国内でも年々、市場規模が拡大しているeスポーツ。特にZ世代を中心とする若者が夢中になっていると言われているが、静岡県沼津市にはこのeスポーツを活用して健康の維持・増進に努める高齢者施設がある。
利用者に“太鼓の達人”が大人気
静岡県沼津市にある通所型リハビリ施設「デイケアさとやま」。

52歳から101歳までの167人が、体操や運動を通して心と体の健康の維持に取り組んでいる。
この施設で2年前から始めたのがeスポーツだ。
レクリエーションがマンネリ化する中、斬新で楽しいものをという発想でプログラムに取り入れ、その狙いについて柳田礼央 部長は「eスポーツは勝ち負けがはっきりしているので利用者同士が白熱するのではないかという点と難易度の調整が容易にできるので幅広い利用者に利用してもらえるのではないかという点があった」と明かす。

利用者の中で最も人気なのがゲームセンターなどでもよく目にするバンダイナムコアミューズメントの「太鼓の達人」。
反射神経やリズム感が養われるほか、体が不自由な人でも参加しやすい点が理由で、利用者のひとりが「やっていて夢中になる」と笑顔を見せれば、別の利用者が「子供の頃から太鼓をよくやっていた。だから、音がするとついやりたくなる」と口にするなど好評な様子だ。
eスポーツならではのメリットを活かし
さらに、オンラインで世界中の誰とでも対戦できるeスポーツのメリットを活かし「デイケアさとやま」では定期的にほかの施設との交流会を開催。

利用者同士のコミュニケーションの場の創出につながっていて、前出の柳田部長は「自分の施設にいながらにして他の施設と交流が持てるというのは普通のレクリエーションではないこと。eスポーツだからこそ出来ることなので非常に魅力的。eスポーツを通じた利用者同士でのコミュニケーションや家族との新しい会話につながってほしい」と話す。
悲しみ中で出会ったeスポーツで生活にハリ
2年前からデイケアさとやまを利用している靍谷幸子さん(86)は施設内で開催された大会のチャンピオンで、優勝がうれしくて家族に知らせたところ「おばあちゃん、やったね~!」と家族が大喜びしてくれたそうだ。

7年前に最愛の夫を亡くした靍谷さん。
悲しみでなかなか立ち直ることができなかった中、eスポーツに出会い、「今はとても楽しい。やればやるだけちょっとずつ楽しくなっていくので。それと達成感があるので生活にハリが出た感じ。そうやって私が元気でいることを家族が喜んでくれるということがお互いの励みになってとても良かったと思う」と前を向く。

人生100年といわれる今。
高齢者の心と体の健康を支える新たなツールとしてeスポーツが今後ますます活用されていきそうだ。
(テレビ静岡)