きょう1月8日に41歳になった北朝鮮の金正恩総書記。
金総書記にとって重要な節目の年となる2025年に、やりたいこととは?また、その狙いとは?北朝鮮情勢に詳しい龍谷大学の李相哲教授に解説していただきました。

2025年は5カ年計画の節目

金総書記にとって2025年は、朝鮮労働党創建80年、武器開発5カ年計画を完遂させる大事な年。その中でも重要視している「5大課業」について、李教授によると、

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「ICBM」…完成度80%
「原子力潜水艦」…完成度10

「極超音速ミサイル」…ほぼ完成
「超大型核弾頭」…完成度90%
「軍事偵察衛星」…完成はロシアの協力次第

龍谷大学 李相哲教授
龍谷大学 李相哲教授

龍谷大学 李相哲教授:
ICBMは大気圏再突入技術がまだできてないんじゃないかと言われています。大気圏に突入したあと、搭載した核爆弾が目標物に到達するかはまだ不明ですね。これをロシアが提供すると大変だということになっています。
原子力潜水艦というのは北朝鮮の工業力ではおそらく無理ですね。永遠に作れない可能性もありますけれども、ロシアが貸すか提供するかという可能性はあります。

金正恩総書記のやりたいこと① 反離婚キャンペーン強化

北朝鮮では近年、離婚が急増しています。

離婚=反社会主義的行為と見なされていて、離婚により市民の風紀が乱れることを警戒しています。離婚した夫婦は強制労働所送りなど厳しい罰を受ける場合も。

ではなぜ、離婚が増えているのでしょうか?

現在の北朝鮮はとにかく電気が足りていません。
李教授によると、首都・平壌でも電気が通るのは良くて1日に4時間ほど。電気が足りないため、軍事以外の工場が稼働していません。

北朝鮮の多くの男性が、工場が稼働せず収入がない状態になっている一方で、女性は闇市で物を売ったり物々交換などで稼ぎます。

すると、女性が収入のない男性を必要としなくなり、見切りをつけて離婚。ホームレスになる男性が急増しているということです。

龍谷大学 李相哲教授:
女性が家庭を養っているという状況なんです。今韓国に亡命している3万人以上の脱北者の7割以上が女性です。闇市で商売をやってたりとかして、中国に行ったり来たりとかして脱北している人が多いですね。

MC 谷原章介:
北朝鮮は社会主義なわけですから、働かなくてもある程度の基本給みたいなものは配給されないんですか?

龍谷大学 李相哲教授:
一応男性は縛られています。例えば、3000ウォンという給料が出るとしても、今北朝鮮で1ドルが1万ウォン以上するといってるんですね。ですから、0.3ドルくらい1カ月に稼ぐ。1ドルで北朝鮮ではお米2kgぐらい買えるくらいの価値なんです。1カ月働いても、米0.5kgも買えない状況です。

金正恩総書記のやりたいこと② 地方発展20×10政策

毎年20の地域に工場を1棟ずつ建て、10年で200棟建設し、地方都市発展と市民の生活レベル向上を目指す計画です。

しかし、建設しても、電気も機械も道路もトラックもありません。

倉田大誠アナウンサー:
これはどういう狙いなのでしょうか?

龍谷大学 李相哲教授:
人民の生活のために「これをやりなさい」という指示は出しているんですけれども、箱物だけを作ったって何も始まりませんよね。
例えば、今この工場を作る目的は味噌とかしょうゆとかそういうものを作れということなんですが、そもそも味噌とかは大豆がないとダメですよね。作ったとしても道路を作って各地にそれを配達しなければなりません。けれども道路が整備されていない、道路があるとしてもトラックがない、トラックがあるとしてもガソリンがない。
これを作る目的はおそらく写真を撮って「やってますよ」ということを見せたいんですよね。

金正恩総書記のやりたいこと③ 養殖業

2024年12月28日に新浦で行われた、ホタテ・昆布・ナマコ・ウニなどを作る養殖場の竣工式で金総書記は「わずか5カ月前には松林と白い砂浜しかなかった地域が、変革を遂げるという特別な成果を上げた」と称賛しています。

しかし、李教授によると普通に魚を取るよりもお金がかかり、稼働できずに失敗する可能性が大きいといいます。

龍谷大学 李相哲教授:
ウニの養殖というのは、ものすごく技術とお金がかかるんですよね。それよりも海に出て魚取るようにした方がいいんですけれども、船があまりありません。最近は脱北するとして木船に鉄を付けてレーダーにすぐ見つかるようにしているんです。だから海に出さないんですよ。
しかし、養殖施設を1カ所に作ったとしても、北朝鮮の食の問題は解決できないですよね。これは間違いなく失敗すると思いますね。

金正恩総書記のやりたいこと④ リゾート完成

以前から建設している元山市リゾート。
金総書記は「リゾートを完成させて観光で経済を立て直したい」としていますが、李教授によると、建物が完成しても設備や電気がないため稼働は難しいといいます。

龍谷大学 李相哲教授:
今年の6月にオープンすると言っているんですね。この事業は、金正恩肝いりの事業で2014年に着工しています。金正恩の叔父である張成沢がいる時代に計画して、70億ドルのお金を中国から誘致して始めた事業で、2019年にやるつもりだったのが6年延びています。本当にオープンできるか疑問です。

なぜここまで実績アピール?

金総書記が実績をアピールする背景には、暗殺への警戒があるといいます。

李教授によると、ロシア派兵や暗号通貨のハッキングなどで手に入れた金で、兵器開発にお金を投入し、金総書記自身は贅沢三昧しているといいます。

市民は国を頼らず自力で生活するしかなく、金総書記から心が離れている状況だといいます。
そのため金総書記は暗殺を警戒し、警備を厳重に強化。

2024年11月の水害復旧工事視察時の写真を見ると、金総書記のSPが銃弾や爆発物から守る防弾カバンを持っていることが分かります。

龍谷大学 李相哲教授:
今、北朝鮮は昔と違って政情が安定していないという意味もあると思います。
市民の不満は今かなりたまってると思います。だから身の安全を心配してるのではないかというふうに言われています。

(「めざまし8」1月8日放送より)