食事の時にものがかみにくい、話すときに舌が回らない、ということはないだろうか。それは「オーラルフレイル」かもしれない。
オーラルフレイルとは、舌を含めた口周辺の機能が衰えた状態のこと。近年の調査では若者も例外ではないことが分かってきた。ささいな不調を見逃さないためのポイントやトレーニング法を専門家に聞いた。
口の機能低下が生活の質の低下に…
「オーラルフレイルとは日本独自の概念で、オーラルが口、フレイルが虚弱を表す言葉で、直訳すると“口の虚弱”」と説明するのは、福井総合病院の言語聴覚士・谷川尚子さん。

「年齢を重ねると口の筋肉が弱くなるのに伴い食べる力も弱くなり、心身にも影響が出てくるため、相互に絡み合って悪化していきます。オーラルフレイルと聞くと口の機能だけをイメージしやすいですが、生活全般を含めた概念です」と説明する。
ものを噛みにくくなると食事をおろそかにする、しゃべりにくくなると人と接することを避けるようになる、というように口の機能低下が生活の質の低下につながる恐れがある。
自分は大丈夫?オーラルフレイルかチェック
東京都健康長寿医療センター研究所の調査によると、1人で食事をする人はそうでない人より1.82倍高いという結果が出ている。

気心の知れた仲間や家族と話をしながら食事を楽しむことで、オーラルフレイルになりにくいと考えられている。
年齢を重ねることで口の機能が低下しオーラルフレイルになりやすい傾向があるが、実は若い世代も油断できない。

厚生労働省が2019年実施した国民健康・栄養調査によると、20代の約2割が「左右両方の奥歯でしっかり噛み締められない」と答えていて、噛みにくさに問題を抱えていることがわかっている。
自分がオーラルフレイルかどうかは、5つの項目でチェックすることができる。

1.自身の歯は19本以下
※差し歯や金属をかぶせた歯は自分の歯として数え、インプラントは自分の歯として数えない
2.半年前と比べて硬いものが食べにくい
3.お茶や汁物等でむせることがある
4.口の渇きが気になる
5.普段の会話で言葉をはっきりと発音できないことはある
上記のうち2つ以上が当てはまった場合はオーラルフレイルと考えられる。
“口の体操”で心と身体の健康を守ろう
若い頃からの対策は不可欠だということで、言語聴覚士・吉田唯さん(福井総合病院)に簡単にできるトレーニング「オーラルフレイル予防のための口の体操」を教えてもらった。

1.口を大きく開ける、閉じる、を繰り返す
できるだけ一番大きく口を開けて、しっかりぐっと噛み締めるように閉じてもらうと効果的だ。

2.口を横に引き、前に突き出す動きを繰り返す
唇の周りや頬の筋肉を使っているので、口を開けるのとは違う筋肉を使っている。

3.頬を膨らませた後、へこませる
頬をへこませるときに喉の筋肉を使っているので飲み込みのトレーニングにもなる。

4.舌を出して引っ込める・左右の口の角をなめるように動かす・上下の唇をなめるように舌を動かす
これらをすべて5回ずつ、無理はせず、自分のペースで行うと効果的だ。
口のささいな衰えを甘く見てはいけない。体の衰えは口から始まることが多く、放置すれば高齢者の場合、要介護になる恐れもある。

自分がオーラルフレイルかどうかを定期的に確認することが、深刻な状態につながらないためのポイントだ。
普段から口周りの動きを意識して、心と身体の健康を守ろう。
(福井テレビ)