最終処分場がほぼ満杯で、ごみの削減に知恵を絞る自治体が食品などの生ごみを減らそうと新たな取り組みを始めた。売れ残りを減らしたい店とお得な買い物をしたい消費者をつなぐアプリの導入だ。中には「1円」や「半額」の商品もあり、早くも好評を博している。

売れ残り食品をお得に購入

フードシェアリングサービスに参加する店
フードシェアリングサービスに参加する店
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閉店1時間前のパン店。来店客がスマホを手に買い求めているのは売れ残りそうだった商品だ。

これは三島市で導入されている「フードシェアリング」と呼ばれる取り組み。

本来食べられるのに捨てられてしまう食べ物、いわゆる食品ロスの量は三島市の推計では市内で年間 約4400トン。このうち家庭からが約2700トン、小売り店など事業者からが1700トンといわれる。

三島市はごみを埋め立てる最終処分場がほぼ満杯の状態で、食品などの生ごみを減らすため「フードシェアリング」に力を入れている。

こうした中、今回売れ残りを減らしたい店と得な買い物をしたい消費者をつなぐマッチングサービス「タベスケ」を導入。「タベスケ」の導入は静岡県内の自治体では三島市が初めてだ。

費用は導入した自治体が負担し、三島市の場合は年間26万円ほどかかるが、試験的な運用ということで1年間は無料となっている。

アプリで店と客をつなぐ

アプリに登録した店は売れ残りそうな商品や賞味期限が近い商品などを格安で出品し、消費者は欲しい商品をアプリで予約して店舗で受け取るというサービスだ。

食品に表示される「賞味期限」
食品に表示される「賞味期限」

食品などに表示されている期限には「消費期限」と「賞味期限」がある。

「消費期限」は安全に食べられる期限で、期限を過ぎたら食べない方がいい。

それに対して「賞味期限」は品質が変わらずおいしく食べられる期限で、期限が過ぎても食べることはできる。

今回の「タベスケ」では賞味期限の近い商品などを対象とし、2024年11月時点で三島市内の協力店は31店舗、登録者は約2000人となっている。

三島市廃棄物対策課・山添豊さん:
まずは今回のサービスを使って楽しんでお買い得にまずは買ってもらい、結果的に食品ロスが減ったということで、それを私たちは喜んでいる

「もっと店が増えるとありがたい」

タベスケに参加するパン店
タベスケに参加するパン店

KoKaRa Bakeryは低糖質でヘルシーなパンが人気だが、当日に焼いたものしか販売しない上、閉店時間までショーケースに多くのパンが並んでいることを求められるため、店は売れ残りに頭を悩ませていた。

KoKaRa Bakery・山田圭一朗さん:
自分たちで朝から作ったものを最後の最後にごみ袋に入れてしまうということが、一番心苦しかった。それがお客様に届いて食べてもらえるということでうれしい

ラスクなど他の商品に加工できないパンを詰め合わせにして半額ほどで出品。

アプリの利用客からは「これが半額なんて。もっとお店が増えるとありがたい」「SDGsで物を大切にしなければ自分たちが本当に苦しむことになってしまうと思う」など反応は上々のようだ。

売れ残るパンの量は半分以下になった上、思わぬ効果もあったという。

店によるとタベスケをきっかけに利用してくれる客もあり、夕方の来店客がこれまでに比べ増えたそうだ。

「お試しでもいいので食べて」

賞味期限の近い商品などを出品
賞味期限の近い商品などを出品

甘味処「伊豆河童」はトコロテンを中心とした優しい味わいの商品が人気の店だが、品質を確保するため、賞味期限が残り3分の1となった商品は店頭に置かないルールとなっている。

トコロテンの売れ行きは当日の天気や気温に左右されるため、これまでは廃棄せざるをえないことも多かったという。

伊豆河童・高橋康子さん:
賞味期限が短くなってもそれでもほしいといってもらえる人など、多くの人に知ってもらって、お試しでもいいので商品を食べてもらいたい

この日は賞味期限が近いもののほか、箱の角がつぶれてしまった商品などを出品すると、すぐに売り切れた。

賞味期限切れ商品を「1円」で販売

スーパーのエッグマートではこれまでも野菜を少量ずつ仕入れることで在庫を少なくし、売れ残りは総菜として加工するなど食品ロスの削減に努めてきた。

アプリで主に出品しているのは品質的には問題ないものの、消費者が手に取ってくれない商品だ。

賞味期限が前日に切れてしまった商品や配送中や陳列中のミスで少し傷がついたりへこんでしまったりした商品を「1円」で販売している。

1円とはいえ値段をつけることで「買う側、売る側の、食品に対する責任を感じてほしい」との考えからだ

エッグマート松本店・加藤亮 取締役:
(食品が消費者に)捨てられているという自覚を持ってほしい。(店など食品を)取り扱う側ができるだけロスを減らすとためにも(消費者を含め)全員が行動していくことが大事

食品ロス削減へ消費者ができること

2024年11月でアプリの導入から1カ月あまり。

食品ロスの削減量はすべての店舗を合わせると400kgに達した。

三島市廃棄物対策課・山添豊さん:
(商品を)手前から取るのは「手前取り」といわれているが、非常に重要でそれも食品ロス削減に貢献している。まずは自分や家族で消費できるかということを考えつつ、期限を見て買うか買わないかを判断するということもすごく大事。「買ったら食べきる」ということでお願いしたい

食品ロス削減を目指す三島市の取り組み。

すでに効果が見え始めているが、私たちも買い物や調理など普段の生活から見直していくことが求められている。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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