リスキリングを開始してせっかく学習したのに記憶が定着しないといった事態を避けるためにも、少なくとも集中してリスキリングに取り組む期間はお酒を控える習慣をぜひ身につけていただきたいと思います。

ちなみに、イギリスやアメリカでは、毎年新年になった1月の1カ月間アルコールを抜く、「Dry January(ドライな1月)」という禁酒期間を設ける習慣が定着しつつあります。

これは「Alcohol Change UK」というイギリスの非営利団体が始めたとても有名なキャンペーンです。

欧米では特に12月に盛大にクリスマスを祝い、シーズンを通して暴飲暴食をする人も多いので、1月に健康管理の観点からアルコール摂取を控えるというのはとても健康的な取り組みであると言えます。

日本では12月の忘年会に加えて、1月は新年会があるので難しいということもあり、2月に1カ月間、「Dry February」を実践している友人もいます。

カフェインと集中力の関係性

新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言下で、大きく変化したことがもうひとつありました。

記憶力は高まったものの、夕方になるともう頭が働かなくなり、なんだかやる気にならない、疲れやすいと感じるようになりました。

私も最初は、年齢のせいかと思っていたのですが、冷静にコロナ前とコロナ後でどんな習慣が変わったのか、を考えてみたところ、コーヒーの摂取量がとても増えていることに気づきました。

集中力が続かないのはカフェインの取りすぎ?(画像:イメージ)
集中力が続かないのはカフェインの取りすぎ?(画像:イメージ)

そこで、ネットで検索してみると、私の疲れる症状はカフェイン過多によるものではないか、と思われました。カフェインは一時的なやる気アップのための刺激にはよいのですが、抜けたときの倦怠(けんたい)感があるのです。

実はすごく疲れているのに、カフェインによって本来感じるはずの疲労を感じないまま走り続ける状態が続き、カフェインが抜けるとどっと疲れる状態に陥っていたのだと思います。

カフェインを取らない生活に切り替えたところ、劇的に集中力が持つようになり、夕方に襲ってきていた倦怠感がなくなりました。アルコールを抜くようになったこととの相乗効果で、眠りがとにかく深くなったのです。

記憶力や集中力が落ちた、とお感じになる方は、ぜひ、アルコールとカフェインが体から抜け切ったナチュラルな「脳」の初期設定に戻してみてください。

その結果、自分の記憶力や集中力に変化がないか、確認してみてください。

もしアルコールとカフェインとの距離を保ってよい効果が出たら、ぜひその状態を維持しながらリスキリングに取り組んでいただけるとよいと思います。

『中高年リスキリング これからも必要とされる働き方を手に入れる』(朝日新聞出版)

後藤宗明
1971年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。富士銀行(現・みずほ銀行)を経て、米国で起業。帰国後、米国のフィンテック企業の日本法人代表などを務めたのち、2021年に一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブを設立し、代表理事に就任。現在は、リスキリングプラットフォームを提供する米国企業「SkyHive Technologies」の日本代表も務める。

後藤宗明
後藤宗明

一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事。SkyHive Technologies 日本代表。
早稲田大学政治経済学部卒業後、1995年に富士銀行(現みずほ 銀行)入行。営業、マーケティング、教育研修事業を担当。2020年、10年かけて自らを「リスキリング」した経験を基に、リクルートワークス研究所にて「リスキリング~デジタル時代の人材戦略~」「リスキリングする組織」を共同執筆。2021年、日本初のリスキリングに特化した非営利団体、一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブを設立。2022年、AIを利用してスキル可視化を可能にするリスキリングプラットフォーム、SkyHive Technologiesの日本代表に就任。
石川県加賀市「デジタルカレッジKAGA」理事、広島県「リスキリング推進検討協議会/分科会」委員、経済産業省「スキル標準化調査委員会」委員、リクルートワークス研究所 客員研究員を歴任。政府、自治体向けの政策提言および企業向けのリスキリング導入支援を行う。