布団に入ると、くしゃみや鼻水が出てなかなか寝付けない。朝起きると目がかゆい…それ、実はダニの仕業かもしれない。「夏に向けてダニは発生しやすいです」 と話すのは、上級睡眠健康指導士の加賀照虎さんだ。

ダニが発生する大きな原因(提供:加賀さん)
ダニが発生する大きな原因(提供:加賀さん)
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ダニが発生する3つの大きな原因は、温度・湿度・餌。「温度が20~30℃」と暖かく、「湿度が70%以上」と高く、「エサとなる栄養源」が豊富な環境だと繁殖しやすい 。寝床は適度に暖かく、餌となる人間の寝汗、皮脂、フケなどがたまりやすいので、ジメジメした日本の夏は、寝床が繁殖に適した“天国”のような場所になってしまうのだ。

対策はどのようにすれば良いのだろう。加賀さんは「退治」「除去」「予防」、この3つのステップを踏まなければ駆除できたとは言えないと指摘する。

ダニは死骸などもアレルゲンとなる

「1匹のダニがいたら、数百倍ものダニがいると考えてください」(以下、加賀さん)

寝具に発生するダニの多くは「ヒョウヒダニ」(チリダニ)という種類で、大きさは成虫でも0.3mmほど。人間をかんだりすることはないが、触れると体を登ってくるようなかゆみを感じることがあるという。また「ツメダニ」という、0.5~0.8mmほどのダニがいることもあり、こちらは太もも、腹回り、二の腕などを刺して、皮膚炎を引き起こすこともあるという。

アレルギー反応を引き起こす恐れも(画像はイメージ)
アレルギー反応を引き起こす恐れも(画像はイメージ)

しかし加賀さんは、注意が必要なのは生きていて“動き回るダニ”だけではないと指摘する。

ダニの死骸、糞、抜け殻はアレルゲンとなるため、大量発生した寝具を使い続けると、くしゃみや鼻水、目のかゆみといったアレルギー症状を引き起こす恐れがあるという。ダニのアレルゲンによるアレルギー被害は長引いたり、他のアレルギー症状を招いたりすることもあるため「生きているダニよりも厄介」と加賀さんは話す。

まずは60℃以上の熱で「退治」

最初のステップは、生きているダニの退治だ。

「布団だと表面よりも、中に隠れている数が圧倒的に多いんですよ。そのまま掃除機やクリーナーをかけても生きているダニの数はほとんど減らず、あまり効果はありません」

ダニは熱に弱く、60℃以上の環境だと即死するほか、乾燥も弱点で、湿度が60%以下だと繁殖しにくくなると言われている。 寝具の種類別にお勧めの「退治」方法を紹介してもらった。

布団類はコインランドリーがお勧め(画像はイメージ)
布団類はコインランドリーがお勧め(画像はイメージ)

【掛け布団・敷き布団】 
コインランドリーで洗濯と高温乾燥を一緒にするのが手軽で効果的。乾燥だけなら500円程度、ワンコインでほぼすべてのダニを退治できる。

布団乾燥機や天日干しも有効だが、一度では完全に退治できないこともあるという。布団乾燥機で退治するなら、朝晩2回を3日連続で集中的にかける必要がある。また、 天日干しなら黒い生地で太陽熱を吸収しやすくする「布団干し袋」を使うのがお勧めとのことだ。

お湯で洗濯できるとダニと汚れを一緒に洗い流せる(画像はイメージ)
お湯で洗濯できるとダニと汚れを一緒に洗い流せる(画像はイメージ)

【マットレス】
「ノンコイルマットレス」の場合、外した側生地(カバー)を60℃以上のお湯で洗濯すると退治できるそうだ。「コイルマットレス」はお手入れが難しいのでクリーニング業者に依頼し、高温のスチームで一網打尽するのが望ましいという。 

