長野県白馬村の小中学校3校で12月4日、学校給食を食べた児童生徒ら46人が発疹や頭痛などの症状を訴え、大町保健所がヒスタミンによる食中毒と断定した。原因食品は給食のメニューに含まれていた「フィッシュチリソース」に使用されたカジキで、調理過程での温度管理の不備が一因とされている。村の学校給食センターは再発防止に向けた改善計画を策定、16日から給食提供を再開する方針だ。
「常温解凍2時間」が原因か
大町保健所の調査によると、食中毒の原因となったカジキは、調理の過程で最大約2時間にわたり常温下で作業をしていた。

給食センターでは、午前7時35分頃に納品されたカジキを室温16℃の部屋で約1時間自然解凍し、その後粉付けと油をまぶして鉄板に並べる作業を行っていた。この間の温度管理の不備が、ヒスタミンの生成を促進させたと考えられている。
カジキ自体の汚染度が高かったか
給食センターは「この献立は9月にも提供しており、同じ方法で作業していたため、問題があるとはとらえられませんでした」と説明している。

しかし、納品から1時間経過後の段階でもカジキが完全に解凍されていなかったことが確認されており、解凍や粉付け等の作業における温度管理の問題だけでなく、使用したカジキ自体の汚染度が高かった可能性も指摘されている。
ヒスタミン食中毒の特徴と予防法
ヒスタミンは、青魚や赤身の魚に多く含まれるヒスチジンが細菌により分解されて生成される物質だ。長野県健康福祉部食品・生活衛生課の松本泉さんは「マグロやイワシ、サバ、カジキなどの赤身の魚は、ヒスタミンの原因となるヒスチジンが筋肉中に多く含まれる傾向があります」と説明する。

ヒスタミン食中毒の症状は、摂食直後から1時間以内に顔面紅潮、発疹、頭痛、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などが現れる。重症の場合は呼吸困難や意識不明になることもあるが、死亡事例は報告されていない。
予防には適切な温度管理が重要だ。松本さんは「購入したらまず冷蔵庫、冷凍庫で温度管理を徹底し、できるだけ早く調理して食べていただくことが必要です」と指摘する。また、解凍方法についても「流水で水を流しながら解凍する方法や、冷蔵庫内でゆっくり解凍する方法がリスク低減につながります」とアドバイスしている。
給食センターが改善計画を策定
白馬村学校給食センターは今回の事態を重く受け止め、再発防止に向けた改善計画を策定した。主な内容は以下の通りだ。
1. カジキの今後の使用停止と、ヒスタミン中毒リスクの高い赤身の魚と青魚を使用する場合の安全確認強化
2. 納品時間の厳守と、納入された魚の即時冷蔵保管
3. 常温下での作業時間の短縮など調理中の温度管理の徹底
4. 調理時間や工程に無理のない献立作成
5. 検食の時間的余裕の確保と、ヒスタミンリスクのある食材の素材のみの味見の実施

給食センターは「安心安全な給食を提供することは、学校給食センターの基本です。今回は、皆さんの信頼にこたえられなかったことを真に反省しています」と述べ、「2度と同じ事態を招かぬよう、職員一丸となって改善に取り組み、信頼を取り戻していく所存です」としている。
今回の事態を受け、村の教育委員会は調理員などを対象に衛生研修会を実施し、再発防止策を徹底する方針だ。12月5日から停止していた給食の提供は、16日から再開する予定となっている。
(長野放送)