夏の定番スイーツが、ある町の未来を変えようとしている。愛媛・松前町が仕掛けたアイスをふるさと納税の返礼品にする取り組み。そこには、町の存続をかけた熱い思いと、意外な“町おこし”の主役が隠されていた。

寄付額はワースト2位…深刻な赤字に

全国的にふるさと納税制度の普及が進み、2023年度の寄付総額が初めて1兆円を超える中、松前町の状況は芳しくなかった。

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愛媛県内の自治体への寄付額を見ると、八幡浜市が23億511万円でトップ。次いで松山市、愛南町と続く中、松前町はわずか1221万円と、20市町と愛媛県の中でワースト2位だった。

さらに深刻なのは、町民が他の自治体に寄付したことによる住民税の控除額が寄付額を大きく上回り、“赤字”が続いていたことだ。

松前町総務部財政課の西川浩一郎さんは「このまま放っておいては、純粋にお金が減っていく。これから松前町がしていきたい事業や、今している事業すらできなくなってくる」と、危機感をあらわにする。

「ハーゲンダッツ」と町工場の秘密

そんな中、西川さんが目をつけたのが、町内でアイスクリームの製造をしている会社「サンタ」だった。

サンタは、大手食品メーカー10社の委託を受け、アイスクリームや氷菓子を製造している。

中でも注目すべきは、ハーゲンダッツのバータイプ。これは国内でもサンタでしか製造されていないのだ。

西川さんは「どうしてもほしかったです。ものづくりの町としてハーゲンダッツを作ってるんですから、その名前も活用してですね」と熱い思いを語った。

不動産の営業経験を持つ西川さんは、あきらめない精神で交渉を続けた。

その結果、7月26日から「ハーゲンダッツ」、8月2日から「レディーボーデン」などのロッテのアイスが返礼品に追加された。

アイスが巻き起こした寄付ブーム

掲載1分後に注文が入ったそうで、「『えーすごいなあ』とみんなでびっくりした」と西川さんは語った。

通常、寄付が少ない夏季にもかかわらず、8月の寄付額は2023年の約4倍に跳ね上がったのだ。

この急激な変化に、田中浩介町長は「ふるさと納税を通して、松前町を知ってもらって、そういう製造業があると知っていただけたこと、大変うれしく思っています」と期待を寄せる。

さらに田中町長は、ふるさと納税の活用方法について「松前町も若い世代が入ってきてはいるんですが、数十年前に比べると人口は減ってきているので、そういう方々を呼び込むための投資に(ふるさと納税を)使えるようにしていきたい」と語った。

未来を見据えた“甘い”野望

西川さんの目標は「当面は1億円、そこから先は青天井」だと意気込む。そして、すでに次の一手も用意されているという。

西川さんは「実はこれって松前町で作られたもので作られてるのってものがたくさんあります。順次準備ができ次第出していく予定です。暴れ回ります!」と力強く宣言した。

アイスクリームから始まった松前町の逆襲。松前町の挑戦は、まだ始まったばかりだ。今後の展開から目が離せない。

(テレビ愛媛)

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