現職との一騎打ちを制し、伊東市のトップに就いた当時、よもやその10カ月に刑事事件の被告人になるとは誰にも想像できなかったのではないだろうか?学歴詐称問題をめぐり、静岡地検は3月30日、同市の前市長・田久保眞紀 氏を有印私文書偽造・同行使などの罪で在宅起訴した。まだ公判請求されただけで有罪が確定したわけではなく、刑事裁判においては推定無罪が原則だが、田久保氏の強弁を振り返ると有名なプロパガンダの手法を想起する人も多いだろう。
書類送検を受け検察が在宅起訴
静岡地検は3月30日、伊東市の前市長・田久保眞紀 氏を有印私文書偽造・同行使と地方自治法違反の罪で在宅起訴した。

田久保氏は市長に就任した直後、実際には除籍となっていた東洋大学の卒業証書を偽造した上、市議会の正副議長や市職員に見せたほか、学歴詐称問題をめぐって開かれた市議会の百条委員会で虚偽の証言をしたとされている。
検察が明かした田久保氏の”悪行”
ただ、検察が指摘した田久保氏の犯行手口には驚いた人も多いのではないだろうか?
田久保氏は2025年6月28日に東洋大学へ訪れた際に初めて除籍となった事実を知ったと同年7月2日の会見で明かし、その後も一貫して同様の主張を繰り返してきた。
7月2日の会見では「一度卒業という扱いになってなぜ除籍になっているのかはきちんと事実関係に基づいて確認していかないと(いけない)」とまで述べている。
ところが、起訴状によれば田久保氏は市長に就任した5月29日から6月4日までの間に卒業証書を”自作”し、さらにはインターネットを通じて業者に作成させた学長名と学部長名の印鑑を押印するなどしたという。
捜査関係者によれば、田久保氏は市長就任後、市職員から卒業を証明する資料の提出を求められたことから、その翌日に印鑑を発注していたと見られている。
つまり、少なくともこの時点ではすでに東洋大学を卒業していない認識を有していたことになる。
しかし、田久保氏は7月7日の会見で「私は本物だと思って、各方面、必要だと思った方にお見せしている」と強弁し、8月には「偽物ではないかという疑惑も上がると思うが?」との質問に対し「いえ!」と語気を強めて反論した。
加えて、同月13日の百条委員会でも「私が除籍である事実を知りました、つまりは卒業できていないという事実を知りましたのは、6月の28日、大学の方に訪れた時になります」などと陳述している。
もちろん、現段階では公判が請求されただけであり、検察の主張が事実として認定されたわけでも田久保氏の有罪が確定したわけでもない。
それに刑事裁判は推定無罪が原則だ。
とはいえ、検察がここまで細かく田久保氏の”悪質性”を起訴状に記しているということは、2月14日に実施した家宅捜索などを通じて印鑑の購入履歴や現物、関係者の証言といった公判を維持するために十分な証拠を差し押さえているのは想像に難くない。
そもそもで言えば、卒業したことに自信を持っているのであれば百条委員会に対しても、捜査機関に対しても”卒業証書”を提出できるはずだし、それが自らの身の潔白を証明することにつながるはずだが、田久保氏と代理人弁護士は”押収拒絶権”を盾に拒否し続けてきた。
プロパガンダの手法として有名な“大きな嘘”
「嘘も100回言えば真実になる」
これはナチス・ドイツで宣伝大臣を務めたヨーゼフ・ゲッベルスによるプロパガンダの手法を評した言葉だ。
厳密にはゲッベルス自身がこの一文を発したという一次情報はないものの、彼の思想を“意訳”したものとして現代に伝わっている。
また、ナチス・ドイツを率いたアドルフ・ヒトラーの著書「我が闘争」にはこんな一説もある。
「国民大衆の心は小さな嘘よりも大きな嘘の犠牲となりやすい。というのは、彼ら自身、小さな嘘は自分たちも日常的に口にするが、大胆な虚偽をでっち上げるなどということは頭に浮かばないし、他人がそんな厚顔無恥な嘘をつくとは信じないからだ」
強弁を張り続けた末に舞台は法廷へ
仮に検察が起訴状に記載したことが事実であるとするならば、田久保氏はどのような思いで嘘に嘘を重ねたのだろうか?
学歴詐称が良からぬことなのは言うまでもない。
一方で、学歴詐称が疑惑として浮上した直後に謝罪していれば問題はここまで大きくならなかったはずであり、ましてや刑事事件に発展することもなかったはずだ。
田久保氏は2025年9月に一度目の不信任を議決された際、自らの辞職・失職を選択せず市議会を解散した。
当然ながら解散に伴う市議会議員選挙には多額の費用が投じられたわけだが、田久保氏が東洋大学を卒業していないことを認識しながら解散したのであれば、市政を無駄に停滞させただけでなく、市に不必要な損害を与えたと言われてもおかしくない。
田久保氏は学歴詐称問題に関連して刑事告発された6つの容疑・8つの事件について、いずれも犯罪の成立を否認しているというが、公判で何を口にするのか注目されている。
(テレビ静岡)
