「父が賃貸の契約を断られたのよ。私が毎日寄るし、家賃の支払いも責任持つって言ったけどダメだったの…」

友人から聞いて驚いた。

80代のお父様は、しっかりされていて、金銭面の不安もない。

友人は都内の戸建てに住んでいて、お父様は近くの賃貸物件にひとりでお住まいなのだが、より彼女の家に近い物件が見つかったので引っ越そうとしたら、審査が通らなかったというのだ。

高齢者の賃貸契約は難しいと聞いたことはあったが、まさか、問題なさそうな人でも断られるとは。高齢者の賃貸物件探しの現状はどうなっているのか。

高齢者向けの部屋探しを専門で支援する、国内唯一の不動産会社「R65不動産」の山本遼代表に話を聞いた。

■不動産会社は機械的に年齢だけで断る「40歳からお断り」も

R65不動産代表取締役 山本遼さん
R65不動産代表取締役 山本遼さん
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R65不動産代表取締役 山本遼さん:
高齢というだけで賃貸物件を借りにくいのが現状です。65歳以上の方が入居可能な賃貸物件は、全体の約5パーセントしかありません。

不動産会社は、その人を見るのではなく、単純に「年齢」だけで断る。

基準は会社によってバラバラで、極端な例ですが、「40歳からお断り」という会社もあります。

弊社のお客様で、世田谷区にお住まいのお医者様が、持ち家を売却して、息子さんの近くに賃貸を借りようとしたのですが、高齢だからと断られ続け、必死で探して3か月後にようやく決まりました。

息子さんは豊島区で開院しており、「近くに住んで手伝って欲しい」と言われての住み替え。見守りも大丈夫ですし、お金もあります。それでも貸してくれません。

単純に年齢だけで断られる…「65歳以上は断っているのでスミマセン」と機械的に対応されてしまうのです。しかも65歳という年齢に大した理由がある訳ではなく、「65歳=高齢者」だからダメ。

不思議ですよね。

「この人は大丈夫でしょう」というような方でも、「社内規定だからダメだ」と言われてしまうのです。

■「高齢者は何が起こるか分からないから貸さない」

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R65不動産代表取締役 山本遼さん:
高齢者が借りられない理由は、「孤独死」「認知症」「滞納」。
亡くなられるのが怖いから貸したくない。
認知症になって近隣の人に迷惑をかけられたら困るから貸さない。
家賃の滞納の不安があるからと断られる訳です。

「高齢者に貸すと何が起こるか分からないから断っているんです」と言われます。

確かにこれは非常に難しいところで、大家さんの立場に立ってみると、「以前、高齢者に貸して問題が起きました」という方も結構いらっしゃるんですよね。

現在、およそ430万世帯の高齢者が賃貸物件に住んでいますが、孤独死を防ぐための「見守り」を付けている会社やオーナーさんがどれぐらいあるのでしょうか。

見守りの方法も、家の中に監視カメラを付けるとか、高額な見守りサービスを利用するとか、借り手の負担が大きくうまくいかないケースが多いようです。

■家の引き渡し日が迫っているのに、住む所が決まらない

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R65不動産代表取締役 山本遼さん:
今、問題なのが「建て替え」です。バブル期に建った建物が、戸建ても集合住宅も、ちょうど建て替えの時期が来ています。

高齢者で賃貸というと、「ずっと賃貸暮らし」だと思われがちですが、今は持ち家を売却して、賃貸に住みかえる方も多いのです。

しかし、ここが困っている部分でして…。
「家の売却が決まっていて、引き渡し日も決まっているのに、次に住む家が無いんです」という切羽詰まった問い合わせが数多くあるのです。

資産はあっても部屋を借りられない。年齢だけで判断する状況を変えなければ、いつまでもこの状態は続いてしまいます。

■高齢者の滞納率は単身の社会人より低い 不動産会社の意識改革が必要

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R65不動産代表取締役 山本遼さん:
不動産賃貸の店舗って、20代30代の若いスタッフの方が多いんですよね。

だから高齢のお客さまが来られた時に、「なんでこの人は70歳で賃貸を借りるのだろう」と分からない。

分からないから「変な人なんじゃないか」「身寄りがなくて大変なんじゃないか」と思ってしまう。

また、普段から大家さんが「高齢者はね…」と言っているのを聞いたりしているので、お客さまの話をあまり聞かずに断ってしまうのです。

私自身も昔はそうでした。高齢者の物件探しは時間がかかるからと、断ってしまっていました。

ですがある時、高齢の方の物件探しを担当した時に「その人を見ないで、年齢だけで断っているのはおかしい」と改めて気が付いたのが、R65の起業のきっかけです。

最近は、不動産会社から「どうやったら高齢者に賃貸を貸せますか」と聞かれる機会が増えてきたので、社員向けのセミナーなどをさせて頂いています。

例えば、「家族が近くにいるから見守りは任せられる」とか、「高齢者の滞納率を実際のデータで見ると、単身の社会人より低い」といったことを、ひとつひとつ丁寧に説明していくと、不動産会社のスタッフの意識にも変化が出てきて「そうだよな」となってきます。

「高齢者の物件探し、前向きに取り組んでみようかな」という会社が一社でも増えることを目指しています。

■「保証会社」「見守りサービス」高齢者に貸すリスクは解消されつつある

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R65不動産代表取締役 山本遼さん:
どうやって、高齢の方のリスクを解決するのか。「孤独死」「認知症」「滞納」の内、「認知症」以外は解決しつつあります。

まず滞納については保証会社。保証人の代わりになる保証会社が、高齢の方でも使えるようになってきています。不動産会社にとっては安心材料となるでしょう。

孤独死については、弊社は「簡単で安価な見守りシステム」を提供しています。電気のスマートメーター(電気計)を利用して、30分ごとの電力の変化を見ることで、見守りが出来るシステムです。

住む人は、特別なことをする必要はありません。普通に生活するだけでよく、料金も従来のものと比べものにならないほど安価です。

「高齢者は賃貸を借りにくい」それだけ見ると大きな問題に思えますが、ひとつひとつ丁寧に見ると、解決策はかなり増えてきています。認知症を除けば、他の問題は解決したと言っても過言ではないと思います。

■いくつになっても好きな場所に住める社会を!

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日本は世界で最も高齢化率が高い国です。ご高齢の方が入居可能な賃貸物件を増やすことで、「いくつになっても好きな場所に住める社会」の実現を目指したいと思います。

(R65不動産 代表取締役 山本遼さん)

(関西テレビ 2024年11月23日)

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