イトーヨーカ堂が神戸大学と連携し、AIを活用した空調管理の本格導入を開始した。食品スーパーでは空調が電力消費量全体の4分の1、オフィスビルでは半分を占めているが、AIを活用することで「電力消費量の削減」や「快適性の向上」、「空気の付加価値向上」が期待できるという。
AIで空調にかかる電力40%削減を実証
AIを活用した空調管理で、電気の使いすぎを抑制するため、イトーヨーカ堂が神戸大学と連携し、AIを使った空調システム「AIスマート空調システム」を導入した。

これまでは、全館同じ設定で稼働していたというが、これからは季節や時間帯、フロアごとに応じて、最適な温度管理ができるようになる。

イトーヨーカ堂・須賀秀人 取締役執行役員:
店舗全体の電気使用量の3割から4割が、空調にかかる電気使用量になります。「AI空調」は、電気使用量の削減に大きく寄与するという形の中で、今回「AI空調」の取り組みをさせていただきました。

店舗内の天井には、画像認識のためのカメラが設置され、人の流れや密度を把握する。
他にも温度や湿度、CO2濃度を測るセンサーなど、あわせて120台を利用客の目線の高さに設置した。

得られたデータはAIがリアルタイムで解析し、混雑時には、集中的に空調を稼働させるなど、季節や時間帯、売り場に合わせて空調を制御する。

イトーヨーカ堂・須賀秀人 取締役執行役員:
たとえば衣料品のフロアや食品のフロアは、時間帯ごとに利用客の流れ「人流」は変わってきます。時間帯に合わせて電気使用量、空調を変えていくことによって、かなり大きな削減効果が得られると考えています。

イトーヨーカ堂は、2024年1月から東京・八王子店で実証実験を行い、空調に関わる消費電力を約40%削減できたとしている。12月からは、川崎市のグランツリー武蔵小杉店で本格稼働し、2025年度中にも、イトーヨーカドー約70店舗での導入を目指すという。
空調の電力消費量増加…対策が急務
「Live News α」では、デロイトトーマツグループの松江英夫さんに話を聞いた。
海老原優香キャスター:
AIで空調管理、こうした取り組み、今後増えてきそうですね。

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
そうですね。世界的に見ると、空調関連の電力消費量は、何も対策を取らない場合、2050年までに2倍強に伸びるという予測があり、これから省エネ化のニーズは益々高まっていきます。

とりわけエネルギーコストが高い日本にとっては重要な課題ですが、空調の電力消費量は多く、 資源エネルギー庁によると、食品スーパーでは空調が24%と全体の4分の1を占め、更にオフィスビルでは、49%と半分を占めます。
今回のような空調にAIを活用することで、4つの効果が期待されます。

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
1つ目は「電力消費量の削減」です。実際に、AIが利用者のいない時間の運転を弱める制御で消費電力の2割削減につなげたり、数十台の空調機器に数分単位で一斉にタイムリーな指示を出す制御によって無駄を省いて、消費電力量を約5割削減したなどの例があります。
2つ目は「エネルギーの需要予測」が可能になることです。AIは、天気予報や、館内人数予測・イベント情報などの将来に関するデータを基に予測が可能なので、先々のエネルギー需要の見通しが立てやすくなります。
快適で付加価値の高い空間を実現
海老原キャスター:
そして3つ目が「快適性の向上」です。
デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
ある商業施設では、AIの画像解析を駆使して、来館者の服装・活動量・年代・性別等から来館者の特性に合わせて快適性に配慮した空調制御を行っています。

4つ目は「空気の付加価値向上」です。温度や湿度に加えて、酸素や二酸化炭素の量、香りをAIでコントロールすることで、仕事の集中力向上、食事をおいしく感じるなど、空気の付加価値を生みだす分野に注目が集まっています。
空調は、日本のメーカーが世界で競争力がある領域であり、ユーザーにとっては日本のエネルギーの課題解決のメリットをもたらすので、今後AIを活用し、新たな成長につながる展開に期待します。
海老原キャスター:
こうした多くの人が集まる場での節電だけでなく、家庭での節電を心掛けることも大切です。健康など、無理のない範囲で取り組んでいきたいですね。
(「Live News α」9月6日放送分より)