外では大丈夫なのに、家の中だと鼻がムズムズする、目がかゆくなる。こんな状態に心当たりがあるなら「ダニアレルギー」かもしれない。
「秋は気を付けてほしい季節です」
こう話すのは、アレルゲン対策の専門家・白井秀治さんだ。自宅に“ダニアレルギーの原因物質”が増えやすく、気づかないうちに吸い込んでいることもあるのだとか。
しっかり予防しておきたいところだが、家庭では何ができるのだろう。ダニアレルギーの基礎知識や対策のポイントを、白井さんに聞いた。
ダニの死骸や糞を吸い込んでいる
まずは、アレルギーになる流れを簡単にさらっておきたい。ダニアレルギーの主な原因は「チリダニ」(ヒョウヒダニ)という種類のダニだ。体長は成虫で約0.3mmと小さく、引っ越した際の家具にくっついたり、外出した際の衣類にくっついたりして、住宅に住み着いてしまう。
刺したり噛んだりしないので、普段は意識することがないかもしれないが、問題なのは糞や抜け殻や死骸だ。これらはアレルギーの原因(ダニアレルゲン)となることもあり、人間が吸い込むと次のような、アレルギー性疾患を引き起こすことがあるという。
・気管支喘息(呼吸の通り道が狭くなり、呼吸しづらくなる)
・アレルギー性結膜炎(目がかゆくなる、涙が出てくる)
・アレルギー性鼻炎(鼻詰まりが起きる、逆に鼻水が出てくる)
「ダニアレルゲンとなるダニの糞や死骸は細かく砕けるので、さらに小さくなります。これを吸い込むと鼻の粘膜や、さらに奥にある気管支の粘膜に付着します。その結果、体がアレルギー反応を起こしてしまうのです」(以下、白井さん)
ダニアレルゲンを吸い込んだ場合のアレルギー反応は、早ければ15分ほどで出ることもあるのだとか。
・布団に寝てしばらくすると「ヒュヒュー・ゼイゼイ」と息が苦しくなる
・ほこりっぽい場所で、目や鼻がかゆくなる
こうしたことがよく起きるなら要注意とのこと。さらに、アトピー性皮膚炎を患っている場合は皮膚の状態が悪化することもあるという。いずれにしても発症は避けたいところだ。
ベッドメイキング後の1時間に注意
ダニは比較的暖かく、湿度が保たれた環境で繁殖しやすく、逆に低温乾燥に弱いので、秋になるとチリダニも減っていきやすいという。だが、ここに“落とし穴”がある。
「チリダニの数のピークは夏ですが、その後は“繁殖したチリダニ”が死ぬので、秋はダニアレルゲンとなる死骸や抜け殻がたまりやすくなります」
自宅で“特に危ない場所”は寝室だ。自宅にダニが増殖するのを完全に防ぐことは難しいので、ダニアレルゲンが発生するのは仕方ないが、布団類は「温度」「湿度」「餌(ヒトの皮膚やフケ)」が揃っている。住みやすいだけにダニアレルゲンもたまりやすい。
さらに布団類を“バサバサ”整えたりすると、ダニアレルゲンが周囲に舞い上がり、30分~1時間にわたって空気中を漂ってしまう。その分、吸い込みやすくなるという。
「普段の空気中のダニアレルゲン濃度を1倍とすると、布団の上げ下ろしやベッドメイキングの際には約1000倍になると報告されています」と白井さん。布団を整える際には、換気を行うなど“空気の浄化”を意識することが大切だ。
洗濯とちょっとした工夫で防げる
では、ダニアレルギーを防ぎたいならどうすればいいのか。白井さんのお勧めは、寝具を定期的に丸洗いすることだ。ダニアレルゲンのほとんどは、家庭用の洗濯機できれいに除去できるという。洗剤も市販されているものでOKだ。
生きているダニごと退治したいなら、コインランドリーを利用してもいい。ダニは50~60℃以上の熱で死ぬため、高温の洗濯乾燥機を使うと、1000円ほどで一網打尽できるという。
また、就寝前の行動もポイントになる。布団類を激しく動かすと30分~1時間はダニアレルゲンが空気中に舞ってしまうので、布団を敷いたり、ベッドメイキングしたりするなら早めに済ませるのがお勧めだ。
ただ忙しくて、寝る直前に布団やベッドの準備をすることもあるだろう。それなら窓を開けて換気しつつ、空気清浄機も使うと、空気を早めに“浄化”しやすいという。
「夜は子供が歯磨きや着替えをしているうちに、母親が寝床の準備をすることも多いと思います。その直後に寝るとダニアレルゲンを吸いやすくなるので、時間を空けて寝るなど、ちょっとした工夫をしてもらえればと願います」
このほか基本的なことだが、家族の滞在時間が長いリビングなどをきれいにすることが大切だ。ダニアレルゲンは、ほこりにくっついてたまってしまうので、掃除機などを使い、こまめに掃除しておくといいだろう。余裕があればベッドと壁の間、家電や家具の裏も掃除しておきたい。
ダニアレルギーは医療機関で検査も受けられるので、自宅の状況や家族の体調があてはまるなら発症を疑ってみてもいいかもしれない。次回は、悩ましい“ダニ刺され”の原因と家庭ができる予防策をお伝えする。
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白井秀治
専門は室内環境におけるアレルゲンの評価と対策。ダニ対策寝具の開発に携わったことがきっかけで、アレルゲン分析・測定の道に進む。家庭で取り組めるアレルゲン対策情報を発信しており、保健所や医療機関での講演も行う。日本アレルギー学会、日本職業・環境アレルギー学会、日本臨床環境医学会、室内環境学会などに所属。