こうした流麗な生地模様が評判を呼び、同社は1970年代から羽毛布団の生地メーカーとしてトップシェアを握る。日本の一般家庭の寝具によくみられる「実家柄」は、この時代に確立されたものだった。

例えば、流れる川に散る花といったものは、屏風や扇子でも見かける構図。だが、羽毛布団の柄では、伝統的な和柄とは少し異なるものが使われている。

宮崎さんは「日本の住環境と流行を踏まえて、着物とは違う表現を模索して生まれたのが、あの華やかな柄でした。ちなみに、図案家さんはいわゆる“昭和レトロ”と呼ばれるような、ポットや電化製品などのデザインも手がけていたそうです」と話した。

1980年代には花柄が圧倒的な人気を誇ったが、90年代以降はストライプ柄が好まれるようになる。一時、1970年代には60年に一度の干支、辛亥(かのとい)の年に紫色の布団が流行したと宮崎さんは語る。
伝統的なふとん地デザイン、今が最後?
宮崎さんいわく、量販店や百貨店のバイヤーで年配の男性が多かった昔と比べて、女性も増えたり流行を取り入れることもあり、寝具デザインも変わってきた。今は北欧テイストの柄に人気が集まっているという。