2024年のプロ野球、セ・リーグは巨人が4年ぶりに優勝し、パ・リーグはソフトバンクが4年ぶりに制覇、日本シリーズでは、リーグ3位から勝ち上がったDeNAが26年ぶりに日本一の栄冠を勝ち取った。
フジテレビ系列12球団担当記者が、そんな2024年シーズンを独自の目線で球団別に振り返り、来たる2025年シーズンを展望する。
第11弾は、3年連続セ・リーグ最下位に沈んだ中日ドラゴンズ。

「暗黒期」脱却とはならなかった2024シーズン

球団史上初となる3年連続最下位という屈辱を味わった中日。
かつて「投手王国」を築き、セ・リーグを席けんした時代は、時の経過とともに「黄金期」として遠い過去の記憶となり、いつしか長く険しい「暗黒期」に突入していた。

3年間チームを率いた立浪前監督
3年間チームを率いた立浪前監督
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立浪和義監督(55)を迎え3シーズン目となった2024年。
2年連続最下位に沈み、背水の陣で挑んだチームは好調な滑り出しを切った。シーズン序盤とはいえ、4月には8年ぶりの単独首位に立つなど、多くのファンが胸を躍らせた。
しかし、“実りの秋”の到来を信じたファンの想いは、はかない夢に過ぎなかった。終わってみれば球団ワースト記録を更新する3年連続の最下位。優勝はおろか、クライマックスシリーズ進出にも遠く及ばない結果となった。

【2024年中日ドラゴンズ成績】
143試合 60勝 75敗 8分 勝率.444 最下位

球団全体に漂う「負のオーラ」を払拭した「井上竜」

立浪監督就任後、低調な成績だったのは一軍だけではない。
ウエスタン・リーグでも2022年から2年連続最下位と、明らかに球団全体に「負のオーラ」が漂っていた。
特に2023年シーズンは、114試合を戦い33勝止まり。リーグで唯一負け越しを喫し、借金は37まで膨れ上がった。

【2023年中日ドラゴンズ ファーム成績】
112試合 33勝 70敗 9分 勝率.320 ウ・リーグ最下位

そんなチームの立て直しを図ったのが、2024年に二軍監督に就任した井上一樹氏(53)だ。

井上二軍監督 就任会見
井上二軍監督 就任会見

シーズン開幕前には、「二軍は教育の場でもあるけど、勝ちにこだわる」と宣言。その言葉通り、前年大きく負け越したチームは一気に変貌を遂げ、シーズン最終盤まで優勝争いを演じた。

【2024年中日ドラゴンズ ファーム成績】
124試合 71勝 46敗 7分 勝率.607 ウ・リーグ2位

ウ・リーグ優勝争い中のベンチの様子
ウ・リーグ優勝争い中のベンチの様子

13年ぶりのウエスタン・リーグ優勝には惜しくも届かなかったものの、就任からわずか1年で見事にチームを立て直した井上二軍監督。シーズン終了後には、「勝ちにこだわる意識を植え付けることができたと思う」と語ったように、二軍に漂っていた「負のオーラ」を払拭した。

実を結んだ“井上流”コミュニケーション

「負けが込んでしまうとシュンとなってしまう。そして、その雰囲気が流れを作ってしまう」
そう語っていた井上二軍監督が、就任後、最初に着手したのは、チームの“雰囲気改革”だった。

2024年シーズン、二軍では、高卒ルーキーだった福田幸之介(19)をはじめとした若手が汗を流しただけでなく、中島宏之(42)、大野雄大(36)、中田翔(35)など実績のあるベテランも長く調整を続けていた。

選手と談笑する井上二軍監督
選手と談笑する井上二軍監督

様々な年代や状況の選手がいるチームで、井上二軍監督は選手の性格を把握し、場面に応じてアプローチ方法を変え、会話をする機会を作っていたという。

「会話をすることで、今どんな気持ちでやってんのかなとか、今はあんまり触らない方がいいのかなとかいうのを、測りながら接することができる」

選手との直接的なコミュニケーションが、チームの“雰囲気改革”を遂行する鍵となっていた。

笑顔で練習を見守る井上二軍監督
笑顔で練習を見守る井上二軍監督

さらに、井上二軍監督の“雰囲気改革”を象徴する儀式がある。
それは、試合後の“ご褒美”制度だ。勝利後のミーティングで活躍した選手を指名し、若手・ベテラン問わず“ご褒美”をプレゼントする。

