毎年、プロ野球選手100人に独自調査を行い、打撃や投球など各部門のNo.1を選出するフジテレビ「すぽると!」の人気企画「プロ野球100人分の1位」。
16年目を迎えた2024年シーズンは、「変化球」「打撃」「守備」「走塁」「直球」の5部門で調査。果たして現役選手が選んだ各分野の最高選手とは!

2024年シーズンの最後を飾るのは「直球部門」。
前年までは「スピードボール部門」として調査してきたが、「直球部門」にリニューアル。
単純な球の速さだけではなく、キレやノビといった様々な要素が重視されるようになったため、「スピードボール」で常連だった選手の顔ぶれに大きな変化が。大波乱の展開となった。

第5位の選手から順に紹介していく。

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第5位:6票/ライデル・マルティネス(中日)

2024年シーズン、セ・リーグ最多の43セーブをあげた中日のマルティネス(28)が5位にランクイン。

「一番見てきた中ですごいなと思います」中日・小笠原慎之介投手(27)

「最強かなと思います」広島・小園海斗内野手(24)

マルティネスのストレートは速いだけじゃない。選手達が口を揃えて語ったのはその角度だ。

「彼のボールはすごくいいなと思いますね。スピードも当然出てるんだけど、角度があって彼の真っすぐはなかなか前に飛ばない」ヤクルト・青木宣親外野手(43)

「160km/hくらい出るし、あの角度っていうのはなかなかNPBではいないんじゃないかな」広島・大瀬良大地投手(33)

193cmの長身から繰り出される「角度あるストレート」。ここ3年の平均防御率は驚異の0.84とまさに無双状態だ。

マルティネスの防御率
2022年 0.97
2023年 0.39
2024年 1.09
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3年平均 0.84

しかし、マルティネスは過去2年「スピードボール部門」で連続2位だった。
「直球部門」に生まれ変わった今回の調査では早くも5位で登場と、さっそく波乱の幕開けとなった。

第4位:8票/山下舜平大(オリックス)

2024年シーズン、自己最速を更新する161km/hをマークしたオリックスの山下舜平大(22)が4位にランクイン。

「僕の中では真っすぐは1ミリも当たらなかった」日本ハム・田宮裕涼捕手(24)

「やっぱ違いますね、他の人とは」オリックス・紅林弘太郎内野手(22)

山下舜平大は先発の平均球速ランキングでも、佐々木朗希に次ぐ2位につけている。

2024年ストレート平均球速ランキング(先発)
1位 ロッテ・佐々木朗希   155.9km/h
2位 オリックス・山下舜平大 154.9km/h
3位 西武・今井達也     152.7km/h
(提供:データスタジアム)

「彼の真っすぐはもう本当にきれいにドンって来る。回転がすごくきれいですね。“THE真っすぐ”というか“王道真っすぐ”って感じじゃないですか」日本ハム・清宮幸太郎内野手(25)

「ぶったまげましたね、『球速っ!』みたいな。指にかかってスピンが効いて本当にきれいな縦の回転。伸びも威力も十分にあってスピードも速くて、コンパクトなフォームから来る。本当に結構衝撃を受けました」日本ハム・万波中正外野手(24)

2023年「スピードボール部門」3位だった若き22歳が、早くも「100人分の1位」の常連になってきた。

第3位:9票/髙橋宏斗(中日)

3位にランクインしたのは防御率セ・リーグトップ(1.38)に輝いた中日の高橋宏斗(22)。

「球の勢いももちろん速いんですけど、バッターの手元、キャッチャーの近くのストレートの速さっていうのはすごいなと思いますね」ヤクルト・石川雅規投手(44)

「球がめちゃくちゃ強いですね。だいぶやられました」ヤクルト・村上宗隆内野手(24)

平均球速はセ・リーグトップの152.3km/h(提供:データスタジアム)をマーク。そのストレートを一言で例えると…。

「まさに弾丸みたい」DeNA・梶原昂希外野手(25)

