親が育てられない赤ちゃんを匿名でも預かる、熊本市にある慈恵病院の『こうのとりのゆりかご』をめぐる病院と行政側のやりとり。預け入れ時の「匿名性を最後まで貫くことは容認できない」とした、熊本市の専門部会の報告書にその真意を尋ねた蓮田理事長に10月31日に専門部会が回答した。
「バランスの取り方は引き続き検討」
慈恵病院の蓮田健理事長は2024年6月に『ゆりかご』の検証を行っている熊本市の専門部会、そして、大西熊本市長に対し、公開質問状を提出。
専門部会が示した第6期検証報告書の中で「最後まで匿名を貫くことは容認できない」「身元判明のため引き続き調査を徹底」としていることをめぐり、「預け入れに来る実親の匿名性を否定することは『ゆりかご』や内密出産のシステムそのものの否定だ」として、その真意を尋ねていた。
専門部会は10月31日に「実名を告げなければ、ゆりかごに預けられないという制度では存在意義はない。一方で子どもの出自を知る権利の保障も重要」とし「そのバランスの取り方は引き続き検討したい」と回答。
安部部会長は同日に開いた会見で「過去の報告書を基礎にして書いてきたが、次期報告書では見直す」とする考えを示した。
安部部会長は「預け入れられた子どもも親も、幸せな人生を送ってほしい。社会調査は私はこれから先も必要と思う。ただ拒否されたら、それを破ることはできない。でも接触しないと拒否かどうか分からない」と述べた。
回答に一定の理解示すも匿名性譲れない
これに対し慈恵病院の蓮田理事長は「母子の生命と健康を確保すること。次は子どもの養育先を決めること。出自を知る権利はそのあとにくると考えている」と話し、「明確には答えられていないが、少なくとも匿名性を容認できないという文言はなくなったので、私はそれで良いのではないかと思っている」と述べた。
蓮田理事長は回答に一定の理解を示しながらも、匿名性の保障については譲れないと強調した。
一方、蓮田理事長からの同様の質問に対し、大西市長は回答書で「匿名を貫くことで支援が受けられない可能性があり、子どもにとっては自らの生い立ちに関する情報が得られなくなることが課題」と回答している。
（テレビ熊本）
