大阪地検トップの検事正だった男が、部下の女性検察官に性的暴行を加えた罪に問われている裁判の初公判で、男は、起訴内容を認め、謝罪した。

被害者の女性検察官は、事件の悲痛な胸の内を涙ながらに語った。

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被害者の女性:被害を受けてから約6年間、本当にずっと苦しんできましたので、なぜもっと早く罪を認めてくれなかったのか。認めたとしても、私の処罰感情が和らぐはずもありません。(被告は)検察組織や検察職員を人質にして、私に口止めをして、公にされたら死ぬと脅され、私は被害申告できませんでした。(裁判では)6年間がずっと頭の中をグルグル回りながら検察官の冒頭陳述や証拠調べの説明を聞いていました。

元検事の上司から受けた性被害事件から6年。25日、ようやく初公判を迎え、被害者の女性がその悲痛な胸の内を明かした。

■初公判で北川被告は、細々とした小さな声で起訴内容を認めた

準強制性交等の罪に問われているのは当時、大阪地検トップの検事正だった北川健太郎被告(65)。

2018年9月、大阪市内の官舎で、酒に酔って抵抗できない状態だった女性に性的暴行を加えたとされている。

ことしに入って女性が検察幹部に被害を申し出て、大阪高検が6月に、北川被告を逮捕。

大阪地検が起訴した。

そして、迎えた25日の初公判で北川被告は…

北川健太郎被告:公訴事実を認め、被害者に深刻な被害を与えたことを反省し、謝罪したい。ご迷惑をおかけしたこと、世間を騒がせたことを誠に申し訳なく思っています。

 表情を変えず、細々とした小さな声で起訴内容を認めた。

■「被害を公にすれば大阪地検が立ち行かなくなる」と被告が書面で伝えたため、被害の申告ができなかったという

検察側は、冒頭陳述で、事件当日、泥酔状態になった女性が一人でタクシーで帰ろうとしたところ、北川被告が強引にタクシーに乗り込んできた。

気づいたら被告の自宅で性交されていて「やめて」と言ったが「これでお前も俺の女だ」と言われ、被害者は抵抗すれば殺されるという恐怖を感じたと指摘。

さらに、被告は女性に対し「被害を公にすれば大阪地検が立ち行かなくなる」などと書面で伝えたため被害の申告ができなかったと述べた。

■閉廷後、被害者の女性が会見し、涙ながらに被害の状況を訴えた

閉廷後、被害者の女性は…

被害者の女性:声上げられずに苦しんでいる被害者の方々、勇気をだして声をあげても苦しみ続けている被害者がたくさんいます。 被害を受けて苦しんでいる人に寄り添い力になりたいと思い検事に任官しました。 これまで、検事としてたくさんの被害者の方にともに泣き、戦い、寄り添ってきました。 いま、私自身の経験を話すことで、性犯罪被害者の正しく知っていただくことで、性犯罪を撲滅したいという思いから会見を開くことにしました。

事件から6年後に被害を申告した理由について、当初は、職や家族を失いたくないと思い、「忘れようとしていた」という。

被害者の女性:(暴行されて目が覚めて)私が、水を飲んで今すぐ逃げたいと思ったのに、被告人は、私に何も言わず、私の下着を降ろして、私を布団のところまで連れていき、性交を再開しました。 令和元年6月、再び被告人に呼び出され、(北川被告が)退職しようと思うけど、訴えないかと言われ、自分が逮捕・起訴されたり、懲戒免職されるかどうかにしか関心を示さないことに怒りを募らせました。

■女性は被害後、PTSDに苦しんでいるが、他の性被害者のために被害の申告を決めたという

被害者の女性:私は法令を遵守し、傷ついた被害者に寄り添い、犯罪者を適正に処罰することを使命とする検察庁の大阪地検の、トップの検事正から突如、性被害をうけ、全てを壊されました。

女性として、妻として、母としての私の尊厳、そして検事として尊厳を踏みにじられ、身も心もボロボロにされ、それでもすぐに被害申告できなかったのは、被告人から『公にすれば死ぬ』、検察が機能しなくなる、検察職員に迷惑がかかると脅され、口止めをされ、たくさんの職員に迷惑をかけられない検察を守らなければないと思ったからです。

自分が泣き寝入りさせられたことで、それまで以上に被害者の方々に寄り添い、力になりたいと思い、自分の苦しみにふたをして被害者の方と戦ってきました。

女性は、性被害によるPTSDに苦しめられているが、自分自身とほかの性被害者のために被害を申告することを決めたという。

被害者の女性:悪いのは犯罪者の北川健太郎です。私は堂々としていたい。検事の仕事もしたい。被害者に寄り添って一緒に戦ってあげたい。

勇気を出して被害を打ち明けた女性。北川被告は今後、裁判でどのように向き合っていくのか。

■浜田敬子さん「逮捕時に詳しい状況が発表されなかったことで女性が誤解を受けた」と指摘

ジャーナリスト 浜田敬子さん
ジャーナリスト 浜田敬子さん

ジャーナリスト 浜田敬子さん:女性が6年間苦しんでいる間、北川被告は自分が犯したことを自覚しているわけですよね。なので脅したり、口止めしたりしている、そして、仕事をして退職金をもらって退職して弁護士活動しているという、それ自体が本当に許されないことだと思います。

一方で、逮捕時は事件の内容について詳しいことがほとんど発表されていないかったんですね。被害者を守る意味でもあったのですが、余計に被害者の女性が誤解を受けてしまったのではと思います。 例えば『酒に酔って官舎に行った』という報道に対し、『自分から行ったんじゃないか』とSNSに書かれているんですね。

(実際は)かなり抵抗できない状況で、無理やり連れ去られているし、上下関係を使って、脅されている。もっと早く、逮捕事実の時に言うべきではなかったのかなと。 そうすれば余計な誤解を生むことなく、被害者の方がこれ以上苦しまなくてよかったんじゃないかと思います。

■「大阪地検という組織自体が壊れている」

関西テレビ 吉原功兼キャスター:(被害者は)誹謗中傷にも苦しめられていて、検察庁の中でも、自身の被害について『PTSDが詐病である』、『金目当てじゃないか』と言いふらされたこと、今回の事件の捜査情報を検事正に漏らしていた、などとも訴えました。同じ地検に勤務していた女性の副検事を刑事告訴・刑事告発したことも明らかにしました。これは組織の問題でもありますよね。

 関西テレビ 神崎博報道デスク:性被害という問題であるにも関わらず、被害者が被害を受け、訴えているということが大阪地検の中に広まり、さらに北川被告側に情報を漏らした職員がいるのは、大阪地検という組織自体が壊れているという問題でもあると思います。

吉原キャスター:勇気を持ってあげた声。北川被告、そして大阪地検にはしっかりと向き合ってほしいと思います。

 (関西テレビ「newsランナー」2024年10月25日放送)

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