核兵器の保有を禁ずる核兵器禁止条約の発効から4年を迎えた。アメリカの核の傘に守られている日本は、この条約に加わっていないが、日本被団協のノーベル平和賞受賞で「まずはオブザーバー参加をして、核保有国と非保有国との橋渡しを」という声が被爆地を中心に高まっている。これまでの経緯と今後の見通しを探る。
キャンドルに込められた「核廃絶」への願い
1月22日、広島の原爆ドーム前では、約1,500本のキャンドルが「核と人類は共存できない」という英語のメッセージを描き出した。

また、被爆者団体のメンバーは、日本政府に核兵器禁止条約への署名と批准を求める署名活動を行った。
核兵器禁止条約は、2017年に国連で採択され、2021年1月22日に発効した。

広島・長崎の被爆者たちの苦しみを反映し、核兵器の使用、製造、保有、実験などを全面的に禁止する史上初の条約だ。しかし、唯一の戦争被爆国である日本は、現在も署名も批准もしていない。
NPT体制下では核軍縮は停滞
核兵器に関する国際的な条約としては1970年にできたNPT=核拡散防止条約がある。

核保有国も非保有国も条約に参加しているが、この条約ではアメリカ、ロシアなど5カ国を「核兵器国」と認めていて、非保有国から不満があがっていた。そこで、NPTとは違う枠組みとして、核兵器の保有や開発、実験などあらゆることを禁じた核兵器禁止条約ができた。発効から4年で現在、94の国と地域が署名、このうち73の国と地域が批准している。
日本政府が核兵器禁止条約への署名・批准を見送っている理由は、アメリカの「核の傘」に依存している現実にある。

2021年、当時の菅義偉首相は「条約への署名は考えていない」と明言。その後も、日本政府は唯一の戦争被爆国として、NPT条約の枠組みを通して、核保有国と非保有国の橋渡しを行う立場を強調してきた。

しかし、NPTの再検討会議は2015年と2022年の2度にわたり決裂するなど、国際的な核軍縮の議論は停滞している。

一方で、アメリカなどの核の傘に守られるNATO加盟国であるドイツやノルウェーが「オブザーバー」として核兵器禁止条約の締約国会議に参加している。
ノーベル平和賞受賞で流れが変わる
そのような中、日本被団協のノーベル平和賞受賞は、核廃絶を訴える被爆地の人たちに大きな力を与えた。

ウクライナ、ガザでの戦争が続き、核の脅威を世界が感じる中、唯一の被爆国、日本が締約国会議にオブザーバー参加することで、核兵器保有国と非保有国の橋渡し役を果たすことに期待する声が多く上がっている。

石破首相は2024年11月、オブザーバー参加を求める公明党の斉藤鉄夫代表に「同じ核の傘の下にあるドイツが、どのような議論があってオブザーバー参加に至ったのか検証が必要」などと答えた。1月に入り、被団協や広島市の松井市長が首相に会ってオブザーバー参加を求めている。
3月にニューヨークで開かれる第3回核禁条約締約国会議までに日本がオブザーバー参加を決断するかどうかが、今、注目されている。
(テレビ新広島)