井上二軍監督 “ご褒美”授与の様子
井上二軍監督 “ご褒美”授与の様子
ベテラン祖父江も井上二軍監督から“ご褒美”を授かる
ベテラン祖父江も井上二軍監督から“ご褒美”を授かる

「微々たる額・商品だったとしても、“ご褒美を貰うこと=アピールしましたよ”ということですから」と、選手自身が試合でアピールできたことを自覚させるための環境を、こうした儀式を行うことで整え、勝ちにこだわる意識を浸透させていたのだ。

「勝ちにこだわる意識」浸透に自信

“雰囲気改革”が功を奏し、見事にファームを立て直した井上二軍監督。
その手腕が評価され、昇格人事という形で一軍監督に就任したが、待ち受けるのは結果がすべての世界。

就任会見から2日後、井上監督はすぐに動いた。

秋季練習初日 訓示を行う井上監督
秋季練習初日 訓示を行う井上監督

2024年10月、ナゴヤ球場で行われた秋季練習初日。フェニックス・リーグ参戦中の若手を除く選手とスタッフを、練習開始前に外野の芝生に集めて座らせた。
「仲間と強いチームを作るっていうことまで意識がまだできていない。そういった意識をまず持て」「明るくて楽しくて、でもそれだけでは勝てない」と喝を入れた。

二軍で浸透させた勝利にこだわる意識を一軍でも浸透させることができるかが、「暗黒期」脱却の大きなポイントになるからこその行動。そして、「俺の方針はだいたいみんなに浸透していると思う」と選手への信頼を口にした。

それもそのはず、2024年シーズン、1年間通して一軍に帯同したのは、細川成也(26)、清水達也(25)、松山晋也(24)のみ。主力として活躍した髙橋宏斗(22)や岡林勇希(22)、福永裕基(28)、村松開人(24)らを含め、ほとんどの選手が二軍を経験していた。

秋季練習で厳しい表情を見せる井上監督
秋季練習で厳しい表情を見せる井上監督

「それぞれみんな接してきた中で、俺の中での“通知表”がある。それをもとに、俺はこれから動かしていくから」

2024年に二軍を率いた井上監督にとって、目指す「理想のチーム」への第一歩である「選手の性格の把握」については、もうすでに自信を感じていたのだろう。

“2年目”に描く“青写真”

2024年11月に行われた秋季キャンプ。「最強化選手」と位置付けた22名を沖縄に集め、10日間ほど特別メニューで鍛え抜いた。

投手陣は、朝からブルペンに入り、午後は陸上トラックを使った持久走。野手も朝から夕方までみっちりと練習をこなした。
そんなハードな練習中も、選手からは笑みもこぼれ、グラウンドからは大きな掛け声が響いていた。そして、その中心には井上監督の姿があった。

ブルペンで捕手・石橋と話す井上監督
ブルペンで捕手・石橋と話す井上監督
選手たちに交じってノックを受ける井上監督
選手たちに交じってノックを受ける井上監督

ブルペンでは実際にバッターボックスに立ち、守備練習では選手たちに交じってノックを受ける。

ただ練習を見守るだけではなく、二軍で行ってきた選手とのコミュニケーションを継続していく。そんな姿勢が垣間見えた。
2024年10月の秋季練習で手応えを感じていた「選手の性格の把握」から続いて、秋季キャンプで見せた選手との直接的なコミュニケーション。
井上監督は勝ちにこだわる理想のチームを目指し、そのための“雰囲気改革”は着々と進めていた。

「勝ちにこだわる」ことをモットーに掲げ、“雰囲気改革”で二軍を再建した2024年シーズン。
2025年は一軍の舞台で、“2年目”の井上監督が目指す「理想のチーム」が完成するのか。井上監督が描く“青写真”。残すは「勝ちにこだわる」意識の浸透だけだ。

(文・加藤大)

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