この弾丸ストレートを武器に、2024年シーズンはストレートの被打率が大幅に減少。

髙橋宏斗のストレート成績
     打数 被本塁打 被打率
2023年 244    2   .307
2024年 246    0   .240
(提供:データスタジアム)

2024年シーズン、髙橋宏斗はストレートで1本もホームランを打たれていない。ストレート200打数以上で被本塁打0は松井裕樹(当時・楽天)以来10年ぶりとなる記録だ。

第2位:10票/今井達也(西武)

変化球部門でスライダーが1位に輝いた西武の今井達也(26)が、直球部門でも2位にランクイン。

「表現で表すと自分はピュッて感じですけど、たっちゃんの場合はズドーンっていうか」楽天・早川隆久投手(26)

「力感がないというか、軽く投げてるように見えて150km/h後半くらいを投げてくるんで、フォームと同じスイングをしてたら当たらない」オリックス・森友哉捕手(29)

「本当に力感が全然ないんで、なんか気づいたら差されているっていう感じです」ロッテ・角中勝也外野手(37)

今井達也の力感のないフォームを、現役時代、当時日本最速の158km/hをマークし、剛速球でファンを沸かせた五十嵐亮太さんはこう分析する。

五十嵐亮太さん:
「力感がないっていうのはピッチャーとしてリリースまでの無駄が省けている。インパクトの瞬間だけに一気に力を伝えることができているので、そこはうまさだと思う。
ピッチャーは体重移動していくときに、速いボールを投げようとするとどうしても肩の開きが早くなる。
今井投手の場合は我慢しながらパンッとボールを離すことができているので、ボールへの力の伝わり方もいいし、バッターからしても見えにくいところから、いきなりボールが出てくる感覚だと思う」

今シーズン、今井達也のストレートは奪三振数が両リーグトップ。力感のないフォームで体の開きを抑えることで球界屈指の直球が生まれているのだ。

2024年ストレート奪三振ランキング
1位 西武・今井達也       64
2位 ソフトバンク・ヘルナンデス 63
3位 ロッテ・種市篤暉      62
3位 阪神・村上頌樹       62
(提供:データスタジアム)

番外編・第6位タイ:5票/佐々木朗希(ロッテ)

日本人選手最速のマックス165km/hを誇り、「スピードボール部門」で2年連続1位だったロッテの佐々木朗希(23)は、まさかのランク外となった。

「もう単純に、ちょっと規格外」オリックス・宮城大弥投手(23)

「スピード感的に一番速いし、アベレージもずっと150km/h台後半を投げる」阪神・才木浩人投手(26)

並み居るピッチャーがその速さに脱帽する佐々木朗希の直球だが、今回は6位タイという結果。
マックス160km/hを誇るゲラ(阪神)は11位、同じくマックス160km/hのケラー(巨人)とスチュワート・ジュニア(ソフトバンク)は16位。
やはりこの「直球部門」、スピードだけではランクインできないのだ。

第1位:19票/大勢(巨人)

今回からスピードだけではなく、キレやノビなど、多角的な能力が評価の対象となり、生まれ変わった「直球部門」。
その栄えある第1位に輝いたのは巨人の大勢(25)だ。

「ミサイルみたいな球、すごいなと思いながらいつも見ています」巨人・吉川尚輝投手(29)

「『ウリャー』って言って投げてくる。嫌ですよね、本当に」DeNA・牧秀悟内野手(26)

「速いピッチャーたくさんいるんですけど、ちょっと違ったタイプ」巨人・菅野智之投手(35)

