祖父母の家や実家で見かけたり、使ったことのある年代物の羽毛布団。その柄に注目したことはあるだろうか。

ピンクやえんじ色で描かれた豪華な花柄は、一般家庭によく見られる寝具のデザインとして長年親しまれてきた。そのルーツをたどっていくと、発想源は「着物」にあった。

繊維の街・大阪で長年ふとん生地のデザインを手がけ、羽毛布団地のパイオニア、蔭山株式会社の商品部部長である宮崎尚之さんに、独特の柄や模様のルーツについて聞いた。

日本の羽毛布団、はじまりはドイツ

昨今、布団や毛布の柄はシンプルなデザインが主流になっているが、以前は明るい花柄の寝具類が多かった。この“花柄のデザイン”の始まりは、着物からだと宮崎さんは言う。

ドイツプリントの実際の生地。写真は1980年代頃のもの(写真提供:蔭山株式会社)
ドイツプリントの実際の生地。写真は1980年代頃のもの(写真提供:蔭山株式会社)
この記事の画像(7枚)

「弊社は蔭山商店として1967年に創業し、羽毛布団地の販売を手がけていました。当時から花柄がよく好まれていたようです。

開業まもなくの頃、取り扱っていた羽毛ふとん生地の一部にドイツ製の布を使っていました。ドイツはその頃、世界でトップクラスのプリント・染色技術を有しており、高品質な布製品を産出する国のひとつだったのです。

大阪は行商の街として輸入品が数多く手に入ったため、品質のいいドイツ製生地を使おうと思いついたようです。豪華な濃色で重厚なモチーフの柄がふとん生地のデザインに用いられるようになったのは、この頃からだと思います」

その後、高度経済成長期に入ると、日本の紡績技術も追いついてきて、国内で羽毛布団用プリント生地を生産できるようになる。蔭山がデザインへのこだわりをより一層強め、生地デザイン事業を専門としたのもこの頃だ。