広島の小学3年生2人が、災害時に高齢者などの避難を助けるロボットを考案し、世界最大級のロボットコンテストに挑む。2014年に77人が犠牲となった広島土砂災害の教訓から避難誘導ロボットづくりを思い立った小学生2人の奮闘と夢を追った。
「避難できるのに、しない人を助けたい」
トルコで開かれるロボットコンテスト、「World Robot Olympiad(ワールド ロボット オリンピアド)」通称「WRO」。
この記事の画像(11枚)世界中の8歳から19歳の参加者が集まり、考案、開発したロボットを競う。
この大会に、広島から日本代表として挑むのは、小学3年生の仮谷賢太郎くんと広沢嵩政くん。日本大会のFuture Innovators部門で最優秀賞を獲得した。
彼らが作り上げたのは、高齢者などを対象にした避難誘導ロボット「テントウムッシン」。警戒レベルに応じてアラームを鳴らし、障害物を避けながら避難口まで人を誘導する。テレビとも連動して、地域の警戒情報が流れる。
警戒レベルが高くなると、救助車両に近づくまで大きなアラーム音が鳴りやまない仕組みだ。
2人がこのロボットを作ろうと思い立ったのは、2014年に77人が犠牲になった広島土砂災害を契機につくられた広島土砂災害伝承館を訪れたときのことだ。
松井副館長が「危険な状況になっても、皆さんなかなか逃げない」と説明。そこで「なぜ避難しなかったのか?」という問いに考え込んだ2人は、命を救うロボットを作ろうと決意した。
英語の特訓を受け、世界へ挑戦
国内予選を最年少で突破し、世界大会への切符を掴んだ2人だが、ほかにも、いくつもの壁があった。
国際大会では、英語でのプレゼンや質疑応答が求められるからだ。広沢くんが通うインターナショナルスクールで、英語の特訓を受けた仮谷くんは「めっちゃ苦労しました。でも、大会に向けて頑張りました」と語る。
東京での国際大会参加チーム強化合宿で技術とコミュニケーションを磨き上げた2人は、英語での説明も堂々とこなすまでに成長した。
「まず避難できる人を避難させましょう」と英語で説明。
世界中から集まる参加者たちとの交流も楽しみだと語る2人。彼らの視線は、未来の希望に向いている。
2人で会社をつくることが夢
しかし、大会の出場にはもう一つ壁があった。トルコまでの渡航費が足りなかったのだ。
クラウドファンディングで支援を募り、多くの人の応援を受けて旅立つ準備を整えた。大会でプレゼンする最後のメッセージには、2人のこんな強い思いが込められている。
「災害で壊れたものは直せても、命は戻らない。これは世界中みんな同じ。早期避難を!」
将来の夢を聞かれた2人は、「ぼくたちで会社を作りたい。名前は『けんたか会社』!」と答える。2人の名前から一文字ずつとった社名だ。
災害で失われる命を少しでも減らそうという思いを胸に2人は世界に挑む。
(テレビ新広島)