2024年シーズン、大勢は球団史上最速の160km/hをマークし、防御率0点台(0.88)の守護神としてリーグ優勝に貢献。

「すぽると!」が表彰に訪れると、大勢は大喜び。

大勢:
「ありがとうございます。
やった! よし、これが一番嬉しい。今年一嬉しい。いや、(リーグ優勝に次いで)今年2位ですね」

大勢は自らのストレートについて「自分にとっては大切なボールで、一番こだわりというか自信のあるボール」と語る。

そんなストレートへのこだわりを見せたのが、ケガのため2カ月ぶりの復帰登板となった6月30日の広島戦だ。巨人が1点リードで迎えた9回にマウンドに上がると、なんと19球全球ストレート勝負で8セーブ目をあげ、ケガからの完全復活を印象づけた。

大勢:
「2カ月離脱してたので、支えてくださってたトレーナーさん、応援してくださったファンの方々に恩返しではないですけど、そういう姿を見せたいなと思って、全球ストレート」

実は、これまでの「スピードボール部門」で、一度もトップ5入りしていなかった大勢。ルーキーイヤーの2022年は3票で6位タイ、2023年は1票も集められなかった。
それが、2024年の「直球部門」でいきなり1位に。その秘密はボールの握り方にあったという。

大勢:
「今年から逆に変えました」

2023年までは、ボールの縫い目の丸くなっている部分を中指側に持つ一般的な握り方だったが、2024年からは人さし指側に持つ握り方にしたという。
その裏にはあるレジェンドの存在があった。

大勢:
「江川さんのストレートの握りがこうだったので」

代名詞の「浮き上がるストレート」で、史上6人目となる投手5冠を達成した“昭和の怪物”江川卓さん。巨人のレジェンドのボールの握りを参考にしていたのだ。

大勢:
「理想の真っすぐが江川さん。力感なく速いのに伸びる。ああいうフォームで、ああいう強いストレート、キレのあるストレートを投げるっていうのが僕の目標」

握りを変えた 2024年、球速に変化があった。1年前に比べ平均球速が約2km/hもアップしているのだ。

大勢のストレート平均球速
2022年 153.1km/h
2023年 153.5km/h
2024年 155.4km/h
(提供:データスタジアム)

大勢の直球の威力はスピードだけではない。対戦した選手たちはその動きにも戸惑ったようだ。

「他の選手と(ボールの)変化量が違うんですよ、ボールが違う動きをするので、その動きをイメージしてたらもう終わってる。やばいやん、どうやったら当たるんやろうっていう」阪神・近本光司外野手(30)

「速さもあるし、あのスピードで(球が)動いているのは日本人ではなかなか見ない。あの投げ方と球速、それが変化してくるので捕まえづらい」広島・秋山翔吾外野手(36)

「ジャイロ回転のときもあれば、シュート成分が強くて右バッターに食い込んでくるっていう球もある。それに加えて球が強いですし、ストレートを打ちにいってもなかなか打ち返せない」DeNA・桑原将志外野手(31)

大勢:
「シュート成分もありますし、伸びたり垂れたりもするんで、直球部門で1位になって良いストレートなのかな…ていうのはありますけど、僕の中ではストレート」

同じストレートでも、右バッターの内側に食い込んでくるストレートと真っすぐ伸びてくるストレートを使い分けている大勢。どんな場面で使い分けているのか聞いてみたところ…。

大勢:
「それは戦略なんで言えないです。企業秘密でお願いします(笑)」

大勢が「企業秘密」と語るストレートの投げ分けについて五十嵐亮太さんは…。

五十嵐亮太さん:
「アメリカだったらフォーシーム(直球)でもシュート回転の成分が強いボールをシンカーと言うんですけど、そういうピッチャーはそれがメインになる。
大勢投手の場合はシンカー成分の強い真っすぐと逆の真っすぐをしっかり投げ分けることができている。
スピードの差がないのが良いんでしょう。それがバッターからしたら嫌なんでしょうね」

2025年も、スピードの速さに加え多彩に変化する大勢のストレートに注目だ。

(「すぽると!」1月5日放送より)

『すぽると!』
1月11日(土)24時35分
1月12日(日)23時15分
フジテレビ系列で放送中

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