保護者に代わり放課後の児童を見守る「学童保育」は、少子化の一方、共働きやひとり親家庭の増加で需要が高まっている。このため民間委託を検討している自治体もあるが、慢性的な人材不足など課題が山積している。
放課後の児童見守るスタッフ
保護者が仕事で日中家にいない児童を放課後や夏休みなどに預かり、安全な居場所を提供する学童保育。子供たちは友達と遊んだり宿題をしたりして時間を過ごす。
この記事の画像(11枚)保護者の代わりに子どもたちと過ごし、見守っているのが支援スタッフ。支援スタッフは、子供たちの遊びや宿題の見守り、生活習慣を身に着けるためのサポートなど、その仕事内容は多岐にわたる。
児童減少も学童保育の需要は急増
佐賀市には93の学童保育施設があり、そのうち約9割が公設公営で運営されている。
少子化を背景に児童の数が減る中、学童保育の需要はこの数年で急増。現在、約3000人が登録し、小学生の4人に1人が利用している(2024年4月1日時点)。
学童保育施設を利用している保護者に話をきいてみた。
保護者:
学童保育がないと困ります。仕事しているので
「子どもがひとりっ子なので留守番させるわけにはいかず学童保育に任せている」と話す母親も多い。親が仕事をしている家庭にとって学童保育施設はなくてはならない存在だ。
佐賀県内の学童保育のスタッフや保護者から相談を受けるNPO法人は、共働きやひとり親家庭の増加で学童保育の需要が高まっていると現状を説明する。
希望しても入れない「待機児童」
また、希望しても入れない「待機児童」は、200人を超えていた4、5年前に比べると大幅に減少しているものの、今年度(2024年度)は51人にのぼる。
NPO法人 県放課後児童クラブ連絡会 石橋裕子理事長:
保護者の方が学童保育に入れなかったとか、待機になりそうだとか、そういうSOS的な相談も。他に何かいい方法はないかという相談を受けている
「民間委託」検討の自治体も
学童保育については、慢性的なスタッフ不足やスタッフの高齢化、場所の確保なども課題となっている。
このため佐賀市では、現在、市が行っている支援スタッフの採用や研修、児童クラブの運営業務全般、活動実費の徴収・管理などを徐々に民間の事業者に委託することを検討している。
佐賀市 坂井英隆市長:
放課後児童クラブの充実というのは非常に重要な課題だと思っていて、待機児童の解消というのは非常に難しい課題なのですけれども、場所の確保、それからスタッフの充実といったところをしっかりと進めていきたい
効率的にスタッフ活用し運営
佐賀市内でもすでに民間委託している学童保育がある。その一つが「嘉瀬こどもの森」。この施設では3年前に市から依頼を受け学童保育を始めた。スタッフの採用や運営など全ての業務を行っている。
嘉瀬こどもの森 肥高清彦園長:
認定こども園も(運営)しているので、昼間は認定こども園を(スタッフに)手伝ってもらい、夕方に児童クラブの仕事をしてもらう。その辺は職員を効率よく使って運営できていると思っている
スタッフの給与など待遇は市営の学童と同じ水準で運用。現在は20人の児童を受け入れているが、さらに児童を受け入れることができないか市から打診されたという。
学童保育について佐賀市は、利用する児童が多いにもかかわらずタッフが不足している4つの校区から民間への委託を進めたい考えだ。
「人手不足の根本的な解決が必要」
しかし、学童保育への児童の受け入れは容易ではないと民間施設の園長は現状を説明する。
嘉瀬こどもの森 肥高清彦園長:
できるだけ需要がある分は受け入れたい思いはあるが、今は部屋の大きさなど制限がある中で20人が精一杯かなというところ
学童保育については、施設の場所の確保など様々な課題があるが、専門家は人手不足の根本的な要因の解決が必要と指摘する。
NPO法人 県放課後児童クラブ連絡会 石橋裕子理事長:
なかなか年収として上がっていかない。食べていけるという(仕事の)確立が全然できていない。しっかりと若い方が展望を持って働き続けることも大きな課題だと思う
少子化で児童が減少している一方で、ニーズが高まる「学童保育」。民間委託を検討している自治体が増えているものの、人材や場所の確保など課題が山積しているのが現状だ。
(サガテレビ)