毎年、現役プロ野球選手100人に独自取材を行い、打撃や投球など各分野のNo.1を決定するフジテレビ「すぽると!」の人気企画「プロ野球100人分の1位」。
16年目を迎えた2024年は、「変化球」「打撃」「守備」「直球」「走塁」の5部門で調査。果たして現役選手が選んだ各分野の最高選手とは!
2024年の第1弾は「変化球部門」。2023年シーズンは1位がDeNAのバウアー投手、2位がオリックスの山本由伸投手だったが、2人が日本球界を去った2024年はランキングが大幅に入れ替わった。
同票で3人の選手がランクインした第5位の選手から紹介していく。
第5位:5票/隅田知一郎(西武)・チェンジアップ
第5位:5票/曽谷龍平(オリックス)・スライダー
第5位:5票/伊藤大海(日本ハム)・スライダー
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1人目は、西武の隅田知一郎投手(25)のチェンジアップ。
「止まる。ボールがほんとに来ない」西武・今井達也投手(26)
「あれマジで止まる。振りにいってやめられないですね」ソフトバンク・栗原陵矢内野手(28)
2人目は、オリックスの曽谷龍平投手(23)のスライダー。
「めっちゃ曲がってますよ。無理やなって思いながら打席に立ってます」西武・源田壮亮内野手(31)
3人目は、今シーズン、パ・リーグ最多勝(14勝)のタイトルを獲得した日本ハムの伊藤大海投手(27)のスライダーがランクイン。
「嫌です。インコース低めのスライダー、当たんないです」ソフトバンク・周東佑京内野手(28)
「スライダーだけでも5種類くらいあるんじゃないか。めちゃくちゃ曲がりますね」西武・佐藤龍世内野手(27)
第3位:7票/菅野智之(巨人)・スライダー
第3位:7票/菅野智之(巨人)・フォーク
続く第3位も同票に。4年ぶりのトップ5入りとなった巨人・菅野智之投手(35)のスライダーとフォークが7票で並んで3位にランクイン。
まず、スライダーにはこんな声が寄せられた。
「あの変化量、変化球のキレ、コントロールでしっかりと投げ分けられるのはすごいなと思いますね」ヤクルト・石川雅規投手(44)
「バッターの反応を見たりというところでは、一番想像を超えてくる」中日・髙橋宏斗投手(22)
「ギュインって感じ」阪神・才木浩人投手(26)
「僕もあのスライダーがあればね。うらやましいなと思って見てます」巨人・戸郷翔征投手(24)
名だたる投手たちがあげた菅野投手のスライダー。実は、今シーズンのキャンプイン直後から、菅野投手はこのスライダーに手応えを感じていたようで、「キレっていう部分でもキャッチャーが捕れないようなボールになりつつある」と語っていた。
その言葉通り、シーズンに入るとバッターを翻弄。ストライクゾーンに収まるスライダーと、ストライクからボールになるスライダー、このインコースへの出し入れでバッターを手玉に取った。
「左のインコースのストライク・ボール、そこに来たらスライダーはストライクかもしれないから、手を出しとかないといけない」阪神・近本光司外野手(30)
「ベース一つ分くらい曲がっているんじゃないですか?」DeNA・宮﨑敏郎内野手(35)
そして、同票で第3位にランクインした菅野投手のフォーク。実は代名詞のスライダーより多くの空振りを奪ったのが、このフォークなのだ。
2024年 菅野投手の球種別奪空振り
奪空振り 奪空振り率
フォーク 76 20.2%
スライダー 59 12.3%
(提供:データスタジアム)
「年々進化していくので、攻略の糸口あるかなと思ったら、そこにまたアップデートされて…。曲がり球のイメージがすごく強かったんですけど、菅野さんのフォークは真っすぐの軌道から落ちるので、見分けがつきにくい」DeNA・桑原将志外野手(31)
「変化的にも落差が今年はすごく大きかったように見えて、元々の得意球であるスライダー、カットボールがより生きていたなと思いました」巨人・丸佳浩外野手(35)
来シーズンはメジャーリーグへの挑戦を表明している菅野投手。フォークとスライダーを武器に、メジャーの舞台でも活躍することができるのか注目だ。
第2位:9票/モイネロ(ソフトバンク)・カーブ
第2位には、ソフトバンク・モイネロ投手(28)のカーブがランクイン。
「スピンも効いてますし、曲がり幅自体もすごくあるし、スピードもあるんで、全てがいいと思います」ソフトバンク・甲斐拓也捕手(32)
「あんなカーブを投げたいですね、今度、機会があったら教わろうかな」オリックス・西川龍馬外野手(29)
「モイネロ投手のカーブだけは別生き物ですね」楽天・鈴木大地内野手(35)
パ・リーグ最優秀防御率(1.88)のタイトルを獲得したモイネロ投手のカーブは、他の投手のカーブと何が違うのだろうか。
「一回頭の上にポンッて消えて、そこから加速してパッと落ちてきて、それで全然ストライクみたいな」オリックス・西川龍馬外野手(29)
