略や施策を変えて改善していく、「アジャイル」的な進め方にチェンジできるかということです。
「失敗の共有」・「学びの投資」 国と企業が進めるべき
堤キャスター:
ーーただ、やり方が正しいか、分からない中で、「やってみる」ことというのも、なかなか難しいですよね?

オルタナティブワークラボ所長・石倉秀明さん:
「失敗の知見」と「アジャイルな仕事の進め方」は、暗黙知として持っている人が多数いるという状態です。
なので、国としてスタートアップやイノベーションを促進するのであれば、多くの人の頭の中にある「失敗の知見」や「アジャイルな仕事の進め方」を整理・体系化していくことが求められると思います。
さらに、社会人になっても、新しいことにチャレンジする人が学んでいく、「アップスキリング」することに企業が投資することは、非常に重要だと思います。
堤キャスター:
突出した何かがあったり、さまざまな経験をバランスよく持っていると強いですよね。
ただ、もともとそれらのスキルを持っている人は決して多くはないからこそ、物事の法則を学び、失敗を糧に変えていくことが大切なように思います。
(「Live News α」1月28日放送分より)