「以前は『布団といえばやっぱりこの柄』と、伝統的な花柄が支持されてきましたが、今はバイヤーさんが自分の直感や好みを信じて、生地を選ぶ傾向があります。
こうした時代の変化に加え、昔ながらの図案家さんは、高齢のためほとんどの方が引退されてしまいました。弊社が長らくデザインを依頼してきた図案家さんは、今70代です。昔ながらの柄を踏襲しつつ、一から新しくデザインを描き起こすのは、なかなか難しいかと思います。
さらに、中国などの安価な輸入品に押され、国産の生地生産自体も厳しい状況にあります。ですから今、一般家庭に残っている布団が、こうした国内の図案家さんが手がけた最後の作品になるでしょう」
「古い」と思っていた柄も、今では希少になりつつある。しかし宮崎さんは「消えていくデザインがある一方、新たな領域に幅を広げている」と話す。
「例えば、動物性アレルギーに対応した羽毛不使用のふとんや、熱伝導率が高い素材を利用し、遠赤外線効果がある羽毛布団生地、ふとんにあえて重みをつけて熟睡しやすくするウェイトブランケットなど、ライフスタイルや悩みに合わせた、多種多様な機能が搭載されています。
“暖かい”だけでなく、その人が眠りに何を求めるのか、機能と生活環境、個人の嗜好(しこう)が調和するような商品がこれから支持されていくと思います。弊社でもライフスタイルカンパニーとコラボし、生地にアロマの香りを練り込んだ新柄を発売するなど、新たなチャレンジを始めています。住環境を含めた、眠りのトータルデザインをこれからも提供し続けたいと思います」

毎年、ふとんの柄は新しく発表され、その時々でデザインを変えているという。宮崎さんいわく、「柄を見れば、おおよその年代がわかる」とのこと。実家の押入れに眠るふとんから、親やその上の世代の思いが見えてくるかもしれない。
取材・文:遠山怜