2024年のプロ野球、セ・リーグは巨人が4年ぶりに優勝し、パ・リーグはソフトバンクが4年ぶりに制覇、日本シリーズでは、リーグ3位から勝ち上がったDeNAが26年ぶりに日本一の栄冠を勝ち取った。
フジテレビ系列12球団担当記者が、そんな2024年シーズンを独自の目線で球団別に振り返り、来たる2025年シーズンを展望する。
第9弾は、パ・リーグ3連覇の王者として臨んだものの5位に終わったオリックス・バファローズ。

「ひとつの時代が終わった気がしますね」「歴史が変わるなと」
2024年9月24日。ホーム最終戦に詰めかけたファンの声に耳を傾けると、そんな言葉が聞こえてきた。
この試合は、オリックス一筋で長年チームを支えてきた2人の選手の引退試合でもあった。


22歳でHR王を獲得し“浪速の豪砲”としてファンに愛されたT-岡田(36)、そして守備の名手として活躍し2024年はコーチを兼任するなど信頼も厚い安達了一(37)。チームを低迷期から支え、3連覇にも貢献した “頼れる兄貴たち”がこの日、引退を迎えた。
打席に立ったときの地鳴りのような声援。涙を流しながらグラウンドを見つめる大勢のファン。

そんな忘れられない光景の中で特に印象的だったのは、ベンチ外の選手たちが集まり、フェンス越しに2人の功労者の最後の勇姿を必死に目に焼き付けようとする姿。
この試合が今後のオリックスにとって何か大きなきっかけになるのではないか。そんなことを思わせてくれるようなシーンだった。
苦しんだ2024年シーズン
今世紀初のパ・リーグ3連覇を成し遂げ、常勝軍団としてむかえた2024年シーズン。
4連覇へ向かうオリックスに誰もが大きな期待を抱いていた。
しかし、チームはシーズン序盤から相次ぐ故障者に泣かされた。
特に危機的状況にあったのが投手陣。2023年に新人王を獲得し先発の柱として期待されていた山下舜平大(22)、絶対的守護神の平野佳寿(40)、そして山岡泰輔(29)、山﨑颯一郎(26)、宇田川優希(26)、小木田敦也(26)、阿部翔太(32)、比嘉幹貴(42)など、リーグ3連覇に貢献した中継ぎの中心選手が相次いで離脱。
一番多いときでは、2023年の日本シリーズ出場登録投手17名のうち11名が同時に離脱している時期もあった。投手王国と称されるオリックスにとっては大きすぎる痛手となった。
万全のメンバーとはとても言えない状況の中、前半戦を終えてチームは借金5、1位のソフトバンクと15.5ゲーム差の5位。
後半戦も新たな故障者や打撃不振にも苦しみ、4年ぶりのBクラスでシーズンを終えることとなった。
受け継いだバトン~宮城大弥・紅林弘太郎~
そんな2024年シーズンについて、どの選手も大きな悔しさを口にした。
日本球界を代表する投手だった山本由伸(26)のメジャーリーグ移籍後、オリックスの次期エースとして期待された宮城大弥(23)もその1人。高卒2年目から3年連続2桁勝利、WBC優勝を経験するなど活躍を続け、2024年をプロ5年目で迎えた宮城。
そんな先発の要がシーズン前に語ってくれた、自身が考える“エース像”。
宮城大弥:
「エースは“勝ちたいときに勝てる投手” “この人が投げていれば安心という投手”。チームを救えるような投手がエースになる素質があると思う」

しかし、5月に左大胸筋損傷で離脱。ケガによる離脱は自身初でもあった。
宮城大弥:
「どうすることもできないというか、ただ応援することしかできない。とにかく投げたい、1軍のマウンドで投げたいという気持ちが強かったです」
投げられないことへのもどかしさ。チームが苦しむ中で投げられない時期を経験した。

復帰後は先発ローテーションを守り、本来のピッチングを取り戻したものの、ビジターで迎えた最終戦では、こだわっていた規定投球回まであと1回3分の1というところで雨天コールドゲームに。4年連続の規定投球回を達成することができなかった。
遊撃手のレギュラー、紅林弘太郎(22)も悔しさを語ってくれた。
宮城と同学年で同期入団の紅林は高卒2年目から4年連続で規定打席を達成しレギュラーとして定着。長打力や強肩を生かした守備を武器に侍ジャパンにも選出された。
しかし、その紅林にとっても2024年は苦しいシーズンとなった。

紅林弘太郎:
「もうとてもしんどいというか、チームとしても自分としても悔しいシーズンでした」
シーズン終了直後、シーズンについての話を聞くと第一声で返ってきた言葉。
チーム打率がリーグ5位の.238と打撃面でも苦戦した2024年のオリックス。紅林はチーム2位の136試合に出場したものの、打率は.247、HRも2本と振るわず、不本意なシーズンとなった。

シーズン中、独特な足のステップ・打ち方を用いて、何かを探すように、試行錯誤しながら入念にバッティング練習する姿が印象的だった。
紅林弘太郎:
「プロ野球は毎年が勝負なので、レギュラーが確約されている選手なんていない。競争に勝っていくために成長していかないといけない。こんなもんじゃダメだなと、もっと選手としての価値・レベルを上げていかないといけない」
常に抱いている成長への渇望。思うように結果が出なかった2024年シーズンは、その強い思いが危機感に、そして焦りになってしまっていた。自信がなくなり、自分の中でのいいスイングを見失ってしまっていた。
そんな宮城・紅林に聞いた先輩・T-岡田、安達の引退について…。
宮城大弥:
「頼っていた先輩がいなくなった分、しっかり自分たちで、今いる人たちで上を目指さないといけない。しっかり引っ張っていかないといけないと思います」
紅林弘太郎:
「もちろん野球の技術もそうですけど、普段の行動であったり言動で引っ張るっていう姿を見てきたので、そういうところでも僕らが引っ張っていきたいなと思っています」
口を揃えて出てきたのが“自分たちが引っ張っていく”という言葉。自身たちにとっても、そしてチームにとっても大きな存在であった先輩たちの引退が、2人に火をつけたのかもしれない。
宮城大弥・紅林弘太郎:
「休んでいる暇はないです」
もうすでに2025年シーズンの勝利のために動き出していた。
新しい時代へ

“頼れる兄貴たち”の引退セレモニーで花束贈呈を任された宮城と紅林。結果と姿勢で後輩たちを引っ張ってきたT-岡田と安達のような同学年コンビに。そんな引き継ぎの儀式にも見えた。
受け継いだのは宮城・紅林だけではない。
2人の他にもオリックスには楽しみな戦力がまだまだたくさんいる。
2年目を迎えた2024年は1年間先発ローテーションを守りチームトップタイの7勝をあげた曽谷龍平(24)、ケガで辞退したもののオールスターに初選出されるなどチームの打撃を牽引した太田椋(23)、ルーキーイヤーでプロ野球タイ記録となるデビューから22試合連続無失点を達成した古田島成龍(25)など、若い力が躍動し始めている。
新しい時代へと進んでいくオリックス・バファローズ。
このホーム最終戦に詰めかけたファンはオリックス主催試合過去最多の36,217人。これは、これからのオリックスへのファンの期待の表れのように感じた。

岸田護新監督:
「これからオリックスは強くなります。これからのオリックスは面白いです」
2025年から指揮をとる岸田新監督(43)が自身の引退セレモニーで語ったこの言葉が現実になる日もきっと近いはずだ。
(文・浦田真有)
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