2024年のプロ野球、セ・リーグは巨人が4年ぶりに優勝し、パ・リーグはソフトバンクが4年ぶりに制覇、日本シリーズでは、リーグ3位から勝ち上がったDeNAが26年ぶりに日本一の栄冠を勝ち取った。
フジテレビ系列12球団担当記者が、そんな2024年シーズンを独自の目線で球団別に振り返り、来たる2025年シーズンを展望する。
このシリーズ最終回の12球団目は、2年連続セ・リーグ5位に終わった東京ヤクルトスワローズ。

2021・22年シーズンのリーグ2連覇から一転して2023年は5位に沈んだヤクルトが、2024年も苦境から抜け出せないでいた。
2024年シーズン、スワローズを追い続けてきて感じた課題、そして2025年シーズンへの展望とは。
改革急務!深刻な先発投手の駒不足
課題は駒不足が深刻な先発投手陣。
エース格の小川泰弘(34)が不振で、6月に復帰して勝ち星を期待された奥川恭伸(23)も8月中旬に離脱。村上宗隆(24)やドミンゴ・サンタナ(32)ら役者がそろう打線がリーグトップクラスの破壊力を誇る一方、序盤から大量失点する厳しい展開が続き苦しんでいた。
ヤクルトは規定投球回に到達した投手が1人もいなかった。

そのなかで、2年目だった吉村貢司郎(26)が、23試合(138回1/3)に登板し9勝8敗、防御率3.19と奮闘。10試合以上に先発した投手の中で貯金を作ることができたのは吉村だけ。この事実が台所事情の苦しさを物語っている。
【2024年ヤクルト先発投手陣成績】
吉村貢司郎 9勝8敗 防御率3.19
高橋奎二 8勝9敗 防御率3.58
山野太一 3勝4敗 防御率6.08
小川泰弘 2勝5敗 防御率4.65
奥川恭伸 3勝2敗 防御率2.76
新加入したヤフーレ(26)は4月末の時点で4勝1敗、防御率3.21と好スタートを切り月間MVPも受賞。しかし以降はわずか1勝。援護に恵まれなかった部分もあった。しかしQS(クオリティスタート=6回以上自責3以下)率は54.5%にとどまっており、試合を作ることがなかなかできなかった。
来日4年目だったサイスニード(32)もQS率は43.5%。とくに7月以降は10試合の登板でQSは3試合のみ。防御率も7.30(7月)、4.64(8月)、9.00(9月)と打ち込まれた。

入団から11年連続で投球回数が100回を超えていた小川も離脱があり、12試合の登板で投球回数は62回にとどまった。
また、2021年の日本一時に活躍した奥川恭伸と高橋奎二(27)も、年間を通じてローテーションを守ることができなかった。
その他、石川雅規(44)、山野太一(25)、高梨裕稔(33)、松本健吾(25)らもローテーション投手が崩れた穴を埋めるほどの結果をすることはできず。まさに投手陣が総崩れとなった1年だった。
そんな中、このオフには2024年シーズンの開幕投手を務めたサイスニードと加入したばかりのヤフーレを自由契約に。
先発ローテーションとして投げられる投手が少ない中でヤフーレ、サイスニードが自由契約ということは、高橋奎二、奥川恭伸、山野太一といった若手・中堅の台頭、2024年12試合・62回を投げ2勝5敗、防御率4.65だった小川泰弘の復活が待たれる。

そして、2024年のドラフトで中村優斗(愛知工業大・21)の単独での1位指名に成功。中村は最速160キロを誇る一方、制球力があるのも武器となる。この新人の活躍が鍵になりそうな2025年シーズン。
さらに、MLBロッキーズからFAとなっていたピーター・ランバート(27)を獲得し、2025年シーズンへ向け先発陣の補強は進んでいるが、若手中堅の活躍、覚醒は必須条件。2025年シーズンの投手陣の躍動に注目したい。
NPBラストシーズン村上宗隆

2024年シーズン、33本塁打、86打点で2冠に輝いた村上は、12月の契約更改で「日本でやる最後のシーズンになると思います」と明言。
かねてからメジャーでのプレーを望んでいた村上に対し、球団は2025年シーズン終了後にポスティングシステムを利用して移籍することを容認済み。

2022年の三冠王を含め、村上が獲得した打撃主要3部門(打率・本塁打・打点)のタイトルは合計6個。プロ7年目を終わって通算224本塁打、600打点。プロ7年目までのホームランの数では、王貞治氏の212本、さらには歴代トップだった清原和博氏の222本も超えて歴代トップに君臨した。
とはいえ2025年シーズンで去ってしまう村上への期待ばかりに胸を躍らせるわけにはいかない。現実に目を戻せば2026年シーズンには村上が不在。この抜けた穴は当たり前だが簡単に埋まるものではないし、急ピッチで補強できるものでもない。
だからこそヤクルト打線にとってこれからの5年を占う上でも、2025年シーズンが大事になってくる。一歩間違えれば長期低迷期に入ってもおかしくない状況が待っているのではないだろうか。
村上が抜けた後は助っ人外国人に頼らなくてはならないのが現状だ。
2024年のチームホームラン数は103本でセ・リーグトップに立ったが、そのうちサンタナ(17本)とオスナ(17本)の合計が34本で、全体の33%を占めている。打点もチーム合計の483のうち、サンタナとオスナの合計が142と約3割に達した。

村上が去った後もチーム得点力を保つためには野手陣の底上げが必要だが、レギュラーで若手と呼べるのは長岡秀樹(23)だけで、中堅やベテラン選手に頼っている。
2024年のドラフトでは2位で高校生スラッガーのモイセエフ・ニキータ(豊川高・18)を獲得。春の甲子園では低反発バットながらもライトスタンドに本塁打を放つなど、将来のスラッガー候補として活躍を期待したい選手ではあるが即戦力になることはできるか。
球団ももちろんただ傍観しているわけではない、2024年6月にサンタとオスナと2025年シーズンからの3年契約を結び、2027年にファーム新球場(茨城県守谷市)の開場を予定するなど、編成と育成の両面で動きを見せている。
ただ、2021・22年のリーグ連覇とはガラッと変わったチームなっていくヤクルト。このまま、チームが長期低迷に陥らないためには、スピード感を持って対応していく必要がある。
記者の目
2年間、村上宗隆という男を間近で見てきた身として言えることは、シーズン2冠であった2024年でも彼のポテンシャルは十分に発揮されてはいないということだ。それは本人が一番理解しているだろう。

日本ラストシーズンにむけ、2022年シーズンの輝き、またはそれ以上の活躍をみせるため、チームで一番といっていいほどの努力を重ねている。そして、何より新しいチャレンジに貪欲だ。食事管理や治療面、海外式のトレーニングなど新しいものを取り入れ、合うもの合わないものを判別し、自分の生活に組み込んでいく。そうやって思った結果が出なかったこの2年間も前に進んできた。この貪欲さが彼の強さだ。
2024年シーズン、村上は期待とプレッシャーを背負いながらもチームを日本一に導いてくれるはず。令和の三冠王として。
(文・茂木喜也)
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