16万人に1人という難病「異染性白質ジストロフイー」の子供を支える家族にとって、日々の生活での悩みや問題を相談できる心の拠り所は「患者家族の会」だ。しかし、希少難病であるため会員数は少なく、会は厳しい運営を余儀なくされている。

難病「異染性白質ジストロフィー」

福岡・春日市に住む塚本みのりちゃん。身体機能が徐々に低下していく指定難病「異染性白質ジストロフイー」を患い、日常生活の全てに介護が必要だ。乳児型か若年型かによって異なるが、脳や末梢神経に障害をきたす場合もある。みのりちゃんは、1歳半頃に発症。7歳になった現在は、体をほとんど動かすことができない。家族は病気と向き合いながら過ごす毎日が続く。

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2024年11月、家族にとって大切な集まりが北九州市で開かれた。みのりちゃんと同じ病気に向き合う「患者家族の会」。会合では、新たな薬の情報や参加者の病状、悩みなどについて意見交換が行われ、この日は全国から10組の家族が集まった。参加した家族の中には「去年、患者会に参加させてもらった時は、まだ座位も保てていて、そこから急激に進行しました」と病状の進行具合について率直に話す人や「歩くこととか喋ることはできませんが、表情は薬のお蔭かなと思います」など、服用している薬の感想を伝える人もいた。

患者家族会 悩み相談できる拠り所

異染性白質ジストロフィーの患者数は、16万人に1人とも言われている。希少難病のため患者家族の会に入会しているのは、全国に30家族、福岡には2家族しかいない。そのため今回の会合は数少ない患者家族同士が交流できる貴重な場だった。

みのりちゃんの母親、塚本友花さんも今回初めて会合に参加。日頃の悩みである「家族旅行など長時間の移動の際に呼吸が止まる。舌の根元が咽頭に落ち込んで気道を塞いでしまう」という車椅子のヘッドレストを交換して乗り心地を改善したいことなどを相談した。「乗ってみますか?」。最近、車椅子をオーダーメイドで作ったという家族が、みのりちゃんを試乗させてくれた。「なんかいいんじゃない?」とみのりちゃんの表情を見ながら塚本さんは早速、取り扱い業者を紹介してもらうことにした。

当事者だからこそ具体的な話を相談でき、悩みを共感してもらえるのが患者家族の会。塚本さんは「私にとって大事な会だと思います」と、会の存在が心の支えになっていると改めて実感したという。

希少難病のため会員数少なく資金難

会の活動を続けるにあたり、必ず直面する問題は、やはり資金不足だ。異染性白質ジストロフィー患者会の吉崎安浩理事長は、「年会費は2000円ほどなんですが、それだけじゃ運営も難しいですし…」と頭を悩ませている。この会は、患者家族が会費を払う形で保たれていて、その会費はホームページの更新や、病気のことを広く知ってもらうためのリーフレットの作成。さらには、患者家族が意見交換する会合に参加する際の交通費に充てられている。

会費に加えて寄付も募りながら活動を続けている。本部がある横浜市では、ふるさと納税を通して支援を募っているという。「フェイストゥフェイスで情報交換するのは、何よりも患者家族の安心感に繋るんですよ。子供のためにもなっているのではないかと信じて活動をやっています」と会の活動継続の重要性を吉崎会長は訴える。

同じ病抱える患者家族の組織必要

難病を抱える家族との生活は閉鎖的になりがちだ。そんな環境の中、顔を合わせて話せる機会を持てる家族会の存在は、心の大きな支えでもある。みのりちゃんの母親の塚本友花さんは「どこに同じ境遇を持っているお父さん、お母さんがいるんだろうと漠然とした感じだったんですけど、患者会に入ることによって気持ちも楽になるし、分からないことがあっても聞いて答えていただけるというのがあるので、すごく助かっています」と会の重要性を強調した。

病気と向き合う患者はもちろん、日々、彼らを支えている家族や関係者を支える組織や団体を支えていくことも必要不可欠な問題となっている。

(テレビ西日本)

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