「あのリリースポイントからのあの落差で、1回浮く幅っていうのは別格かな」オリックス・森友哉捕手(29)
リリースの瞬間、高く浮き出る独特の軌道。バッターの視界から消える魔球に、プロ達もお手上げのようだ。
「本当にめっちゃ上から落ちてくるし、異次元ですね」楽天・鈴木大地内野手(35)
番外編:3票/大竹耕太郎(阪神)・スローボール
有力候補とみられていた2023年シーズンのランキング上位選手、オリックス・山下舜平大投手(22)のカーブがわずか2票で13位、ロッテ・佐々木朗希投手(23)のフォークが1票のみで19位と波乱の展開となる中、この2人よりも票を集めたのは、第10位にランクインした阪神・大竹耕太郎投手(29)のスローボール。
「普通にさらっと投げられる度胸もそうですし、ほわんってゆっくりボールを投げるのも、すごく難しい技術なので、そこも含めてすごいなって」楽天・早川隆久投手(26)
「その強いメンタルに脱帽です」中日・小笠原慎之介投手(27)
大竹投手の超スローボールは、スピードガンでも計測不能。
スローボールを投げた後の速いストレートでバッターを幻惑する大竹投手。今シーズンの最大球速差はなんと75km/h。近い将来、このスローボールがトップ5入りするかもしれない。
第1位:10票/今井達也(西武)・スライダー
並みいるピッチャーたちを抑えて、栄えある第1位に輝いたのは、西武・今井達也投手(26)のスライダー。わずか1票差で2位のモイネロ投手を上回った。
「なんか気持ち悪いって感じ。曲がっているようにも見えるし落ちているようにも見える」楽天・村林一輝内野手(27)
「バットに当たるイメージがわかない」オリックス・紅林弘太郎内野手(22)
「ストレート並みに怖いというか」西武・武内夏暉投手(23)
「一番良いピッチャーじゃないかなと思っています」ロッテ・種市篤暉投手(26)
「スライダーを真似して試合でも投げるようにもなりました」西武・平良海馬投手(25)
多くの選手が絶賛する今井投手のスライダー。今シーズンのパリーグ奪三振王(187奪三振)に輝いた今井投手のピッチングスタイルと言えば…。
「2分の1の確率で真っすぐかスライダー。それであれだけ三振を取るっていうのは、ちょっと特殊かなと思いますね」西武・炭谷銀仁朗捕手(37)
「ほぼ、真っすぐとスライダーしかないのに、その奪三振数なので相当すごいと思っています」ロッテ・種市篤暉投手(26)
今井投手の投球割合を見るとストレートとスライダーの2球種で9割近くを占める。実は、そんな今井投手のスライダーが12球団で最も三振を奪っている球種なのだ。
2024年 球種別奪三振ランキング
1位 今井達也(西武) スライダー 108
2位 佐々木朗希(ロッテ) フォーク 79
3位 戸郷翔征(巨人) フォーク 69
(提供:データスタジアム)
「いかに真っすぐと同じ軌道に見せるか」
見事1位に輝いた今井投手は、「これ、欲しかったんですよ、実は。僕が最初に覚えた変化球でもあるので、選んでいただいてすごく光栄に思っています」と喜びの言葉を口にした。
西武・隅田知一郎投手(25)が「もう不思議な球」、オリックス・紅林弘太郎内野手(22)が「生き物のように曲がる」と、奇妙なコメントで称える今井投手のスライダー。
「ポンッて出てくるんすけど、そこからファーンみたいな、まだ来てないみたいな、不思議なスライダーの感覚に近かったですね。難しいです」ソフトバンク・今宮健太内野手(33)
“ポンと出てきても、まだ来ないスライダー”、その秘密を今井投手本人はこう分析する。
「いかに真っすぐと同じ軌道に見せるかっていうのも大事で、サイドスローに近いぐらい僕はリリースポイントが低い。その位置から真っすぐもシュートしながら伸びていくような軌道になるので、ちょうど反対の軌道のボールになるというか…」
今井投手のストレートはシュート回転しながら、右打者の内側に伸び上がっていく軌道。それと反対になる球こそがスライダー。途中まで全く同じ軌道から、ストレートとスライダーは反対方向に変化していく。バッターはストレートと錯覚するため、今井投手独特のスライダーが効いているのだ。
「うまく真っすぐの残像を生かして投げられているので、そういうスライダーのイメージも付いたんじゃないかと思います」
“ポンと出てきて、まだ来ない”スライダーで三振の山を築いた今井投手は来シーズンのさらなる飛躍を誓った。
「選手の皆さま、今回は選んでいただいてありがとうございます。スライダー以外でもノミネートしていただけるように、また今後も頑張りたいと思います」
(「すぽると!」11月24日放送より)
『すぽると!』
11月30日(土)24時55分
12月1日(日)23時15分
フジテレビ系列で放送中
※12月1日(日)に「プロ野球100人分の1位“打撃部門”」を放送予定