2024年8月8日に日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生し、国は初めて「南海トラフ地震臨時情報」を発表した。初めて発表された「臨時情報」に対し、愛媛県内の自治体は想定通りに対応できたのか?南予地方の自治体に当時の状況を取材した。

揺れる庁舎 冷静に住民へ呼びかけ

8月8日の日向灘を震源とする地震では、愛媛・伊方町で震度4を記録した。伊方原子力発電所などに異常はなかったものの、宇和海沿岸には津波注意報が発表された。

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南海トラフ巨大地震が発生した場合、伊方町では最大約21メートルの津波が想定される中、住民に注意を呼びかけた。

伊方町総務課・危機管理係の米澤愛美子さんは、防災行政無線で「こちらは防災伊方町役場です。伊方町災害警戒本部からお知らせします。16時43分に発生した地震により、宇和海沿岸に津波注意報が発表されています。沿岸部には絶対に近づかないようにしてください」とアナウンスした。

米澤さんは「かなりドキドキしました。これはゆっくり読まないといけないやつやなと。とりあえずゆっくりしゃべって聞きやすくしようと」と振り返り、住民のパニックを防ぐため、落ち着いた口調で放送したという。幸い、当日に大きな混乱は起きなかった。

24時間体制で職員が待機し備える

伊方町総務課の林善法危機管理監は、地震発生翌日の対応について「災害対策本部室で、地震発生の翌日8月9日の16時に第1回伊方町災害警戒本部の会議を開催しております」と説明した。

林さんは続けて、「(臨時情報に)町の警戒本部会議で今後、どういう対応をしていくか取り決めましたので、それにのっとって今後1週間、係での夜間の勤務の体制やホームページ、住民に対する防災行政無線による広報を決定した」と語った。

伊方町はその後、巨大地震の発生に備え24時間体制で職員が待機し、防災行政無線などで住民に備えの再確認などを定期的に呼びかけるなどの対応をとった。

取材中にも、伊予灘を震源とするマグニチュード3.9の地震が発生。林さんは「ちょっと震度だけ確認してきてもいいですか」と、即座に対応した。

林さんは8月8日の対応を振り返り、「すぐに危機管理係で集まって情報収集のためにテレビをつけて気象台からの情報に注視しながら、今後どういった対応をしていくのか確認した」と説明した。

浮き彫りになった課題と今後の対策

今回の臨時情報発表から1週間、幸い巨大地震につながることはなかった。
しかし、伊方町は今回の対応を教訓に、より危機感の高い「巨大地震警戒」への備えを進める考えだ。

林さんは「(巨大地震警戒で)町としては『避難指示』の発令を検討。同時に指定避難所の開設を検討しております」と語る。さらに、「人口でいくと約9割の方が(避難指示の)対象地域にお住まい」と、その規模の大きさを強調した。

「巨大地震警戒」の場合、伊方町では人口の9割に当たる約7000人が1週間程度、避難の対象になる。

林さんは「伊方町は高齢者が多い地区であるので『もう私らは避難せんでもいいわい』と言われると思うが、町としては根強く避難を促して1人も犠牲者を出さないことを心がけて活動していきたい。私たちもいい経験になったかなと思います」と語った。

愛媛県内の市町に今回の臨時情報への対応について取材したところ、今回は「注意」の呼びかけを行ったのみというところが多く、大きな混乱はなかったとしている。

ただし、「警戒」情報が出た場合、1週間の事前避難を呼びかける必要もあるため、学校の対応や、漁師など海の仕事で生計を立てている人たちにどう呼びかけをすべきかなど、今後の検討課題が浮き彫りになったとする市町もあった。

今回の経験をきちんと次に生かすことが求められている。

(テレビ愛媛)

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