5月9日から13日にかけての5日間で、鳥取県では寄生虫「アニサキス」による食中毒が2件報告された。実は今年に入り、県内では、アニサキスによる食中毒が急増している。
取材班は、過去にこの食中毒を体験した人から、痛みや症状について話を聞くことができた。
さらに「アニサキス」による食中毒のが増えている原因と、避けるポイントもお伝えする。
生の魚が原因…寄生虫アニサキスの特性 イワシの豊漁で中毒者増か
長さ2cmから3cm、幅0.5から1mmくらいの白い糸状の生物。
これが先週、米子市と倉吉市で報告された食中毒の原因となった寄生虫「アニサキス」だ。
米子保健所・梁川直宏 課長:
いずれも生の魚を食べたことが原因です。アニサキスの幼虫はサバ、サンマなど青魚に寄生する。内臓に寄生している虫が、人が食べる身に移る
生きた魚の内臓に寄生するアニサキスは、魚が死んで内臓が傷むと、身に移動する特性がある。その身を刺身などにして生で食べることで、人間が取り込んでしまうのだ。
倉吉市のケースでは、イワシの刺身を食べ、アニサキスの食中毒が起きたということだ。
2022年に入り鳥取県では、今回の2件を含め9件の「アニサキス食中毒」が確認されている(5月16日時点)。これは例年に比べ突出して多いペースだ。なぜなのか。
米子保健所・梁川直宏 課長:
いろいろな要因があるが、イワシの豊漁が影響しているかも
「胃を千枚通しで…」激しい腹痛に嘔吐 体内から4匹
アニサキスによる食中毒の症状は、激しい腹痛、吐き気などだ。
取材班は、2年前にサバ寿司を食べて食中毒になった、島根県内の30代男性から、当時の体験を聞くことができた。男性は、今まで経験したことのない苦しみだったと話す。
アニサキスの食中毒経験者:
サバ寿司を食べた約7時間後、胃を千枚通しで刺されるような痛みで目が覚めた。断続的な強い痛みと、嘔吐もした
この男性は痛みに耐えられず、病院に駆け込んだところ、体内から4匹のアニサキスが見つかった。
痛みをともなうのは、アニサキスが人間の胃に潜り込もうと、胃を刺激して起こるアレルギー反応のためだという。多くのケースは、胃カメラなどで直接摘出することで、症状が回復する。
予防するには?「冷凍か加熱」 70℃なら一瞬で死滅
日ごろの食生活で、アニサキスから身を守るにはどうすればいいのか。
食品の保存について研究する鳥取県の施設では、調理の方法が重要だと注意を促す。
鳥取県産業技術センター・加藤愛 グループ長:
新鮮な魚を選ぶことが大前提
鳥取県産業技術センター・加藤愛 グループ長:
そして、速やかに内臓を取り除くこと。万全を期すためには、-20℃で24時間以上冷凍、または60℃なら1分、70℃以上なら瞬時で死滅する
アニサキスがいないか見て確認することに加え、最も有効な処理方法は、冷凍または加熱することだという。酢でしめても、醤油に付けても、アニサキスは死なない。
刺身で提供の飲食店「-60℃で24時間冷凍」→短時間で適切に解凍
一方で、鮮度のいい青魚を、加熱せず刺身で味わいたい、という人もいるだろう。
刺身を提供する境港市内の飲食店「味処美佐」では、-60℃、24時間以上の冷凍を行っている。県の指導による手法で、アニサキスを確実に殺した後、短時間で適切に解凍。さらに目視で確認しているという。
こうして提供される刺身を、試食させてもらった。
宍道正五 記者:
冷凍とは思えない新鮮な触感、そして味覚です
味処美佐・濱野政和さん:
ご家庭でも、薬局で売っている塩化カルシウムを水溶液にして、冷凍することができる。試してみてください
気温が上がり、食中毒が多発する季節がやってくる。保健所では、青魚を食べる場合、アニサキスに十分注意してほしいと呼びかけている。
(TSKさんいん中央テレビ)