天皇陛下は11月14日、第215回国会開会式のため国会議事堂へお出ましになりました。憲法では、天皇の国事行為の一つに「国会を招集する」というものがあり、これにより、天皇陛下は国会の開会式に臨まれたのです。
重さ1トンの扉
天皇陛下の車列は午前10時40分頃、皇居を出発し、皇居前広場で右折して桜田門を通って内堀通りへ。そこから国会へと向かいます。
この記事の画像(10枚)車列は、警視庁の側車付き二輪自動車、つまりサイドカーが着いたオートバイが陛下の車の前後に、さらにその前後には、警備のオープンカーが連なりました。
一方国会の方は、お迎えの準備が進められていました。
10時30分ちょうど、中央玄関の内側で時計を見ていた参議院の職員が、「開扉!」とかけ声を掛けると、国会の五つある扉が一斉に開けられました。ブロンズ製で1枚、約1トンあるというこの扉。今回は参議院の女性職員が中央の扉をゆっくりと押し開けました。それまで、薄暗かった中央玄関の内側に、外の明かりとちょっとはだ寒い空気が流れ込んできました。
実はこの入り口は、天皇陛下をお迎えするとき、衆議院議員総選挙と参議院議員選挙の後に召集される国会に議員が初登院するとき、そして外国の国賓をお招きしたときにだけ使用される所で、扉は普段は開くことはないとのことでした。
国会開会式は参議院で
中央玄関から外を見ると、正門入口には2本の日の丸が掲げられています。そして、国会の前に広がる広場には、国会議員の有志が並んでいました。扉の内側には、衆参両院の正副議長がお出迎えのため控えます。
そんな中、到着された陛下。お出迎えに挨拶をした後、左手にシルクハットと手袋を持ち階段を上っていかれます。この階段の先には、中央広間、そして陛下の「御休所」があり。陛下はまずそこに入られたのでした。
午前11時からの開会式を前に、参議院には多くの議員が入ってきました。開会式は戦前の貴族院から設備をそのまま受け継いでいる参議院で行われます。参議院の中央奥には、玉座もあるのです。
衆議院の議員も参加できるので、この日、参議院は自由に席に座ることができます。
でも、見ていると、座り慣れているためか、正面から見て右側に与党、左側に野党の議員の多くが座っているように見えました。
陛下入場後に議場から携帯の音が…
午前11時になり、議員が起立する中、額賀衆議院議長の先導で、陛下が入場されます。そして玉座に着かれました。その際、議場から携帯音がしたのは、ちょっと残念でした。
額賀議長が式辞の中で「我々に課せられた重大な使命に鑑み、日本国憲法の精神を体し、おのおの最善を尽くし、もって国民の信託に応えようとするものです」と述べました。
決意の表明というところでしょう。
「国民の信託に応えることを切に希望します」
陛下がおことばを述べられました。
「本日、第215回国会の開会式に臨み、衆議院議員総選挙による新議員を迎え、全国民を代表する皆さんと一堂に会することは、私の深く喜びとするところであります。ここに、国会が、国権の最高機関として、当面する内外の諸問題に対処するに当たり、その使命を十分に果たし、国民の信託に応えることを切に希望します」
今回は、特別国会の開会式でした。
特別国会とは、衆議院の解散・総選挙から30日以内に開かれるもので、首相の指名や両院議長を選んだりするために開かれます。慣例的には、会期は短く、最短で3日だということです。
今回の特別国会は4日間で、このため、この日陛下は開会式のために国会を訪問されましたが、同日に国会は閉会しました。
おかしいと思えますが、新内閣の組閣が終わってから国会の開会式が行われるのが通例で、開会式と閉会が同じ日になることも多いようです。
陛下は、午前11時14分、国会を後に後にされました。
滞在時間は30分ほどでしたが、日本国憲法を遵守する陛下にとっては、国事行為という大切な行事であると同時に、「国民の信託」により選ばれた議員たちと会う大切な時間でした。
議員にとっては、天皇と一堂に会するという誉れであると同時に、「国民からの信託」という重責を感じてもらう大切な時間だったのです。
【執筆:フジテレビ皇室担当解説委員 橋本寿史】