2024年に全国各地で大量発生した「カメムシ」により、柿をはじめとする果樹への被害が目立った。刺激を与えると強烈な臭いを出すなどの理由で、駆除の方法に悩む人も多い中、鳥取市の会社が対策グッズを開発した。

果樹への被害も 特産の柿 収量減か

鳥取・八頭町で、全国でも県東部の因幡地方でしか栽培されていないという「花御所柿(はなごしょがき)」が、11月下旬に入り収獲の最盛期を迎えている。

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しかし、生産農家の1人で「花御所柿を育てる会」の細田日出男会長は、「今年みたいにカメムシが異常発生したことはない」と話し、2024年の出来を心配していた。

2024年は全国的にカメムシが大量発生した。鳥取県内でも7月に、14年ぶりに病害虫の発生に対する「警報」が出され、農作物への対策が呼びかけられた。細田会長の花御所柿の畑でもカメムシに果汁を吸われ、十分に成熟しなかったとみられる柿があった。

JAによると、今シーズンの花御所柿の出荷量は、カメムシ被害の影響で昨シーズンに比べ35%減少する見込みだ。鳥取県内では、富有柿(ふゆうがき)など他の品種の柿や二十世紀など特産の梨もカメムシの被害を受け、収量の減少が見込まれている。

農家にとって厄介者のカメムシだが、厄介なのは家庭でも同じだ。鳥取市内で街の人に聞くと、「どこから家に入ってくるか知らないけど入ってきて、1日に20匹も30匹も取りました」、「多いから普通のテープで取る。触らないように」など、その対策に頭を抱えている住民も多いようだ。

刺激を与えると強烈な臭いを発するカメムシ。どのようにして「穏便に」駆除するのか。その答えとなりそうな商品を、鳥取市用瀬町の林業会社「WEST」が開発したという。

照明の近くにつるし粘着材で捕獲

開発された画期的な対策グッズの名は「へこきむしナイス」。“ヘコキムシ”とはもちろん“カメムシ”のことだ。

折りたたまれた厚紙を開いて組み立てると、“ゴキブリ捕獲器”のような形になる。これを空中につるしてカメムシを捕獲する仕組みだ。

開発した企業「WEST」の大野憲一社長は「“ゴキブリ捕獲器”を空中につるしたらいいんじゃないかと、ずっと思っていて」と、この捕獲器を思いついたきっかけを話す。

カメムシが光に集まる習性を利用して、「へこきむしナイス」を照明の近くにつるし、照明にぶつかり落ちてきたカメムシを粘着材でとらえるという筋書きだ。

「カメムシが粘着材に足をついただけでは、臭いを出さないことが多い」という経験上の知識から、臭いを出させないようにカメムシを極力刺激せず、それでいて逃がさない。試行錯誤を重ねて、絶妙な粘着力を実現させたという。

また、殺虫成分や誘引剤を使っていないため、子どもやペットがいるところでも安全に使えると、その商品力に自信を深めている。

本業は林業 開発きっかけは家族の声

大野さんの会社の本業は林業で、それに関する機材の開発などにも取り組んできた。
今回のようなカメムシ対策グッズの開発に取り組んだ理由と聞くと、「カメムシが出ると奥さんが『ギャーギャー』言うから」という家族からの声があった。

そして、自身もビールを飲む時に入ってこないように紙でふたをすることもあるといい、カメムシに悩まされ続けてきた経験があったという。

そうした中で、自宅を飛び回るカメムシを見て、ふと捕獲器の仕組みがひらめいたという。

2024年1月から開発に取りかかり、約10カ月をかけて商品化にこぎ着けた。また、特許庁から「カメムシ補虫具」として実用新案登録も受けた。

大野さんの商品へのこだわりはパッケージにも込められていた。パッケージに描かれたシュールなキャラクターも自らデザインしたものだ。インパクトのあるパッケージで、商品と会社をアピールする。

大野社長は「“ヒーロー”ということではないが、日用品みたいに生活に必要なものになっていくんじゃないかなと期待している」と話す。

アイデアいっぱいの「へこきむしナイス」は1個968円。11月26日から鳥取県内のホームセンターや「WEST」のウェブショップなどで販売を始めている。

薬品を使わない特徴を生かし、今後は農家向けの捕獲器の開発も検討しているといい、厄介者に悩まされる人たちの「お助けグッズ」を生み出そうという意欲は尽きない。

(TSKさんいん中央テレビ)

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