【シ―ツ、布団カバー、ケット類】
対処方法は意外と簡単。60℃以上のお湯で洗濯すると、ダニと汚れを一緒に洗い流せるのだ 。

掃除機は「除去」で真価を発揮する

退治できるとホッとする人もいるだろうが、安心するのはまだ早い。ダニの死骸、糞、抜け殻などのアレルゲンは寝具に残ったままなので、除去していかなければならない。

「ダニの死骸や糞は(時間が経つと)乾燥していき、潰れると細かい微粒子になります。退治した後は、アレルゲンの除去を忘れずにやってください」 

退治したら掃除機で「除去」しよう(画像はイメージ)

ここで真価を発揮するのが掃除機だ。加賀さんによると、ダニ専用クリーナーといった商品も販売されているが、通常の掃除機で十分だという。アレルゲンやダニのエサとなる人間の皮膚やフケなどを残さないよう、頭部の周りを優先的に丁寧にかけていこう。ベッドとの隙間のほこりっぽい場所にもダニが多く潜んでいるので念入りに掃除する必要がある。

“防ダニ”&“除湿”グッズで再発予防

ダニを「退治」「除去」したら、最後は「予防」。寝具に湿気をためないこと、清潔な状態に保つことがポイントだ。加賀さんがお勧めするのは、布団カバーやシーツを“防ダニ”効果があるものに替える方法。防水加工のほか、薬剤加工を施して近寄らせなくするものや、繊維を細かく織り上げて侵入を防ぐものがあるという。

敷きパッドを使っても良い(画像はイメージ)
敷きパッドを使っても良い(画像はイメージ)

また、除湿効果がある「敷きパッド」を敷き布団やマットレスに付けると、夏場の寝汗の吸収・発散を助けてくれるので、ダニの繁殖要因のひとつ「湿気」を抑えることができる。外して簡単に水洗いできるので、ダニのエサやアレルゲンも除去しやすく衛生的だ。

ダニ取りシート「ダニ捕りロボ」(提供:日革研究所)
ダニ取りシート「ダニ捕りロボ」(提供:日革研究所)

「コインランドリーに寝具を持って行ったり、布団乾燥機や掃除機をかけたりするのが面倒くさいと感じることもあるでしょう。そんな人には『ダニ取りシート』がお勧めです」

一斉退治はできないが、布団の中に置いておくとじわじわ減らせるそうだ。ダニの捕獲状況も分かりやすいので、かゆみの原因が本当にダニなのかも確認できるという。 多少ニオイがするものの、ダニの誘引剤が天然由来成分で安心して使える商品も出ている。

起きてすぐのベッドメイキングは不要?日頃の対策

このほか、ダニが再び発生しないようにするには、以下のような寝室・布団のお手入れをできるだけ行うとよい。

湿気をため込まない習慣を続けよう(画像はイメージ)
湿気をため込まない習慣を続けよう(画像はイメージ)

・寝室は窓を開けてしっかり換気する
・布団は3日に1度は干して、起床後は1~2時間空気にさらす
・起きてすぐベッドメイキングをせず、マットレスの表面が乾きやすいように掛け布団はめくっておく
・暑い季節はシーツを3日に1度、少なくとも週に1度は取り替える
・マットレスが両面使用可能なら半年に1度はひっくり返して使う面を変更する

など、ダニが心地よい“湿気”をため込まないような習慣も続けよう。ダニによるかゆみや不快感、アレルギー症状が改善すれば、良質な睡眠にもつながるはずだ。

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快眠・寝具について幅広い情報を発信する、上級睡眠健康指導士の加賀照虎さん
快眠・寝具について幅広い情報を発信する、上級睡眠健康指導士の加賀照虎さん

加賀照虎
睡眠健康指導士。3,000万PV超の「快眠タイムズ」にて睡眠学に基づいた快眠・寝具情報を伝える。朝の情報番組にてストレートネックを治す方法を紹介。現在、雑誌、テレビ、ウェブなどの幅広いメディアで快眠の啓発活動に取り組んでいる

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