電動キックボードは、改正道路交通法が施行された2023年7月から16歳以上は「免許なし」で運転できるようになった。観光客の多い広島の街中でも見かける機会が増えたが、ルールを無視した悪質な走行が問題になっている。
運転免許いらずの手軽な乗り物
さっそうと駆け抜ける電動キックボード。2023年7月に法律が改正され、電動モビリティのうち一部を除く電動キックボードは「特定小型原動機付自転車」に分類された。
この記事の画像(11枚)このため、16歳以上は運転免許がなくても乗れるようになり、街中でも見かける機会が増えた。
電動キックボードを利用する男性は「友人が観光に来ていて、1泊2日なので歩くのが厳しい距離は電動キックボードを使った方が時間を短縮できますし、より観光地を回れます。そういうところがいいと思います」と話す。
一方、初めて電動キックボードに乗るという友人。スピードを出して歩道を走る電動キックボードを見たことがあるか尋ねると「僕は名古屋出身なので、名古屋市内ではよく見ます。乗るならちゃんとルールを守って乗ってほしいし、僕もそうしたいなと思います」と言い、2人は車道へ出ていった。
電動キックボードは基本的に車道を走る必要があり、歩道で乗る際は時速6キロ以下でライトを点滅させながら走らなければならない。2人乗りや酒気帯び運転は禁止。便利な乗り物だが、交通ルールを無視した運転が問題となっている。
普及にともなって増える「違反」
法律改正直後に広島県内でサービスが始まった「LUUP(ループ)」。現在は東京や大阪など全国11都府県で展開している。
Luupの岡井大輝社長は「広島は外国人観光客の比率が高い。彼らにヒアリングをして、もっと行きたいところへダイレクトに行けるような、街を肌身を体感できるような移動手段がほしいという声を聞いていたので、道交法改正後、一番最初にやるなら広島かな」と話していた。
今では広島市内に230ポート以上を構え、通勤や観光の移動などで多くの利用者がいる。
LUUPは利用前に「交通ルールテスト」に全問正解しなければならない。また、違反が重なればアカウントを凍結する措置も取っている。それにもかかわらず、違反をする人が後を絶たない。
警察の取り締まり活動に密着!
9月27日金曜日、警察官が私服で広島市の繁華街を歩き、違反を見つける取り締まり活動を初めて行った。
警戒を続けていた夜10時半ごろ、速いスピードで歩道を走る電動キックボードが現れた。私服警察官が見つけ、あわてて止める。運転していた男性は突然のことに戸惑っているようだ。歩道を規定以上の速度で走った「通行区分違反」で反則金は6000円。この日は別の私服警察官がもう1人を同様の違反で検挙した。
県警によると、2023年7月の法律改正後、広島市中区を中心に2024年8月末までに34件を検挙。そのうち、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される酒気帯び運転が5件あった。物損事故も発生しているという。
広島県警・自転車小型モビリティ対策室長の宮庄律和警視は「特定小型原付自転車にしても、まだまだ交通ルール自体が十分に理解されていないところがあると思いますので、街頭での指導、啓発活動を含めしっかり広報していきたいと考えています」と話す。
便利な乗り物として普及が進む電動キックボード。しかし、交通ルールの理解が普及に追いついていない。電動キックボードの最高速度は時速20キロで自転車より速く見える。ヘルメットの着用は自転車と同じく努力義務だが、取材中にかぶっていた人は見当たらなかった。より安全に乗るためにはやはりヘルメットをかぶったほうが良さそうだ。事故を防ぐためにも、乗る側の交通安全意識が求められている。
(テレビ新広島)