地元の特産品「つくだ煮」を未来につないでいこうと奮闘している男性が秋田・潟上市にいる。昔ながらの味を守りながら、若い人たちが地元に残り、活躍できるようにと改革に乗り出した老舗つくだ煮店の4代目の思いを紹介する。

逆境を乗り越え伝統の味を守る4代目に

シラウオやワカサギなど、香ばしくて甘じょっぱい味わいのつくだ煮。八郎湖で取れた魚を使った地域の特産品だ。

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つくだ煮を作っているのが、1947年(昭和22年)創業で、従業員約20人の老舗つくだ煮店「佐藤徳太郎商店」だ。

社長の佐藤進幸さん(49)は、高校を卒業後、仙台市で広告デザイナーとして活動した。
潟上市に戻り、家業を手伝うきっかけとなったのは、交通事故だった。大けがをした佐藤さんは、献身的に看病してくれた両親の大切さを実感した。

佐藤さんは「仙台に帰ってもしばらく仕事ができないし、歩けないから、『実家に帰ってきて仕事を継ぐから』と言ったらリアクションはあまりなかったが、たぶん喜んでいたと思う。そう思っていてほしい」と振り返る。

思わぬ事故から、第2の人生のスタートを切った佐藤さんだが、またもや困難に直面した。2011年の東日本大震災で福島にある自社工場が津波の被害を受けた。

会社を立て直すため、3代目の父・進さんと毎日話し合っていた矢先、進さんが病に倒れた。

「亡くなる前の年は本当に本音でぶつかり合えて良かったなと思う。貴重な時間だった」と話す佐藤さん。最終的には昔ながらの技術を革新していき、全国に秋田のつくだ煮を広めるという方向性でやっていこうと決意したという。

佐藤さんは、父の思いを胸に2013年に店の4代目を継ぎ、つくだ煮の味を守っていくために改革を進めている。

「職人による勘や人による部分は守っていかなければと思い、同じ製造でも、例えば砂糖やしょうゆの量を量るのは職人の勘じゃなくてもできるので機械を使ったり、守るべき部分とどの部分を改革して新しくしていくか。その見極めがすごく大事」と佐藤さんは話す。

つくだ煮を次世代に残すため新商品開発

つくだ煮の味の決め手となるのが、秘伝のタレだ。

秘伝のタレを使ったつくだ煮
秘伝のタレを使ったつくだ煮

自家製しょうゆや水アメ、麦芽糖などで作るタレは、素材本来のうまみが引き立つよう、具材の種類によって味の濃さを調整している。

また、新商品の開発にも挑戦していて、定番からピリ辛味などの変わり種まで、約30種類を展開している。なかでもいち推しは、秋田のコメに合うおかずを決める「ごはんの友選手権」でグランプリに輝いた「華しょうが」だ。「つくだ煮を次の世代に残したい」という佐藤さんの思いに賛同した開発チームのアイデアから生まれた。

佐藤徳太郎商店・佐藤進幸さん:
あまり口出ししないほうがいいなと思って。いつのまにかできていた。勝手に応募して、開発チームから『なんか受賞したので社長、授賞式行ってください』と言われて。みんなが何回もごはんに合うためにどういう味付けにしようかと繰り返し作った成果じゃないかと思う。

「華しょうが」は、大潟村や横手市産のショウガなど県産食材にこだわり、ピリ辛で爽やかなショウガの風味とアミの甘じょっぱさで、ごはんが何杯でも進む。

「秋田のつくだ煮」を全国に広げたい

店を継いで11年。

「つくだ煮というのは、ただ仕入れて売るだけではなくて、魚を取ってくれる漁師やいろんな人を合わせて地域全体でできるものだと思う」と語る佐藤さん。地域の人たちの協力なくしてはつくだ煮作りはできないと強く感じている。

そして「若い人を地元に残していきたい。いま、この伝統やノウハウを次世代や未来につないでいくためには若い人の力が絶対に必要」と話す佐藤さんは、100年先、200年先でも、秋田のつくだ煮が全国に名前が広がっているのが野望であり、夢だという。

地域とともに歩むつくだ煮作り。これからも佐藤さんは、地域をつくだ煮で盛り上げていく。

(秋田テレビ)

秋田テレビ
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