1月3日、タイに入国した中国人若手俳優の王星さんが、その後、行方不明となり4日後にミャンマーで保護された事件。

王さんは、タイの地元メデイアに対して、「建物には少なくとも50人は監禁されていて、そのあと連れて行かれた大きな建物にはもっと多くの人が監禁されていました」と話しており、誘拐後、ミャンマーに拠点を置く特殊詐欺のグループに監禁されていたとみられています。

王さんはそこで、髪を丸刈りにされ、タイピングなど特殊詐欺の訓練を受けさせられていました。

中国国内で多くのドラマや映画に出演し、海外進出も考えていたという王さん。
そこに、SNSを通じて実在する映画関係者から“タイで行う映画のオーディション”に招待されたといいます。具体的な話が進まない中で、1度は断ろうとも考えましたが、この人物との今後の関係も考えてタイを訪れたところ、拉致されてしまいました。
今回、犯罪組織が、実在する人物のSNSを乗っ取って、王さんに接触していた可能性があるといいます。

犯罪ジャーナリストの石原行雄氏によると、ミャンマーには売春や強制労働、特殊詐欺、人身売買、違法薬物などの犯罪を行う「犯罪特区」が形成されており、逃亡しようとすれば見せしめのために激しい暴行を受けたり、時には命を奪われ臓器売買まで行われることもあるといいます。

犯罪ジャーナリスト 石原行雄氏:
私は何度かミャンマーの取材もしているのですが、そこで感じたのは(軍によるクーデター後)軍事独裁政権ということで、なかなか行政が適正に機能していないと。警察官や役人の“袖の下”が非常に横行している。
そういう意味では、日本のかけ子の基地が造られていたフィリピンですとか、カンボジアですとか、そういう状況と極めて似ているということが言えると思います。
――組織を統括しているのは?
このような国際的な中国人がらみの特殊詐欺というのは、中国のマフィアが基本的にバックで動いて、組織化して動いていると言われています。

――中国国内よりも捕まりにくいから?
そうですね、国内より情勢が不安定なミャンマーの方が、“金の沙汰”で自由に活動ができるという判断があるのではないかと。
日本人も拉致のターゲットに
人身取引の被害者支援を行うタイの市民グループは7日、ミャンマーにある特殊詐欺グループの拠点に、中国やインドネシア、ケニアなど21カ国の6000人以上が監禁されていると発表。
その中には、日本人6人も含まれており、中国系の犯罪組織によって特殊詐欺に加担させられている可能性があるといいます。

石原氏はこのことからも、今後、「日本人が拉致のターゲット」になる可能性も十分に考えられると話します。

狙われやすい傾向として、SNSなどで「お金に困っている」「借金の支払いが厳しい」など発信している人。また、「リゾートバイト募集」と称して誘い出し、拉致。犯罪行為に加担させられるケースもあるといいます。

さらに、旅行や留学でタイを訪れる際にも注意が必要です。
日本人に人気の旅行先である、タイや東南アジアは多くの旅行者や留学生が訪れていますが、現地に知り合いもおらず、突然行方不明になっても探す人もいないため、発覚しにくく、犯罪組織にとって拉致する狙い目になるのです。
石原氏によると、SNSや旅行先で被害に遭わないためには、以下の事柄に気をつけることが大切です。

・SNSやオンラインの知り合いは他人
・本名も知らない人の話を信じない
・犯罪グループが接触してくるような投稿をしない
・旅行先で安易に現地の人についていかない

――万が一被害に遭ったとき救出されるためにはどうしたらいいのか?
犯罪ジャーナリスト 石原行雄氏:
今回、王さんが早期の救出につながったのは、中国にいる彼女と密に連絡を取り合っていて、位置情報を共有したりということが非常に大きかったと思います。
ですから、特に一人旅をしているとか、自宅でSNSをやって独自につながっていて他の人にその情報を共有していないとかになると、単に失踪した、あの人突然いなくなった…下手をすると失踪したこと自体認識されないという恐れはあると思います。
MC谷原章介:
どこを探して良いか探す方も分からないですし、なかなか見つからない可能性もありますね。
犯罪ジャーナリスト 石原行雄氏:
やはり、オンラインの知り合い、友達というのは、本名も知らない赤の他人でしかないというところ。ここを忘れてはいけないと。
(めざまし8 1月14日放送)