恒常的に不足している“輸血用血液”。今後、さらに深刻な状況が予想されるという。日本赤十字社は献血の協力を求め続けているが、新たに献血を始める人は減少の一途だ。この献血によって集められた“輸血用血液”は、何に使われ、どのような現状にあるのか。自身も輸血によって命を救われた、テレビ新広島の古沢知子アナウンサーが取材した。
献血で集められた血液の役割、広島の街の人は…
献血で集められる“輸血用血液”は何に使われるのか、ご存じだろうか。広島の街の人に聞いてみた。

「めっちゃけがしたとかで血が足りなくなったとか」
「手術の時とか」
「出血が多量だった時とか?」
「えー、わかんない」
出血多量の際の輸血や、手術時などのイメージが強いようだ。
突然告げられた“白血病”…古沢アナを救った「輸血用血液」
2022年9月。長い闘病を経て、古沢知子アナウンサーがテレビ新広島のスタジオに戻ってくることができた。

「お帰り。お帰り古沢さん!」と、多くのスタッフに拍手で迎えられた。
古沢が体の異変に気付いたのは、この時から4年半前のこと。テレビ新広島で放送する朝の情報番組『ひろしま満点ママ!!』のMCを務めていた古沢は、身体の不調に悩んでいた。

古沢は「朝起きるのしんどい。一日中だるい。土日は寝てばっかり。自分でも自分が嫌になってるというか…」と当時を振り返る。
その後不調に耐えられなくなり、病院で血液検査。その翌日のことであった。

古沢知子アナウンサー:
午前中番組に出て、着替えの部屋で電話を受けたんです、病院からの。話を聞いてそのまま病院に直行したというような状況だったから。これは、大変な病気になってしまったかもしれないと…。
医師から告げられた病名は「急性骨髄性白血病」。そのまま抗がん剤治療が始まった。

「まず、だるい。吐き気。ありとあらゆる症状が出てくる感じで…」想像を絶する副作用が襲ったという。
治療に使われる“抗がん剤”はがん細胞だけでなく、「血液を造る細胞」も壊してしまう。自分で正常な血液を作ることができなくなった古沢が生きるためには、「輸血」が必要だった。

実は、献血された血液の“半数以上”が、がんなどの病気の治療に使われている。しかし、そのことはあまり知られていないのだ。
“輸血用血液”が届くまで
輸血用の血液はどのように作られているのか、古沢は血液センターを訪ねた。広島県赤十字血液センター 献血推進課・渡部聖子さんに、さっそくセンター内を案内してもらった。

渡部さんによると、この“製剤課”で、献血によって集めた血液を血液製剤にしていくそうだ。

中国・四国地方で献血された血液は、ひとまずこの「中四国ブロック血液センター」に集められる。そして、白血球に起因する発熱反応や感染症等の副作用を減少させるために白血球の除去をおこなったり(日本赤十字社より)、ウイルスなどの厳しい検査を経て、「輸血用の血液製剤」になり、各県に配分されていく。

できた血液製剤を配送するのは“供給課”だ。
広島県内の病院からは、毎日、血液のオーダーが来る。必要な血液製剤を間違いのないように確認しながら、それぞれの病院へと届ける。供給課の伊藤真奈美さんに保管されている冷蔵室を見せてもらった。

伊藤さんは「A型、O型、B型、AB型と在庫が並んでいて、普段はO型が5段くらいあるんですが、現在、不足している状態で2段しかない状態になっていて…」と血液の不足を嘆く。

足りない血液は日によって違い、取材した日はO型が不足していた。また、採血から4日しか保存できない血小板は、特に不足しがちだ。血液の不足は、患者の命に関わってくる。
取材したのは午前9時過ぎだったが、この時点で50~60件ほど発注が来ていた。多い時では150件はオーダーがあるそうだ。

取材中も、次々と医療機関からオーダーが入る。
万が一、需要が供給を上回ってしまうことはないのだろうか。伊藤さんによると、他県、そして全国的な協力体制があるので、一番遠くて北海道からも血液製剤を調整する場合もあるのだという。

この時古沢が「闘病中に、きょうは北海道だねって、そういえば言ってた気がしますね」と、輸血をしてもらった時を思い出した。血液製剤のラベルに、小さく採血された土地が書いてあるそうで、“供給課血液製剤だったのだろう。
輸血用血液の使用数が国内でも有数の病院を訪ねると…

ちょうどその時、血液センターから、赤血球と血小板の輸血用血液が届けられた。
1日に4~5回ほど受け取るそうで、届いたものはほんの一部。古沢が「発注していたものが来ないときとかっていうのもあるんですか?」と聞くと、病院スタッフは「血小板に関しては、その時の在庫数の状態次第ではちょっと難しい時もあるけど、そのあたりは先生とのやり取りや血液センターとのやり取りで、何とかしてもらってます」と答えた。
恒常的な血液不足 若者は“献血離れ”…
恒常的に不足している輸血用血液だが、今後さらに深刻な状況が予想されるという。
広島県で年間必要な献血者数は、のべ12万人で、2025年1月現在その数は確保されている。

しかし、新たに献血を始める人は、2013年時点の1万2000人から、2023年には約半分の6,500人にまで減少している。足りない6,000人分は、これまで献血してきた人が繰り返し協力することで、何とか成り立っている。
広島県赤十字血液センター所長・麻奥英毅医師に詳しく話を聞いた。

古沢知子アナウンサー:
新しい人がいないという事は、“若者の献血者が少なくなっている”ということですよね。
広島県赤十字血液センター所長・麻奥英毅医師:
そうです。今、献血者の中心は50代、それから60代前半の方が中心になってます。その世代は、30年前の20代・30代で、その世代がずっとそこから10年経っても中心で、さらに20年経っても中心で、現在でも中心になって献血に協力していただいている。これから先は、その世代はどんどん卒業して行かれますので、急激に献血をする人が減っていくという危機感が、我々にはすごくある。

古沢をはじめ、多くの命を支えている多くの人からの善意の血。今このときも、多くの患者が輸血を待っている。この善意の血のリレーが途切れることのないように、願うばかりだ。

「こうして献血に協力してくださっている皆さんに、本当に心からありがとうございますと伝えたいです」
(テレビ新広島)