2025年の人口移動で、広島県は5年連続で「転出超過」全国最多となった。
とりわけ流出が目立つのは、就職期を迎える20代前半だ。県は「それ、広島で。」をキャッチフレーズに掲げ、若者の定着を目指すが、Z世代の心をつかむことはできるのか。数字が示す現実と、その先にある社会への影響、そして県の対策を追う。
1万人近い転出超過、20代前半に集中
総務省が2月3日に公表した2025年の人口移動報告によると、広島県からの転出者は5万3237人、転入者は4万3316人だった。差し引き「9921人の転出超過」で、5年連続で全国最多である。前年より7.4%減り、3年ぶりに1万人を下回ったものの、それに次ぐ福島県の7197人、静岡県の6711人を大きく引き離す数字だ。国内・国外の移動を含めた社会増減数でも、広島県は1851人の社会減。全国で14番目に多い減少数となっている。
年齢別でみると20代が4294人と全体の約4割を占め、依然として若者の県外流出が浮き彫りとなった。
人口推移の専門家であるニッセイ基礎研究所の天野馨南子さんは2025年1月~11月のデータを分析し、問題点を指摘する。
「転出超過の中心は20代で、なかでも20~24歳が圧倒的に減っています。男女別に見ても、男性の流出は52%が20代前半に、女性はさらにその傾向が強く57%が20代前半に集中しています」
女性については0~4歳を除くすべての年代で転出超過、男性も5歳以上から50代前半まで転出超過が続いている。若者、そして働き盛りの世代が広島から抜けていく構図が、数字で示された。
就職先に“広島を選ばない”理由
なぜ20代前半なのか。
天野さんは「ほぼ22歳、次いで23歳、20歳。就職による住民票の移動だ」と分析。
背景には、就職活動の序盤から東京・大阪の企業を志向し、職種や給与水準を重視する若者の価値観がある。新卒就職の段階で人口の流出を止めるためには、企業の役割が大きい。
「雇用で人が取られている以上、雇用の水準を東京並みに引き上げない限り、地方の少子化も、東京一極集中も変わらないと思います。東京圏では、地方企業から見れば想像を絶するほどの努力が行われている。広島の転出超過を止めるには、雇用でZ世代の心をつかむことが最も優先される対策です」
5年連続ワーストという結果を受け、県は若者を対象にした施策を強化する方針を示した。
横田美香知事は「若者を中心に転出超過が続いていることを大変重く受け止めている」と述べ、若者向けに県内企業のPRを強化する考えだ。
広報プロモーションに予算1億2000万円をかけ、2025年12月から始まった「それ、広島で。」キャンペーンでは多様な働き方や暮らし方が広島で実現できることを前面に打ち出している。
「いろんなチャレンジが広島でできる。キャンペーンを通じて、まずは若い人に働きかけたい」
若者減少対策に98億5000万円
県の若者減少対策は、2025年度の当初予算で23事業に98億5000万円を計上し、「認知向上」「職場環境の整備」「暮らしやすさ向上」の3つの柱で展開されている。
「認知向上」では、県内企業や大学と連携したインターンシップフェアを実施。SNS重視でイベント参加が減る中、約120人が参加し、「足を運んでもらえている」成果と受け止められている。
「職場環境の整備」では、2016年度から取り組んでいる“若者に人気のデジタル系企業の誘致”を継続。魅力的な産業を県内に集める動きが広がりつつある。
「暮らしやすさ」の面では、観光地としての“ひろしまブランド”の価値向上や、若者の意見を取り入れた「広島都心会議」を支援。札幌・仙台・福岡と街づくりについて意見交換を行うなど、地域の魅力を高めるねらいだ。
20代流出が続くと未来はどうなる?
天野さんは、20代の流出が将来にもたらす影響についても指摘している。
20代前半の9割以上は未婚。この層が減ることは、婚姻の減少に直結し、やがて出生数の減少につながる。労働人口の縮小だけでなく、少子化の加速という形で、将来の暮らしに影を落とす。
広島のポジティブなイメージを高めるねらい若者が出ていく理由を直視し、雇用と暮らしの両面で「ここで生きたい」と思える環境をつくれるか。若年層の定着・回帰のため、官民が知恵を出し合う「オール広島」の取り組みが問われている。
(テレビ新広島)
