“悩み”を抱える若者を農業を通じて支援をする団体が広島市内にある。今、「生きづらさ」を感じるという日本の若者が増えており、他の国に比べ、自己肯定感が低いという調査もある(日本財団調べ)。この広島の団体で活動する一人の若者の思いを入社3年目、同世代の記者が取材した。

「生きづらさ」「息苦しさ」を感じる若者

今、「生きづらさ」や「息苦しさ」を感じる若者が増えているという。広島市のNPO法人で活動する米谷昭代(こめたに しょうだい)さん、22歳もそんな一人だ。

米谷昭代さん(22)
米谷昭代さん(22)
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米谷昭代さん:
大学に何の目的もなく入ってしまって、そのせいで大学での生活が面白くなく、生きづらさを感じていた。何かした方が良いだろうけど、何したらいいかわからない。

そんな若者を受け入れ、支援しているのが、広島市安佐北区にあるNPO法人「ブエンカミーノ」。様々な理由で学校に馴染めなかった子どもたちが通うフリースクール事業と、生きづらさや悩みを抱える若者の支援事業を行っている。

スペイン語の「ブエンカミーノ」とは日本語で「良い旅路を!」の意味。代表の吉川望さんは、この団体は「つまずいた若者らにもう一度“いい旅を”と送り出す役割」と話す。農家を営んでいるため、農業を通して若者への支援を行っている。

SNSで他人と比べ、落ち込む

「ブエンカミーノ」で農業に取り組んでいる米谷昭代さんは、数年前までやりたいこと、成し遂げたい夢が見つからず、日々もがいたという。

大学生活はコロナ禍の真っただ中、友人との関係は薄れる中、SNSで同世代の他人と自分を比べ、知らない間に自分を追い詰めることが増えていった。

米谷昭代さん(22)
米谷昭代さん(22)

米谷昭代さん:
SNSがあるせいで他人と比べやすい時代じゃないですか。よく言うのがインスタグラムのストーリーで充実した生活をしている人たちと比べて、自分はずっと家に居るみたいな劣等感を感じて、余計に外に出られなくなることはありましたね。

多くの若者が直面するSNSとの向き合い方。吉川さんは若者から「人の評価が気になって怖い」という相談をよく受けるといい、今の世の中は“評価に支配された社会”で、これが若者が「生きづらさ」「息苦しさ」を感じる大きな要因と指摘する。

ブエンカミーノ・吉川望 代表:
社会常識とか色々な支配の中で、自分の人生を選べない子たちはたくさんいる。その子たちが本当に幸せになれなかった彼らの無念ってすごいんですよ。その支配に苦しんでる子たちがいるので、支援をしていきたいんです。

昭代さんも“人からどう見られているか”に長く悩み、周囲に合わせて生きることばかり考えていたそうだ。

農業を通して「人に役立つ」生きがいを感じる

大学2年生の春、吉川さんの活動を偶然知った昭代さん。農業の経験はなかったが、自分を変えようと行動に移した。

米谷昭代さん:
農業は作物が成長していくのが目に見えてわかる。小さい苗が成長して、ナスがとれて、ナスをいっぱいとって持って帰ったら、おばちゃんたちが喜んで袋詰めしてくれる。何か人のためにすることの大事さ、人の役に立つことが自分の生きがいにもなったし、生きやすくなった。

昭代さんは春に大学を辞めたが、自分で道を決めて生きていくことに希望を見出したようだ。アルバイトで貯めたお金で南米のアマゾン川に行ったことが、自分でやりたいことを決める自信につながった。また、人との出会いが彼を前向きにしていた。

米谷昭代さん:
周りの人に恵まれたから、生きていかないといけないなって思うようになった。

若者がチャレンジできる寛容さを

彼の成長を一番近くで見てきた吉川さん。悩みを抱える若者の勇気ある一歩を社会が温かく見守ることが大事だという。

ブエンカミーノ・吉川望 代表:
自分が無業状態の人たちはすごく居心地が悪い。でもそこにもう少し寛容さがあってほしい。今、キャリアブレイクで、せっかく仕事をしていない自由な時間があって、何してもいいんです。自由なんだから。その時に色々なことに“チャレンジしてみよう”っていうような、そういう社会になってほしい。

吉川さんの願いを昭代さんも受けとめている。

米谷昭代さん:
自分の人生だから、やりたいことを好きなようにやる。楽しみ方は人それぞれあると思うので、自分の一番楽しめる方法を追い求めて、少しずつ少しずつ一歩一歩、進んでいけたらいいなって僕は思います。

一度きりの人生。将来に迷ったり、つまずきかけたりした時に、“良い旅路”と出会えるように「ブエンカミーノ」はいつまでも寄り添い続ける。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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