2024年のプロ野球、セ・リーグは巨人が4年ぶりに優勝し、パ・リーグはソフトバンクが4年ぶりに制覇、日本シリーズでは、リーグ3位から勝ち上がったDeNAが26年ぶりに日本一の栄冠を勝ち取った。
フジテレビ系列12球団担当記者が、そんな2024年シーズンを独自の目線で球団別に振り返り、来たる2025年シーズンを展望する。
第10弾は、球団史上初のリーグ連覇を目指したもののセ・リーグ2位に終わった阪神タイガース。

2024年限りで退任した岡田彰布監督(67)。
18年間リーグ優勝から遠ざかっていたチームを就任から1年で日本一まで導いた2023年。
しかし、球団初の連覇の夢に向けて戦った2024年は、宿敵・巨人にリーグ優勝を譲る悔しいシーズンとなった。

2024年限りで退任した岡田彰布前監督
2024年限りで退任した岡田彰布前監督
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この2年間は岡田監督の言葉が『岡田語録』として、テレビ、新聞を賑わせ、常に注目の的となっていた。

関西テレビも月に1回のペースで岡田監督への単独インタビューをお願いしたが、断られることはなく、30分間みっちりと考えや想いを聞くことができ、時にハッとする一言も1度や2度ではなかった。
そんなインタビューの中で出てきた『岡田語録』をもとに、阪神タイガースの2024年、そして未来について考える。

「モチベーションは連覇しかない」

1985年の日本一は選手として、2005年のリーグ優勝は監督として歓喜を味わった岡田監督。しかし、翌年の1986年、2006年はともに連覇を逃した。

だからこそ、「モチベーションは連覇しかない」と話し、連覇への想いは人一倍強いものだった。さらに「連覇、連覇とみんな言うけど、今まで一度もしていないこと」と、追われる立場になったからこその連覇の難しさも口にしていた。
そして、連覇の鍵は「個人の成績をそれぞれ伸ばすこと。特に野手。それぞれがキャリアハイの数字を残せるようにやってくれたら」と、日本一に輝いた選手たちにまだまだ伸びしろがあると考えていた。

2025年にプロ3年目を迎える森下翔太
2025年にプロ3年目を迎える森下翔太

しかし、結果としては野手陣で2023年から成績を上げることができたのは、2年目だった森下翔太(24)、高卒3年目だった前川右京(21)くらいであった。
打順を固定して、リーグ優勝を成し遂げた2023年と対照的に、2024年は打撃陣の調子に合わせて打順も試行錯誤せざるをえなかった。個人の成績が思ったように伸びなかったことが岡田監督にとって最大の誤算であったに違いない。

「佐藤は東京ドームだったらホームラン王」

開幕前に『すぽると!』で行った取材、「今年期待する選手は?」と質問すると、「佐藤輝明(25)が伸びしろというか、可能性は一番ある。とてつもなくすごい数字を残す可能性がある。佐藤は東京ドームだったら、ホームラン王を獲る力はありますよ」と底知れぬポテンシャルを認め、「佐藤が一番開幕からスムーズにスタートしてほしいよね」と期待感も口にしていた。
岡田監督がここまで選手への期待感を口にしたのは、このインタビューのときくらいであった。その言葉の裏には、左打者に不利な甲子園球場をホームにしながらも新人から3年連続で20本以上のホームランを放ったポテンシャルを大いに認めるとともに、さらなる成長に期待していたに違いなかった。

2024年は自身最少の16本塁打に終わった佐藤輝明
2024年は自身最少の16本塁打に終わった佐藤輝明

そして、佐藤自身も岡田監督からの期待を意気に感じ、2024年シーズンにかける思いは強かった。
ところが、期待とは裏腹に佐藤は6月までわずか3HRと苦しみ、1カ月弱の2軍生活も経験した。

