そのため、宣言する相手は、自分が「この人の信頼を損ねたくない」「この人には嘘をつきたくない」と思う相手であり、かつ、同僚や親しい関係性のいわゆる「言質を取られない」相手がいいでしょう。

上司や関係部署、取引先の人に宣言するのは、万が一、できなかったときに信頼を失うリスクがあります。適切な相手を選ぶことで、適度な強制力が生み出されます。

みなさんも、ぜひ実践してみてください。

コミットメントで間に合った?初代プリウス開発秘話

期限を宣言することで、難題をクリアできる効果もあります。

その好事例が、1997(平成9)年12月10日に発売になった初代プリウスの開発です。

初代プリウスの開発の際、環境問題への関心が高まり、「環境にやさしいクルマをつくりたい」という思いとともに「開発に後れを取って、“環境先進企業”というイメージを他社に奪われたくない」という損失回避バイアスも働きました。

そして、トヨタ内ではまず「発売日」が決められ(実行意図)、それが公に宣言されました。

この社会とのコミットメントによって、トヨタは「一貫性の原理」を自ら働かせ、開発を加速させたのです。

その結果、正式な開発着手から約2年という短期間で、乗用車として世界初のハイブリッドカーの発売となったのです。

発売当時のCMのキャッチコピーは「21世紀に間に合いました」でしたが、実際は、「21
世紀に間に合わせた」のでした。

『トヨタで学んでハイブリッド仕事術』(青春出版社)

森琢也
株式会社クック・ビジネスラボ代表取締役。中小企業診断士。2007年明治大学商学部卒後、トヨタグループの大手自動車部品会社(デンソー)に入社。約10年の勤務後、リクルートマネジメントソリューションズに転職し、研修講師の採用・育成を担当し、2020年に独立

森琢也
森琢也

株式会社クック・ビジネスラボ代表取締役。中小企業診断士。2007年明治大学商学部卒後、トヨタグループの大手自動車部品会社(デンソー)に入社。配属された経営企画部署では、製造現場でのトヨタ生産方式の浸透、グループ会社支援など、数千億円ビジネスの全体像を学ぶ。事業企画に異動後は、採算改善プロジェクトのリーダーとして、世界5拠点で生産する新製品の採算V字回復などに携わる。約10年の勤務後、リクルートマネジメントソリューションズに転職し、研修講師の採用・育成を担当。トヨタグループでの経験を活かして、コストと工数を大幅に削減しつつ、3年間で延べ8千人を超える40代以上ハイクラス人材の選考を行う。2020年に独立後は、経営コンサル事業にて、中小企業向け事業計画作成・実行支援を行い、補助金獲得総額5億円超、採択率90%以上を達成。また、研修事業では、大企業からの直接受注を中心に累計100社以上、参加者数6000人以上に研修を実施。複数の仕事(事業)を同時に取り組んできた経験も踏まえ、組織や個人の仕事の生産性向上を支援している。