6月のインタビューで岡田監督は「打順は佐藤メインで変えているんですよ。なんとか楽に打たそうっていうか、相手ピッチャーにしても」と、悩める才能の復調を誰よりも願っていた。
結果として、2024年の佐藤の成績は、打率は.268とキャリアハイであったが、ホームランは16本とキャリア最少に終わった。甲子園の風に阻まれるシーンが何度もあり、甲子園でなければと思う打球も何度もあった。
岡田監督の言った「東京ドームだったら…」とは、もちろん佐藤自身も思ったことだろう。

それでも、シーズン序盤は苦しんだものの、8月以降で11本のホームランを放つなど、そのポテンシャルはいまだ計り知れないものがある。いつかホームラン王にと期待を抱かせ続ける才能が爆発するときをこれからも待ち続けたい。

「褒める選手はいない」

10月13日、クライマックスシリーズファーストステージでDeNAに連敗し、シーズンが終了した。

岡田監督の最後の取材はベンチ裏での囲み取材だった。
「この2年間で褒められる選手は?」という質問が飛ぶと、質問に被せるように「いない、いない。そんなのいてるわけないやん。みんなまだまだの選手ばっかりやん」と答えた。

一見すると厳しい言葉に聞こえるが、この言葉に岡田監督の真意と阪神タイガースの未来が詰まっている。
実際にこの2年間で圧倒的な成績を残した選手はいない。野手では打率3割を打った選手も、100打点を超えた選手も、30HRを打った選手もいなかった。

「まだまだの選手」というのは「まだまだこれから伸びしろがある選手」という意味だ。
選手全員が平成生まれと、まさにこれからが伸びざかりの選手ばかり。選手のさらなる成長を願っての最後の言葉だったのだろう。

「今年は巨人が来る」

巨人・阿部慎之助監督(左)と阪神・岡田彰布前監督(右)
巨人・阿部慎之助監督(左)と阪神・岡田彰布前監督(右)

「巨人は今年が90周年でしょ。記念の年でもある。2年連続Bクラスだったこともあるし、阿部監督が新しく監督にもなった。そういういろんなことが重なって、相当やるんじゃないかと思ってますね。補強への力の入り方も含めてね」

岡田監督に2024年シーズンで注意したいチームを聞くと、どんなときでも巨人を挙げていた。時に広島が好調なときでも巨人への警戒は最も大きかったように思う。

巨人への警戒は戦力面だけの話ではない。
前述のように球団90周年などの歴史や時の流れを岡田監督は機敏に察知する。野球は流れのスポーツだとよく言われるが、1試合の中だけではなく、1試合1試合、1年1年が重なり合い、それぞれのチームの歴史が作られると考えている。

藤川球児新監督(左)と岡田彰布前監督(右)
藤川球児新監督(左)と岡田彰布前監督(右)

阪神タイガースは2025年が球団90周年、藤川球児新監督(44)が就任した。
原監督から愛弟子の阿部監督がバトンを受け継ぎ巨人をリーグ優勝に導いたように、岡田監督からバトンを受け継いだ愛弟子の藤川球児新監督が、90周年の記念の年に、リーグ優勝、日本一へ導いてくれることを期待したい。

他球団からの目立ったFA補強はなかったが、なによりもFA権を持っていた大山悠輔(30)、坂本誠志郎(31)、糸原健斗(32)、原口文仁(32)の残留、さらに外国人のビーズリー(29)とゲラ(29)の残留が最大の補強ではないか。
特に大山は宿敵・巨人が獲得に向けて積極的に動いていたこともあり、残留の一報があったときはチームメートや球団関係者からも喜びの声が多く聞かれた。
連覇を果たせなかった悔しさを味わった選手が欠けることなく、チーム一丸となってもう一度戦うことができることは、他球団にとって脅威になるに違いない。

藤川球児新監督
藤川球児新監督

阪神タイガースは岡田監督と歩んだ2年間を土台にし、藤川球児新監督が新たなエッセンスを加え、新たな時代へと進んでいく。その先には明るい未来が待っているはずだ。

(文・永沢徹平)

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